19 / 48
(19)母からの手紙
拝啓 瑠衣の配偶者様
初めまして。瑠衣の母の由美です。
この手紙を読んでいる頃、私は死後何年経っているかしら?
瑠衣を幸せにしてくれてありがとう。
瑠衣が選んだ方だから、きっと包容力にあふれた方だと思います。
瑠衣は私が看護師になってまもなく、ドイツの城巡りツアーで立ち寄った空港で一目惚れした男性との間に生まれました。
お互い自分の国以外で生きる勇気がなく、すれ違っただけの恋でした。
瑠衣が私ではなく、父親の外見に生まれた事は、決して幸運とは言えませんでした。
瑠衣の周りの女の子達は、瑠衣の栗色の髪と琥珀の瞳に異常な程関心を寄せて独占したがりました。
異人の人形を愛でたい感覚でしょうか?
ただ、子供の独占欲にしては行き過ぎた行動が多々あり、あの子はいつも腕や身体を掴まれ、アザが多数でき、私の虐待ではないかと近所から疑われたこともありました。
髪を黒に染めて、黒色カラーコンタクトを装着して学校を転々としました。
中学生になり伊達メガネをかけましたが、二年生の時に、事件が起こりました。
ある女生徒の家に呼ばれて自宅に監禁され、逆上した女生徒にペニスをナイフでえぐられ、睾丸を蹴られ踏み潰されました。
救出され命に別状はなかったものの、睾丸は手術で半分切除されました。
入院先の屋上で何度も自殺しようとしたのを止めてくれたのが、龍青会組長の大学さんでした。
瑠衣の為に弁護士を立てて慰謝料をもらう手助けをしてくれました。
瑠衣は大学さんの腕の刺青に気づき、見せてくれとせがんだそうです。
背中の刺青の龍神に惹かれた瑠衣は、慰謝料を全部あげるから、龍神を自分に彫って欲しいと頼みました。
そうしたら自殺はやめて生きていくからと。瑠衣は退院して転校し、無事高校に入学しました。
そして約束通りに瑠衣の希望した場所、腰に龍神の刺青を大学さんの知り合いの彫り師に彫っていただきました。
慰謝料は互いに受け取らず、結局半分ずつになりました。
瑠衣は決して使わず、私に寄付するように言いました。
親の判断で、お金は結婚資金に使うようにと加藤弁護士に預けました。
瑠衣はとてもやさしい子に育ってくれました。
病気の私を必死に看病してくれました。
料理男子に仕込みましたよ。
胃袋掴まれたでしょう?
私の自慢の息子です。
あなたにお会い出来なくて本当に、本当に残念でなりません。
あなたへ願う事は、瑠衣に事件の内容を聞き出さないで欲しい事と、瑠衣が泣いていたら抱きしめてあげて欲しいということです。
どうか、どうか、どうかよろしくお願いします。
あの子を愛してあげてください。
あなたと瑠衣がいつまでも幸せでありますように。
いつか天国でお会いしましょうね。
敬具 佐藤 由美
ともだちにシェアしよう!

