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Ⅳ ケース・クローズド
一方その頃。エドウィンはユリウスからのLINEを確認していた。
Julius:会社の情報分析部門に確認したんだが、ハーリー・ファイナンスという企業がシモンズ教授の研究室に在籍しているジョン=モローという研究員に多額の研究費を提供していることがわかった。更に件の企業は今朝から不自然な先物取引を行っているそうだ
程なくしてマリルーからもLINEが届く。そこにはジョンに関する新たな情報が記載されていた。
「やはりジョンで間違いない。ルーとユリウスさんの情報と完全に一致した。緊張が解けた一瞬、あれがデータ送信を終えた合図だったんだ」
エドウィンは呟き、このことを報告するために大学の事務室へと向かった。
エドウィンがダンに調べたことと自身の見解を話すと、それはすぐに警察に伝えられた。そして警察がジョンの私物を検めた結果、“未来の経済予測モデル” に関するデータが入ったUSBメモリが発見された。ジョンは事情聴取を受け、ハーリー・ファイナンスから援助を受けていたこと、シモンズ教授の研究データをコピーしたことを自白した。
「データの入ったUSBを売るつもりだった。だがまだ売ってはいない! 手元にある!」
彼の必死の叫びは、“まだ実害を出していない”ことで“罪に問われない”ことを切望したものだったが。警察や教授、学校関係者の軽蔑した視線を受けてそれが甘い考えだと悟ったようだった。
「……私の研究も、評価されるべきだったのに……」
「君の気持もわかるが、犯罪は犯罪だ。署までご同行願おう」
俯き呟くジョンを警察官が立たせ、彼は連行された。
*
事件から数日後。経済学部棟の封鎖は解除され、シモンズ教授の講義も通常通り行われるようになった。
その日最後の講義が終わると同時に、隣の席で突っ伏していたライリーが大きな欠伸をしながら体を起こした。
「……なあエド、結局あの『立ち入り禁止』って何だったんだ? 設備点検って割には警察まで来てたし、お前、教授んとこ行ったきり戻ってこなかっただろ?」
「ああ、あれは……ちょっとした手違いがあったみたいで。俺は統計の数字を確認するのを少し手伝っただけだよ」
エドウィンは教科書を鞄にしまいながら、努めて平然とした声で答えた。まさか大学の内部調査に協力して研究員によるデータ盗難事件を解決したなんて、口が裂けても言えない。
「ふーん? お前、教授に気に入られてるよな。あ、それよりさ!」
ライリーがニヤリと笑い、エドウィンの肩に腕を廻した。
「もうすぐ学園祭だろ? お互いいい出会いがあるといいな!」
「……」
色恋沙汰にはあまり興味がなかったためエドウィンが無言でいると、ライリーは眉を顰めた。
「……まさか。もうカノジョ、できたのかよ?」
「え? いや、まだだよ」
「そうかよ。はは、なら、俺たち仲間だな! カノジョができるようにお互い頑張ろうぜ!」
「あ、ああ……」
ライリーは途端にぱあっと明るい表情になり、エドウィンの背中をパシパシと叩いた。
ライリーと別れて大学の駐車場に向かうと、祖父のグレーのセダンに寄りかかってスマホをいじっているマリルーの姿があった。
「お待たせ。ライリーに捕まってたんだ」
「大して待ってないわ。さあ、帰りましょ」
「ああ」
二人が車に乗り込もうとした、そのとき、エドウィンのスマホがメッセージの受信を告げた。
「……あ。ユリウスさんからだ」
Julius:問題は解決したのか?
Edwin:はい。ありがとうございました
Julius:そうか、よかった。困ったことがあればまた連絡してくれ
エドウィンはそのメッセージを見て、首を傾げた。
「何でそんなに気に掛けてくれるんだろう?」
兄の呟きに彼のスマホを覗き込んだマリルーは内心溜息を吐いたが、平穏な一日を終え、二人は海辺の港街にある彼らの家へと帰途に就いたのだった。
~第一話 終~
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