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第十七章 クリスマスシーズンがやって来た

 ショッピングモールのテナントが、美しく着飾る季節がやって来た。  赤に緑の組み合わせ。  金に銀のきらめき。  流れる音楽も、楽しげで軽やかだ。  クリスマスシーズンが、やって来たのだ。 「だのに、なぜ!」  早紀は、衛をにらんだ。 「ねぇ、ツリーくらい飾ろうよぅ」 「そういう浮ついたものは、メビウスには置かないよ」 「ケチ!」  ぷん、と早紀は休憩室へ向かった。  早紀の勤務時間は、午前7時30分から午後5時までだ。  そこに、1時間ずつの休憩を2回とる。  彼は、クローズの午後8時まで働きたい、と言うが、衛が軽いシフトに設定したのだ。 『僕、もっと働くよ。一日25時間だって、頑張るよ!?』 『まずは慣らしていこう。いずれは、フルで勤務してもらうから』  こんな衛の優しさに守られながら、早紀は働いた。  彼の仕事は5時に終わるが、衛はその後も8時30分くらいまではメビウスにいる。  カフェは午後8時までの営業で、後片付けが済むまでは働くのだ。  早紀は、いつも残り3時間半を休憩室で過ごし、衛を待っていた。 『先に、マンションへ帰っていてもいいんだぞ?』 『僕、休憩室の本を読んで、コーヒーの勉強してるよ』  衛は、早紀に早く心身を休めるように勧めたが、彼はそうしなかった。   コーヒーの知識や接客マナーを、身に着けたい。  そう言って、いや、そんな建前を言って、衛を待っていた。  以前は、午後10時まで営業していたメビウスだが、早紀を雇うに当たって営業時間を短くしたのだ。  そういった衛の気遣いに、早紀は心から感謝していた。 (せめて、早く一人前になって、衛さんの理想のカフェに貢献したい)  早紀もまた、衛を、衛のメビウスを、大切に思うようになっていた。 「衛さんは、意地でもツリーを飾らないつもりだよ!?」 「マスターは、シンプルな店内が好きだからなぁ」  休憩室で、早紀は秀一にぼやいていた。  早紀の愚痴を受け止めながら、秀一はバッグから折り紙のセットを彼に差し出した。 「これで星でも作って、弓月さんの目の前にぶら下げてみたら?」 「あ! それはいいかも!」  ありがとう、とすぐに折り紙を手に取り、お星さまを作り始める早紀だ。  秀一は、早紀のそんな前向きな姿勢をまぶしく見ていた。  自分より3歳年下の、18歳。 (だけど、しっかりしてるよな)  第一印象は、あまり良くなかった。  興味だけで、一杯10,000円のコーヒーを注文する、お金持ちの坊や。  見た目や言動、第二性から、秀一は早紀を軽薄で頼りない少年だと思ったのだ。  しかし、今は違う。  彼の過酷な状況は、衛から密かに打ち明けられた。  自分なら押しつぶされそうな、不運。  それでも早紀は、その逆風に立ち向かい、日々明るく振舞っている。 (桂とは、全然違うなぁ……)  つい、早紀を恋人と比べてしまう、秀一だ。 「できた!」 「上手じゃん」 「でも、何で折り紙なんか持ってるの?」 「サークルの部屋を大掃除したら、出てきたんだ」  よかったら全部あげるよ、との秀一の言葉に、早紀は大喜びした。 「いっぱい作って、衛さんに圧を掛けるぞぉ!」  早紀は折り紙を、大切にバッグにしまった。  その晩、寝室へ入った衛は、ベッドを見て苦笑いをした。  ヘッドボードに、折り紙で出来た星がたくさん張り付けられているのだ。 「全く……」 「ねぇ、衛さん。メビウスに、クリスマスを展開しようよぉ」 「無駄に華美なものは、あのカフェには必要ないよ」 「無駄じゃないよ。きっと、お客様も喜ぶよ?」  その他にも、早紀はいろいろなクリスマス・サービスを衛に提案した。 「クリスマスブレンド、作ったり。コーヒーのおまけに、ジンジャーマンクッキー付けたり」 「なるほどなぁ」  早紀なりに考えてくれている、というわけか。 「考えておく」 「もう! 即決してよ!」  遅いから、もう寝るぞ。  そう言って明かりを消し、衛は瞼を閉じた。  ところが……。 「ねぇ、衛さぁん。クリスマス、しようよぅ」 「おいおい、艶っぽい声を出すなよ」  パジャマの上から、早紀が肩をカリカリとひっかいてくる。  猫のような声でねだられ続け、衛は熱くなってきた。 「じゃあ、勝負しようよ」  そう持ち掛けて来た早紀のまなざしは、少し潤んでいるように見える。 「僕が衛さんをイかせられたら、ツリー飾って」 「一体、何を言い出すんだ」  しかし、四の五の言う前に、衛は毛布を剥がれてしまった。 「おい、寒いよ」 「すぐに暑くなるから!」  パジャマから衛のペニスを掴み出し、先端にキスする早紀だ。 「えへへ。美味しそう」 「お手柔らかに」  衛は、折り紙の星が破れないように用心して、ヘッドボードにもたれかかった。  早紀は、ていねいに衛を愛撫した。  優しく扱き、口に含んで舌で刺激した。  筋の一本一本まで、丹念に舌先でなぞった。 (お? 衛さん、感じてくれてるみたい)  早紀が施すたびに、衛は硬くなっていく。  大きく勃ち上がり、そそり立っていく。 「早紀、もういいから」 「……」  返事をせずに、早紀は続ける。 (休ませちゃダメ、ってサイトに書いてあったもんね)  早紀は夢中で、衛を愛し続けた。

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