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Year 5 - #1 ※R
Year 5 - #1 / Total #17
ガラス越しにキスをしてから、ミコトの中で特殊なものが目覚めてしまった。
「これどう?」
『可愛いね、美味しそう』
「サクヤ、口。開けて」
持ち込んだ試作品をガラス越しのサクヤに餌付けするという、狂った遊びを始めて幾回。
『今日のは甘いの?』
「うん、かなり甘いよ。体内で吸収できない甘味料だけど奥歯が疼く程には」
『ふふ、お腹下しそうだね』
サクヤが潰すムスカリの花を模したインクカプセルを、興味本位で造ったのがきっかけだった。
涙も、血も、精液も、文字を綴るには向いていなかったし、何より準備が面倒。
この部屋に持ち込んで、サクヤ同様、ガラスに鏡文字を綴る。
そういう至極真っ当な目的、だったのだが。
おいしそう、と呟いて弾けたインクをサクヤは舌先で舐めたのだ。
今現在のように、ガラス越しに。
「今日も飢えてるの?」
『うん、お腹は苦しいけど胃は空っぽ』
「サクヤに差し入れたいって言ったけど駄目だった、未認可の香料が引っかかったっぽい」
『そういうところ、厳しいもんね』
邪魔な前髪を耳にかけながら、くすくすと笑うサクヤ。
意外、でもないが、サクヤは自分が性的な目で見られることも、露骨に性欲を向けられることも嫌がりはしなかった。
いや、寧ろ、性的な部分での繋がりを欲している。
その所以は常に無精卵を奪われているから、かもしれない。
『これどんな香りなの?』
「ここでサクヤとの別れ際に必ず嗅がされる、俺を狂わせるような甘い匂いなんだけど」
どんなに舐めても減りはしない、そして胃にも入らない雫を、懸命に舐めるサクヤ。
その舌はまるで、何か、とても艶めかしい生き物のようにミコトを魅了する。
『ここの? ミコトにとっては甘いんだ?』
「そう、サクヤ知ってるかな、脊髄を絞られるような、物凄い甘い匂いで……あれだけ中毒性があればかなり売れると思うんだよね」
あの適合検査から数年、鼻は慣れることなく毎度あの匂いに酔い痴れる。
『ふふ、危険思想で捕まっちゃうね』
「やっぱり?」
『旧時代の違法薬物みたいだし、そもそも甘味って時点でかなり際どいのに』
顔の両手に手を付き、小さく折れる指先。
意思疎通の方法は色々試したが、結局思い入れの深いこれに落ち着いた。
それでもサクヤはムスカリを摘んできたし、気分によっては旧技術世代よりも前の唄で、ガラス一面の海を作ってくれる。
ここでは地上思想だと、抑圧されることもなかった。
『それをここに持ち込もうってことは、オレを依存させたいってことだ?』
「うん、そう。好いた人を繋ぎ止めるのならば胃を掌握しろって諺が昔はあったみたい」
『ふふ、暴君だなぁ、尚の事駄目だよ』
それどころかサクヤは古の知識を、当たり前のように口にしたりもする。
今だってそうだ。
ミコトの知らない事実を語る時、サクヤは楽しそうに目を細めるのだ。
『それにあの匂いはオレの匂いだから、国が許可するはずないかな』
袖口で唾液を拭うサクヤの唇が、弧を描く。
「サクヤの、なの?」
ただの興奮剤か何かだとは思っていたが、衝撃の事実にミコトの脳が、強く揺さぶられる。
予め伝えておいてくれたのならば、毎度一つの分子すら残さず、全て体内に収めていたのに。
「ダクトは一方通行って話じゃなかった?」
『そう、だからその甘いのはオレから採取して調香したやつ。今の匂いじゃないけど……ほら、そこのライトの脇』
天井に埋め込まれたダウンライトの直ぐ側。
何かあるとは分かっていたが、まさかそこから。
『興奮してる』
「分かってて、言ってる癖に」
先程まで舌を這わせていたガラスを、袖口で拭き上げるサクヤ。
『本当に可愛いね、オレのミコトは』
そしておもむろにその指先が花弁を潰し、ペタリと、慣れた手付きで文字を綴る。
ミコトが潰した試作品の汁が滴る丁度そこ。
液体が重なってよく見えない。
文字をガラスになぞり終えたサクヤの指先が、名残惜しそうにすっと滑り落ちる。
舐めて
何度も重ねた逢瀬の結果、魅惑的に動く唇が言わんとする事は分かってしまう。
うっとりと、潤む瞳を細めて微笑む愛しい人。
ミコトは何の抵抗もなく、ガラスに舌を這わせる。
甘味料、着色料、そして香料。
身体の芯が疼くほど甘く、甘く幸せな錯覚に陥るように創り上げた、擬似の果実。
よくある嗜好品として、自らの手で産み落としたこれが、サクヤの匂いだった。
あの狭い研究室で散々嗅いでいた匂いだと言うのに、知った途端にこんな興奮を覚えてしまう。
まぶたの向こう側で、ひらひらと影が舞っているのに気付いて、薄っすらと目を開く。
『随分と大掛かりな自慰になってしまったね』
そう、青い指先で、からかうように紡ぐサクヤ。
こんなものを世に出す訳にはいかない。
ミコトはそうぼんやりと考えつつ、濡れた口元を肩口で拭いながら、唾液に濡れるガラスを見遣る。
heat
薄く透ける青でそう綴られた文字。
熱、火力、暑さ、火照り、激しさ、興奮、盛、辛さ、圧迫感、発情、はたまた旧技術世代の治安維持機関の俗称。
『オレは肉食獣だからね……会いに来てくれるとミコトがどうしても欲しくなっちゃうの』
あられもない痴態のサクヤを想像し、ぶるり、と背筋が震える。
サクヤは青い指先で、衣服に色素が移ることも気にも留めず、愛おしむようにそっと腹部を撫でた。
ふっくらと脹れ上がったそこは、今日も、確かにその輪郭を主張している。
『自慰するとお腹が捻れちゃうから、やっぱりオレはできないんだ、ごめんね』
そしてその下、あの小ぶりな性器が布を歪に押し上げているその場所。
指先がそこを掠めると、小さく肩を揺らし、唇を舐め上げるサクヤ。
『でも今日も見せてあげることはできるよ』
その蒼い指先が、ふと角度を変えた。
ガラスを隔てて、ミコトの腰元……下半身の真ん中に向かって、すっと一直線に示される。
『だからミコトも脱いで』
一瞬、思考が白い火花を散らして弾け、ミコトの喉がひゅっと鳴る。
とは言え、もうここ最近のお決まりだ。
サクヤは素肌を見せる代わりに、ミコトの自慰を誘うのだ。
汚れを知らない子供のような無邪気さを伴った笑顔。
しかしその瞳には淫靡さが混ざり合い、ミコトに抵抗を許さない圧が滲む。
ミコトはごく自然に、さも当たり前のように下衣に手を掛けた。
「ここでするの、抵抗感ある」
『いつもしてるのに、今更? オレも脱ぐから恥ずかしくないよ』
「サクヤを見られるのが嫌なの」
一瞬だけ気の抜けた表情を浮かべたサクヤを尻目に、下着の中からしっかりと反応してしまった性器を露わにする。
『ごめんね』
「なに、が?」
『いつも検査してるし健診もあるし、普段から素っ裸晒してる』
サクヤの視線が、そこに吸い寄せられるように注がれるのが分かった。
恥辱と、それ以上の猛烈な快感が脳をドロドロに溶かしていく。
『触って』
言われるがまま、自分の手で、固く握りしめた。
自分の手のひらの冷たさと、サクヤに見つめられているという熱気の落差に、短く吐息が漏れる。
ガラスに胸元まで押し付けるようにして、その手元を食い入るように見つめている、艶々の桜色の瞳。
その下の半端に開いた唇が、いかにも柔らかそうで、感触を想像するだけで下半身が疼く。
『ミコト』
『脚もっと開いて』
サクヤは、これを見ていて楽しいのだろうか。
ふとそんなこと過るも、深くは考えないことにした。
脚を開こうにも下衣が邪魔、しかし脱げば絶対に椅子を汚してしまう。
布張りのそれに精液を零すにはかなり抵抗があったので、椅子に浅く座り直した。
膝を落として腰を少し仰け反らせれば、サクヤにはよく見えているはずだ。
『気持ちいいね、ミコト』
カッと身体が熱を持つ。
サクヤに従い痴態を晒し、更にそれを揶揄われ。
耐え難い羞恥なはずなのに、それでも性器を上下に愛撫する手を止めることすらできない。
ぐちゃぐちゃと響く水の音と、自身の荒い呼吸。
それでもまだ足りない。
縋るように目配せすれば、サクヤは、あ、と小さく声を漏らしたようだった。
『ごめんね、オレ脱いでなかったね』
そう言ってサクヤは座ったまま、コロンと背後の座面に体重を預け、伸ばした両脚をガラス面に乗せる。
太腿越しのサクヤと目が合い、にこりと、微笑まれて、身体が跳ねた。
みてて
そう確かに動いた唇。
するりと上衣の隙間から差し込まれた手と同時に、ほんの少しだけ持ち上がる腰。
薄っすらと腰椎の凹凸が見える、陽の光を知らない白い肌が晒され、性器を握るミコトの手に思わず力が入る。
ゆっくりと、焦らすような指先がする……と上がってゆき、程よく締まっているのに柔らかそうな臀部が晒された。
「っ……!!」
内腿の白さよりも、何よりも、その尻の間に見え隠れする卑猥な穴から、目が離せない。
小ぶりな陰嚢の影に隠れて、ちらちらと、見え隠れするその場所を、ミコトは初めて視界に収めたのだ。
興奮しないわけがなかった。
挿れたら赤ちゃんできるよ
というあの強烈なフレーズが浮かび、そして今目の前で自分を煽るサクヤの細くなる瞳に捉えられ。
「あ、っ……! サクヤ、……ぁ!」
声にならない喘ぎとともに、ビクビクと収縮する性器から、白濁した液体が勢いよく吐き出された。
ミコトの手のひらを汚し、ガラスへ、無機質な床へと滴り落ちていくも、扱く手が止まらない。
まるでサクヤの爪の色のように淡い色をしたソコが、きゅ、と皺を寄せる。
その度に、期待を隠せないミコトの性器の先端から、ダラダラと、体液が溢れた。
「ふ、ぅっ、……っ!」
血走る目で只管そこを眺めながら手を動かす。
ここに、サクヤの中に、挿れたい。
そんなことしか考えられない。
瞬きもせずに見つめていると、収縮したサクヤの穴から、たらりと、粘度の高そうな雫があふれた。
そして突然視界に入り込んできたサクヤの指先が、それを拭い取った。
そしてあろうことか、尻肉に指を食い込ませるように掴んで、引いてみせる。
くぱ……、とありもしない音を脳内が勝手に補完する。
そして赤く熟れた胎内が、ミコトの眼前に晒された。
「あっ、ぁ、あぁっ」
見えたのは僅かだというのに、あまりの衝撃に頭の中で何かが弾けるような音がした。
『可愛いね、ミコト』
『たくさん出て偉いね』
『オレのこと見てくれて嬉しい』
脚を下げたサクヤが顔を近付けてくる。
恍惚に似たその笑顔が、あまりにも綺麗で、ミコトは呼吸をするのすら忘れてしまう。
けれども未だ吐精したままの性器を、嬲る手の動きだけは止められなかった。
『はい、舐めて』
そう綴って、オスの象徴をペタリとガラスに押し付けるサクヤ。
ペロリと下唇を舐めるのを見たその瞬間に、もうどうにでもなれと、ミコトの理性の糸はぶつりと途切れる。
椅子から滑るように崩れ落ち、白濁で濡れた床に戸惑いもせずに座り込む。
そしてミコトは瞼を下ろし、自身の精液のこびり付いたガラスに、その向こう側のサクヤの性器に、そっと舌を這わせた。
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