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第17話 親になった日
梅が咲き終わり、桜の開花が近づく中、玲の小学校は春休みに入った。
玲が鬼神の養子になると正式に決まってから、必要な準備は着々と進んでいる。
そして最終段階として今日、玲が引っ越してくる。さらに明日、入籍をし親子固めの儀式が済めば玲は、正式に『鬼神玲』となる。
「荷物の運び出し終わったそうだ。玲も義兄貴たちと一緒に来る」
「そうか、早かったね」
「まあ子供の荷物なんてたいして多くはないからな」
玲のマンションを出たならほどなくして到着する。今までの遊びにやって来るのとは違う。特別な気持ちで出迎えてやらねばならない。
結人が気持ちを整え玄関へと行き待っていると、ほどなくして車が入って来る。三角の車だ。止まった車に近づくと、真っ先に玲が降りて抱きついてくる。
「お兄ちゃん!」
「玲くん!」
「もーっ玲は早速抱きついて」
続いて降りて来た燁子から苦笑交じりに言われる。
「結人さん出迎え恐縮です」
「いいえとんでもない、義兄さんこそ今日は朝からお疲れ様です」
大人たちが挨拶を交わす間、玲は結人に抱きついたままだ。
そこへ荷物を載せた車が入ってきて、若い衆が荷物を降ろしだしたので、結人は玲と一緒に離れへ行き片付けの指示をする。
明日の儀式で正式な親子だが、結人にとっては今日から自分が『親』だとの認識だ。
ただ呼びかけは、明日の儀式後から改めようと思っている。玲もそうするようにと三角と燁子から言われてるはずだ。
「玲くん、これはここに片付けるといいかな?」
「うん、春休みの宿題だからここでいいよ」
「そうか、結構沢山あるね」
「うん、そうなんだ、二年生の復習と三年生の予習だって」
「そっか、じゃあ明日までは忙しいから明後日から頑張ろうね」
「うん、お兄ちゃん一緒にしてくれる? 分かんないとこ教えてくれる?」
「うん、もちろんだよ。これから宿題は僕がみてあげるよ」
そう言って玲の頭を撫でてやると、玲は安心したように微笑む。
玲がここへきてからは、将来の跡目として必要な事は、東吾と祥吾が教える。自分の役目は母親代わり。生活面全般に気を配ってやらねばならない。無論、そこには学校の勉強も入る。これからの極道は教養も大切な要素。その為に期待されているのは結人も分かっている。
「なんとか片付いたかな」
「うん、今日から僕の部屋だよ」
「そうだね、玲くんよろしくね」
「うん、僕もね。お兄ちゃん」
玲がつぶらな瞳で見上げてくる。この瞳は何かを求めている。
「……なあに?」
「今日はお兄ちゃんも一緒にここで寝て」
やっぱり、思った通りだ。ここへ初めて来たときに言ってたもんな。
八歳の子共が親と離れて来たんだ。いくら祖父の家でしょっちゅう来ていたといえ、心細さはあるだろう。
「うん、じゃあ今日は特別にここで一緒に寝よう」
「うん!」
玲が満面の笑顔で抱きついてくる。結人もそんな玲が可愛くて、頭を撫でてやる。
この時結人は、毎日は駄目だよ一緒に寝るのはたまにのこと、今日は特別と強調したのだが無論玲はそんなことどこ吹く風だ。
そして夜になり、結人は玲の部屋で寝ると祥吾に告げる。
「はあっ、なんでお前が玲の部屋で寝るんだ。あいつは向こうのマンションでも一人で寝てただろ」
「うん、でもたまには義姉さんと一緒に寝てたって。まだ子供だから甘えたい時もあるんだよ。今日はここへ来て初めてだし一緒に寝てあげようと思って」
「全くお前は、あいつに甘すぎるぞ」
「これから親父さんと祥吾さんは厳しくするだろうから、僕まで厳しくするのは可哀そうでしょ。勿論、甘やかしたりはしないから。一緒に寝るのも今日は特別って言ってあるし」
「しょうがないな、今日だけだぞ」
「まあこれからも義姉さんがたまに寝てたみたいに、僕もたまには一緒に寝ようと思ってるよ」
結人の最後の言葉は、祥吾の耳に入っていない。聞こえていないはずはないが……。
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