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第九章 大人の恋

 衛への愛撫を、途中で止められた早紀は、不満げだった。 「まだ衛さん、イッてないのにぃ」 「君に飲ませるわけには、いかないから」  衛なりに気を遣ったつもりだったが、早紀はドライだった。 「別に平気だし。飲めるよ、僕」 「はしたないことを、軽々しく言わないでくれよ」  何だか困った風の衛に、早紀は畳みかけてきた。 「じゃあ、もう挿れて。衛さんなら、中出ししてもいいよ」 「まいったな……」  早紀の性に対する奔放さに、押され気味の衛だ。  しかも、そう言われて初めて気づく自分の迂闊さを、呪った。  独り身の長かった衛の寝室には、スキンの買い置きが無かったのだ。  スキンが無いから、中に出すわけにはいかない。  そう逃げようとする衛に、早紀は食い下がった。 「発情抑制剤、飲んでるから大丈夫だよ。安全日だし」  衛は、諦めた。  これはどうしても、本気で一回抱いてあげないと、気が済まないのだろう。 「じゃあ……もし赤ちゃんできたら責任取るから、安心して」 「赤ちゃん!?」  途端に早紀は、落ち着きを失くした。 (ぼ、僕と衛さんに、赤ちゃん!? そ、それはさすがに、早いんじゃないかな!?)  やっぱり衛さんは、大人だ。  今まで付き合った恋人たちは、そんなこと言わなかった。 (何だか、新鮮。これが、大人の恋なのかな)  そして早紀の心は、ようやくぽかぽかと温まり始めた。  衛は早紀を抱き寄せ、その指だけが雄弁になっていった。 「ん、ぅん! はぁ、う。うッ、ん、んぅ。はぁ、んん!」 「早紀の中、柔らかくって悦い具合だよ」  紅く染まった早紀の後膣は、衛の手によってジンジン疼く。  オメガの体液も、溢れてきた。  衛は長く節張った指を、華奢な早紀の体内に入れて、苛め続けた。 「あぁ、あ! 衛さん、そこ! そこぉッ!」 「おねだりか。早紀は解りやすいなぁ」  早紀の敏感な部分を、指腹でそっと擦る。 「うぁ、あ! あぁああ!」  再び早紀は、精を飛ばしてしまった。 「はーっ、はーっ、はぁ、あ……」 「二度目だね。そろそろ、眠くなってきたんじゃないのか?」 「ヤだ。衛さんに中出ししてもらうまで、寝ない」 「強情だな」  私はそろそろ眠いんだが、と衛は余裕だ。  本当は、眠たくなんかないはずだ。 (もう! 衛さんの、嘘つき!)  大人の手のひらの上で、いいように転がされている気分の、早紀だ。  衛の余裕に対抗するには、若さという直球で勝負するしかなかった。 「衛さん。ね、挿れて。僕、早く欲しいんだ」 「そう、意地を張るんじゃない。早紀の瞼は、眠そうだぞ?」 「ヤだ! もっと、滅茶苦茶にして欲しい!」  衛さんは、優しすぎる。  何もかも考えられないように、ぐちゃぐちゃにして欲しい。  そんな早紀の心の叫びは、ようやく衛に届いた。  仰向けになっている早紀の両脚がぐっと開けられ、硬く熱いものが秘所に当てられてきたのだ。  早紀は、ぴくんと震えた。  そして、衛が腰を進めるたびに体を反らせて、声を上げた。 「あ、あぁ、あ! すご、い。あっ、あっ、ダメ。いやぁあ!」  めりめりと音が響いているのではないか、というくらいの圧だった。  衛の進行がようやく収まった時、早紀は荒い息を吐いていた。  そして、自分の腹を手のひらで抑え、その質量に震えた。 「こんなとこまで、挿入ってる……」 「怖い?」 「う、ううん。大丈夫」  怖いか、と問う衛の目は、どこまでも優しい。 (多分、僕が怖いって言ったら、やめてくれるんだ。衛さんは、そんな人だ)  だから、全然怖くなんかない。  早紀は、にっこりと微笑んだ。 「じゃあ、動くよ」  衛は、早紀の笑顔を確かめてから、腰をやり始めた。  始めは緩く、ゆっくりと。  だが、段々と速さを付けてリズミカルに、衛は早紀を突いた。  早紀もまた、次第に腰をうねらせ始める。  それは狂おしい、二人で織りなす舞踏だった。

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