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木曜日〜洗い残し〜

「蒼弥さん!靴下出し忘れてるじゃん!!」 木曜日は洗濯の日。1週間の溜まった汚れ物をまとめて洗う。前日に言っておいたはずなのに洗濯機を回して、もう終わりそうな頃に、 「悪いなふみ。一個残ってたわ。」 火曜日に俺が適当に買ってきた蒼弥さんの服。その殆どが今日の朝洗濯カゴに出ていたけど、ラストを申し訳なさそうに蒼弥さんがぶら下げてきた。どうせベッドの下にでも入ってたんだろう。 「まぁ靴下1個くらい洗ってなくても平気でしょ洗濯カゴに入れておいてください。」 その時は何も考えずにそう言ったのだった。 それはそうと、最近変なんだ。蒼弥さんが気になって仕方がない。部屋の中でいつも、その姿を目で追ってしまう。どうしたんだろう一体。 「おい、そんなに見られたら穴開くぞ。」 「へ!?」 「さっきから分かってるよ。どうした?」 そう言って優しく微笑む。その顔に何故か胸が高鳴った。心臓のあたりがギューッとして後頭部がムズムズする。まるで一目惚れした時みたいに。ん?待って、一目惚れ?誰に?ってこの部屋にいるのは俺ともう1人。 「蒼弥さん…。」 「ん、なんだ?」 「…。」 「ふみ?」 うそ、うそ。20何年間生きてきて、男に心を揺らされたことは一度もなかった。それに、蒼弥さんとはたった4日前に知り合ったばかりで。少し話したけれどお互い知らないことが多過ぎる。 「どうしよう…。」 「おい、ふみ?変だぞお前。」 変なのはよく分かってる。よく分かってるんだけどでも、気づいたてしまった思いは仕方がない。たった1週間の、あと3日そこそこの非日常でも。貴方が好きです。蒼弥さん。 ああこの気持ちはどうしたらいい。きっと伝えることは叶わない。蒼弥さんがいなくなった後もこの疼くような気持ちを抱いてまた、無気力に生きてくのだろうか。まるで、洗い残した靴下のように消化できない胸の疼きが残った。

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