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第20話 伝家の宝刀

 玲が鬼神玲になって一週間。  新たに親子となった三人の生活は、今のところ平穏に過ぎている。  問題は学校だった。名字が変わったことを含めて報告と挨拶に行かねばならないが、誰がどのようにして行くか? 新米両親は、東吾の部屋で実の両親と話し合った。 「今までは二人で行ってたのか?」 「ううん、基本私だけ。浩貴さんが学校へ行った事は一度もないわ」  三角は見た目で筋者と分る風貌ではないが、学校関係は燁子が一人でこなしていた。堅気の父親でも妻に任せっきりは多いので問題はなかった。 「俺はあんまり出ない方がいいか……」  確かに三角と比べると祥吾の方がその筋っぽさは増す。着るもので取り繕うこともできるだろうが……。 「僕が行きます。僕と祥吾さんだと僕が母親役ですし、通常学校関係は母親が出るのは世間一般的でもあるでしょう。今までも義姉さん一人だったわけだし」  若い結人にとって、小学生の保護者になるのは気負うものもあるが、親になったのだからこれも当然の務めではある。 「そうね、結人さんなら弁護士っていう立派な肩書もあるしいいわね。結人さんと私が一緒に行くのがいいかな」 「そうしてもらえると心強いです」 「そうだな、結人に姉貴が同行してくれるのが一番いいだろう。で、学校へはなんと説明する?」  問題はそれだった。玲の名字が変わったことの説明。包み隠さず説明するのか? 「私の実家の跡継ぎにするためでいいんじゃないかな。事実そうだし、まあ、詳しく説明することもないと思うし」  ということで、燁子は今まで通り実母として、鬼神の保護者としては結人。今後も学校関係は二人が表に立つと決まる。その手始めとして二人で挨拶に行くと決まる。 「それでどうだ、三人うまくいってるか? 見たところ問題ないとは思うが?」 「ああ、問題は全くない。結人がちょっと玲に甘いとは思うがな」 「そうかな」 「そうだろ、だからあいつ甘ったれてるだろ」 「そんなことないと思うけど……」 「あんまり甘やかすなよ」  東吾にまで言われてしまう。そんなに甘やかしているだろうか……今のところ叱ったことはないが、いや叱ることしないしな玲は、と結人は思うのだった。    四月に入って今日は、結人と燁子が玲の学校に挨拶へ行く日。  結人はスーツをきちっと着込み少々、いやかなり緊張気味だ。いまだ二十代半ばの自分が小学生の保護者とは、緊張するなといってもそれは無理だ。 「兄さん学校行くの?」 「うん、義姉さんと一緒にね。玲の名字が変わって住まいも変わったからね、説明してくるよ」 「今日の兄さん、凄くきれいでかっこいいよ」  玲のストレートな褒め言葉、結人を見上げる真剣な眼差しにどきりとする。こんな時、玲は鬼神の男と感じる。 「そうか、ありがとう」  辛うじてそれだけ言うのが精一杯だった。  東吾へ挨拶した後、祥吾に見送られ燁子と車に乗り込む。運転手が吉沢、助手席には沢村だ。 「緊張しなくても大丈夫よ。学校もわきまえているから、そんなに根掘り葉掘り突っ込んでこないから。さっらと流すわよ」  実際、燁子の言う通り拍子抜けするぐらいさっらと終わった。最初に出した結人の弁護士の肩書の名刺が効いたのかもしれない。世間一般的に信用のある職業ではある。  何はともあれ保護者としての初仕事が無事に終わり、結人はほっとするのだった。  そして結人は思う。親になるのも中々大変だ。一人の人間の人生に責任を持つということに身の引き締まる思いを持つ。改めて亡き母の大変さに思いをはせる。母は常に一人で親の責任をこなしてきた。さぞや大変だったろうと……。    ————  春休みも終わりに近づいたある日のこと。 最後に風呂へ入った結人が出てくると、何やら二人の声が賑やかだ。どうやら何かもめているようでもある。やれやれと思いながら声のする方へ行く。 「だからお前は、たまにはの意味が分かってるのか」 「うん、一日おきだよ」 「馬鹿野郎、一日おきがたまにかよ! たまにはってのは年一かせいぜいが年二くらいだ。盆正月くらいで十分だ」 「えーっ! そんなの無茶苦茶だよ!」 「ちょっと、二人とも何争っているの?」 「あっ、兄さん!」  玲が駆け寄り抱きついてくる。 「どうしたんだ?」 「父さんが、僕が兄さんと寝るのは年一か年二だって言うんだよ」 「たまにはなんだからそれで十分だろ」 「違うよ! 一日おきだよ!」 「馬鹿野郎! お前はもうちょっと国語の勉強をしろっ!」  二人が結人を挟んで言い争う。どちらも全く引く様相がない。 「ちょっと、二人とも落ち着けって」  何とか静めようと声を掛けるが、二人とも収まる気配もない。それどころか益々ヒートアップしてくるありさまだ。  間に立って結人は段々とイライラしてくる。全くギャーギャーと煩い。こいつらなんだ!

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