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第22話 鬼神玲の保護者は結人
春休みも終わり、今日から新学期の始まり。玲は三年生になり、鬼神玲としての初登校である。
先日の学校への挨拶は燁子が同行してくれたが、今日は結人が一人で玲に付き添う。その為か結人は朝から緊張気味だ。玲の保護者としての初仕事のような気分なのだ。
「玲、準備は出来たか? 忘れ物はないか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、じゃあ親父さんに挨拶してから学校行くよ」
三人揃って東吾の部屋へ行き、「おはようございます」と部屋に入る。
「ああ、おはよう。そうか、玲は今日から学校だったな。結人も付き添うのか」
「はい、今日は初登校なので僕が付き添います。明日からは玲一人で行きます」
「ああそうだな。玲、お前は今日から学校でも鬼神玲だ。頑張るんだぞ」
「はい」
東吾の言葉に力強く返事する玲。見守る結人は頼もしさも感じる。甘ったれなところもあるが、小学校三年生でしっかりした子だと思う。
部屋を出る時、三角と目が合い目礼する。三角は今どんな気持ちなのだろう。それを想像するのは不遜な気がする。それよりも自分は玲の親として、保護者として全力を尽くすのが務めだ。
それが三角と燁子、玲の実の両親へ返せる自分の贖罪と恩返しだと、結人は思うのだった。
「父さん、行ってきます」
祥吾に挨拶して車に乗り込む玲。
「ああ、行ってこい。結人、頼むぞ」
「うん、じゃあ行ってくるね」
玲に続いて結人も車に乗り込む。二人を乗せた車を祥吾が見送る。
学校に到着すると先ずは職員室へ行き、担任の先生に挨拶する。結人は先日の挨拶で顔は見知っている。
「先日はお忙しいところ失礼いたしました。改めましてよろしくお願いいたします」
「こちらこそご苦労様です。玲くん、今日から鬼神玲くんだね、みんなにそう言って挨拶できるかな?」
「はい、できます」
「うん、そうかえらいね。じゃあ先生と一緒に行こうか。えっと保護者の方……」
「兄さんだよ」
結人を何と呼ぶか言いよどむ担任に玲がすかさず言う。
「お兄さんですね。お兄さんは挨拶が済むまで見届けられますか?」
「できればそうさせていただきたいです」
「勿論です。ではご一緒にどうぞ」
担任が玲と並んで行く後ろを、結人も付いて行く。二人は教室に入ったが、結人は廊下から見守ることにする。
玲はちゃんと挨拶できるか? 少し心配だ。心の中で玲頑張れ! とエールを送る。
結人のエールが届いたのか、玲は実に堂々としていた。うん、さすがだ、玲えらいよ。
その後結人は担任に挨拶して、玲には視線を送ると玲もそれに応える。結人は安心して教室を後にすることができた。
「お帰り、ご苦労だったな。玲のやつどうだった?」
「堂々として偉かったよ。子供だけど度胸あるよね」
「まあな、あいつも鬼神の男だからな」
まさにそうなのだろう。立派にその片鱗を感じる。これが血なのだろうか。そしてあの子はこれからどう育っていくのだろう。
小学生らしい甘ったれなところもあるけど、いずれは祥吾みたいになるのか……いや、こんなの二人になったらちょっと大変かも。そう思うと少し面白い。結人はふふっと薄く笑う。
「何笑ってるんっだ」
「いや、玲が祥吾さんみたいになったら大変だけど面白いかもって」
「面白いって、まあ俺に似る可能性は高いわな。元が甥だし、親子として一緒に住めば益々似るだろ」
そうだろうと思う。いや、これは面白がっている場合じゃないような……大変だよ、全く。
その後結人は、東吾にも報告をすると安堵の表情を見せる。こんな時は、一家の会長というよりも祖父なんだなと、結人の気持ちは温かくなる。
執務室で今後の仕事のために判例を調べていると、パタパタと音が近付いてくる。どうやら玲が帰宅したようだと思ったら、ドアが勢いよく開く。
「兄さんただいま!」
「お帰り、学校どうだった?」
「うん、今日はね新しい教科書とかもらったり、あと係を決めたりで勉強はなかった」
「最初の日はそうだよね。玲は何の係になったの?」
「僕は図書係だよ」
「へーっそうか、図書係って何をするの?」
「学校の本の整理とか、あとみんながたくさん本を読むように、色々工夫したりとかするんだよ」
「そうか、じゃあ先ずは玲が本をたくさん読まないとね」
「そっかーっ、読んだほうがいいんだね」
「そうだよ、勉強も大切だけど本を読むことも大切だと兄さんは思うよ」
「うん、わかった! たくさん読むようにするね」
笑顔で同意する玲。この子は本当に素直で真っ直ぐだ。自分を信頼してくれている。可愛いなと思い、頭を撫でてやると、玲は益々満面の笑顔になる。
「手を洗ったらおやつにしようか、シュークリームを買っておいたから」
「やったー!」
相川がシュークリームと、玲にはミルクたっぷり砂糖も入れたミルクコーヒー、結人にはブラックコーヒーを出してくれる。
「兄さんはミルク入れないの?」
「うん、シュークリームが甘いからね」
「苦くないの?」
「苦みがね甘いの食べる時は丁度いいんだよ」
「ふーんそっか、大人なんだね」
そうだよ、大人だよ、なんだと思ってたの、まあ自分と同じに思ってたんだろうな。
「今日宿題は出なかったのか?」
「うん、教科書とかに名前書いておくだけだって」
「そうか、じゃあ食べたらしようか」
「そうだ、みんながね兄さんのことかっこいいって言ってたよ」
「えっ、そうなの。僕ってかっこいいかな」
「かっこいいよ、そして凄くきれい。みんなにもそう言ったら、いいなあって言われたよ」
凄くきれいって、そんなことみんなに言ったの、ちょっと恥ずかしいな。玲にはいつも言われて、最近では慣れたけど、外でも言ってるのは恥ずかしい、やめて欲しいけど子供だから仕方ないか。
玲のストレートな表現、そしてこの物に動じない態度、祥吾に似ている。つまり鬼神の男の特徴なのだろう。自分はこういう男たちの一族の一員になったんだと、結人は改めて思うのだった。
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