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第6話 祥吾の誕生日

誕生日の当日、祥吾は早くに目覚めた。  自分の腕の中で眠る結人の額に口付ける。結人からのプレゼントが何なのか、ワクワクする。  沢村に質せば、結人が何を買ったのかは分かるが、あえて聞いていない。その方が楽しみだからだ。  愛する人が身じろぐ、目覚めたのか? と思うと、自分を見上げてくる。未だ眠そうな顔が可愛い。 「おはよう、目が覚めたか?」 「うん、おはよう」  起き上がった結人が、うーんっと伸びをする。猫の伸びみたいで可愛い。  一体朝からどんだけ可愛いいんだ。おそいたくなるだろうと、それこそ朝からふらちな事を考えるが勿論そんなことはしない。祥吾にも理性はあるし、何より結人に嫌われたくない。  洗面所へ行く結人を見送ると祥吾も起き上がる。  すきっと爽やかな朝、今日から三十二歳。  結人がプレゼントを買い、どこかに隠しているのは確実。今日のどのタイミングで渡されるか、それを考えると自然と顔がほころぶ。  顔を洗い着替えた祥吾に、結人が近付いてくる。後ろ手に何か持っているのが分かる。いよいよだ! 祥吾の胸が期待に膨らむ。 「祥吾さん、誕生日おめでとう。今日で三十二歳だね」 「ああ、ありがとう」 「これ、誕生日プレゼント」  リボンのついた包みを渡される。おーっ! やっとお目見えだ。 「えっ! プレゼント! お前からもらうなんて嬉しいなあ」  そうなのだ、祥吾から結人へのプレゼントは多々あったが、結人からのプレゼントは初めて。だからこそ期待も大きかったのだ。 「開けるぞ」 「うん、気に入ってくれるといいけど」  結人も少しドキドキする。沢村が手配した店で、店員と沢村たちとも相談して決めたネクタイ。結人の感覚では相当高額で驚いたのが正直な気持ちではあった。  祥吾はワクワクしながら、包みを丁寧に開ける。常なら包装紙など破り捨てるが、そんなことはしない。貰ったプレゼントにこれほどワクワクするのは、多分初めて。いや、確実に初めて。 「おっ! ネクタイじゃないか!」  叫ぶように言う祥吾の顔は、喜びに満ちている。プレゼントがネクタイだったのは新鮮な喜び。祥吾も想像していなかった。 「うん、どうかな? ネクタイなら何本あってもいいかなと思って」 「ああいいぞ、って言うかこれからは毎日これを着ける」  祥吾の喜び方は、結人にも少々意外である。こんなに喜んでくれるなんて……喜んでくれるかなぁと、不安な気持ちもあったので良かったと思う。 「毎日って、気に入ってくれたなら良かったよ」  恥ずかし気に言う結人が可愛い。  祥吾の愛情表現はストレートだ。はっきりと愛していると何度も言っている。しかし結人は、はっきりと言わない。照れがあるのだろうと思っているから不満はないが、直接言われたいとの思いはある。その結人の精一杯の気持ちの表れと祥吾は思ったのだ。  つまり、プレゼントのネクタイにある意味。『あなたに首ったけ』それが、結人の気持ちと祥吾は思ったのだ。  だから、飛び上がらんばかりに喜んだのだ。  そうか結人も俺に『首ったけ』つまり惚れ切っているわけだ、直接言えないから、こういう形で表すとは可愛い奴だと思ったわけだ。  しかし結人は、当然そんな意味があるとは知らない。つまり、全て広沢が仕組んだことなのだ。広沢の頭に浮かんだ名案はこの意味なのであった。  この日の夜、祥吾と結人の二人は大いに盛り上り、これまで以上の甘い夜になった。  祥吾がいつも以上にハッスルするのは当然だが、結人もいつも以上に応えたのだった。祥吾の丁寧な愛撫にドロドロに蕩けさせられ、快楽の波に溺れたのだった。  全ては広沢の思惑通り。主である祥吾と結人が、仲睦まじいことが一番。それが鬼神一家の安泰に繋がるとの思いからなのであった。  後日結人は、ネクタイの裏にある意味を知ることになる。きっかけは燁子だった。 「結人さんも中々やるじゃない、祥吾が喜んでたわ。私も祥吾の姉としてうれしいわ、ありがとう」  燁子は祥吾から直接ネクタイをプレゼントされたと聞き、意外な思いを持った。結人にしては、思い切った品を選んだと、だからこそ姉として嬉しく思ったし、結人に対しての好感も増したのだった。  しかし、言われた結人には、疑問が浮かぶ。何かおかしいと……。  そしてネットで検索した結人は、プレゼントのネクタイにある意味を知る。  結人は全てを悟った。あそこまで祥吾が喜んだ意味を。こんな意味があるならネクタイなど贈らなかった。余りにもあからさまだ。首ったけって、なんなんだ! 恥ずかしすぎる……。  燁子が知っているということは、当然会長も知っている。つまり一家中に知られている……今更ながら穴があったら入りたい。  いや、そんな意味知らなかったと声を大にして言いたい。  そして結人は悟ったのだ、それが全て広沢の策略だったことを……。  策略とまでは言えないかもしれないが、策士広沢……許さん! 怒った結人はパンチとキックをお見舞いするが、当然広沢にはなんのダメージもないのだった。

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