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第28話 嵐は過ぎ去って

 暑い……熱いのか……。  目覚めた結人は、自分の置かれた状況に苦笑する。  何故なら、前は玲にしっかり抱きつかれ、後ろからは祥吾にすっぽりと抱かれているからだ。  これでは熱くなるのは当然だと、呆れる思いになる。しかし、同時に満たされた幸せも感じる。  昨日は、一時はどうなるかと思った。足が震えて立ってはいられない心境だった。あんな思いをしたのは初めて。  過去に自分が拉致された時も怖かったが、それ以上の恐怖を感じた。  だけど祥吾のことは見直した。はっきり言って惚れ直したと言ってもいい。  正直、祥吾に玲の親としての自覚があるとは昨日まで思っていなかった。だから、祥吾が親として自分が行くと言い切ったのは驚きだったし、見直したのだ。玲の親としても、一家の跡目としても自覚を持った立派な人なんだと。  そして思った。自分はこの人の伴侶なんだと。この人に望まれてここへ迎えられた。これは凄く幸せなことだと。    だけど良かった。こうして三人で寝られるのも、無事に解決したからこそだ。  昨日玲と一緒に風呂へ入り、隅々まで怪我は無いか調べたが、何もなかったのでほっとした。後、心配なのが心の傷。トラウマとして残らないといいが……。それはこれからも気配りが必要だ。それこそが自分の役割ではある。  木村……極道らしさのない大人しそうな人と思ったのに。裏切られた思いは結人にもある。相川などはもっとだろう。大勢の人を裏切り、子供をかたに身代金を要求するなど卑劣にも程がある。  木村がどうなるか、自分が関わる事じゃないが、厳しい制裁を受けろとは思う。法曹の世界で生きる自分が望むことではないが……。だけど同時に自分は鬼神一家の人間でもある。  今後は、自分の思いの主軸は鬼神一家の人間としてのものになると、そういう予感がする。  玲の瞳が一瞬開いたかと思うと、更にぎゅっと抱きついてきた。 「玲、起きたの?」 「うん、まだ眠い」 「良いよ、まだ起きなくて」  抱きつく玲の頭を撫でてやる。すると、後ろから抱かれている祥吾の力も強まる。 「祥吾さんきついよ」 「ああ、まだ寝てろ」  まあ、昨日遅かったしねと思う。  しかし、前から抱きつかれ、後ろから抱き込まれていると、エアコンが効いているとはいえさすがに暑苦しい。  大体親子川の字で眠るって言うが、これでは一の字だ。  しばらく我慢していたが、トイレにも行きたい。結人はそっと抜け出そうとするが、身動き取れない。  どうも二人で結託しているような……。なんだかんだこの二人は似ている。結人に対する思考と行動が同じなのだ。それで、協同もすれば争う、変な親子だ。  結人は、うーんと伸びをして、えいっとばかりにベッドから起き上がる。 「兄さんっ!」「結人っ!」  同時に声を上げる。二人ともに声も、視線も未練がましさに溢れている。 「僕は起きるよ。トイレにも行きたいし」 「あーあっ、兄さん起きちゃった」 「だな、仕方ない俺らも起きるぞ」  朝食としては遅すぎる時間の食事後、結人と玲は買い物に出かける。昨日の今日で大丈夫かと思われたが、前々から決まっていた事でもあるからと、予定通り行くと決まった。  祥吾としては、それこそ今日は昨日のこともあり多忙で自分は同行できない。護衛たちの万全の体制を確認して、行かせたのだった。  結人と玲が買い物をする間、護衛たちはいつにも増して目配りをする。昨日の犯行は内部の人間だったが、警戒心は高まっている。それは結人にも伝わった。

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