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第二十五章 クリスマスデート
「衛さぁん。僕、体がだるいよ~」
「昨夜は、熱かったからな」
「衛さんが、僕のこといっぱい苛めた!」
「早紀だって、私からさんざん搾り取ったじゃないか」
そんな不毛な会話で始まった、朝。
動けない早紀のために、衛はルームサービスで朝食を用意した。
シャワーを浴びると少しさっぱりしたのか、早紀はよく食べ、よく喋った。
「ね、衛さん。僕、昨夜みたいなエッチ、初めて!」
「爽やかな顔で、熟れたことを言うなぁ……」
それでも、はぁ、とまだ熱い溜息をつく早紀だ。
昨夜の熱いひとときを思い出すと、また体の芯が疼いてくるのだ。
「拘束されて、イかされっぱなし。挙句に抜かずの2発、3発」
「拘束? 人聞きの悪いことを言うなよ。手を握ってただけじゃないか」
それでも早紀は、悪びれずに笑顔だ。
「中出しされながら、愛してるよ、って言われたのも初めて!」
「朝日を浴びながら、露骨な表現をするのはやめてくれ!」
ほとんど悲鳴の衛に、早紀はゴメンねと舌を出した。
「嬉しかったんだ。心から愛されてる、って感じたよ。ホントだよ」
「スキンを着けてなかった。こっちこそ、ごめん」
「そっか。赤ちゃんできたら責任取る、って前に言ったよね?」
「もちろんだ。その約束は、今も同じだ」
「……ありがとう」
そして早紀は、衛に囁いた。
「僕も、愛してる。衛さんのこと、愛してる」
それは、今までで一番大人びた早紀の表情だった。
彼は衛の元で、少しずつ大人になっていた。
ホテルのチェックアウトを済ませ、二人は街のショッピングモールに繰り出した。
「今日は、僕が衛さんにプレゼントを用意するって、決めてたんだ」
「気を遣わなくても、いいのに」
「前から予定してたんだよ? 衛さん、欲しいものを選んで!」
「そうだなぁ」
大人の衛が本気で欲しいものを言っても、今はカフェ勤めの早紀には到底買えない。
(これは意外に、難しい問題だぞ)
「あ、できれば10,000円以内でね」
「それは嬉しい提案だ」
予算内で買える品を衛は探し始めたが、早紀の方から声が上がった。
「これ、どうかな!?」
「私が選ぶんじゃなかったのか?」
ショップに飾られたその品は、パワーストーンのブレスレットだった。
「シトリン、タイガーアイ、透明本水晶のブレスレット。金運、仕事運アップ! だって」
値段も9,658円と、予算内だ。
なにより、早紀が乗り気だった。
「衛さんにブレスレットもらったから、お揃いにしたい」
「お守りに、ちょうどいいかもしれないな」
スピリチュアルは信じていない衛だが、せっかくの早紀の提案だ。
彼は、勧めに従うことにした。
「じゃあ、これにしよう。でも、本当にいいのか? 高価だぞ」
「お給料、ちゃんと倹約してるから大丈夫」
すぐに身に着ける品だが、早紀はスタッフに化粧箱に入れて欲しいとお願いした。
赤い包装紙に金のリボンが、いかにもクリスマスプレゼントらしい雰囲気だ。
そんな早紀の心配りが、衛には微笑ましく嬉しかった。
「はい、衛さん。メリークリスマス!」
「ありがとう、早紀」
赤い箱の金のリボンは、解くのが何だかもったいない。
「せっかくだから、24日に開けようかな」
「衛さんも、考え方がクリスマスっぽくなってきたね!」
微笑み合う二人に、周囲のスタッフも笑顔になっていた。
ランチは、どうしようか。
そんな衛の呼びかけに、早紀は思ったことをそのまま口にしていた。
「僕、お好み焼きが食べたいな」
「クリスマスデートに、お好み焼きか?」
少し、クリスマスっぽくない。
特別なデートらしくない。
衛の声には、そんな響きが含まれている。
早紀は、頬を染めた。
「う、嬉しいな。衛さん、そう思っててくれたんだ。クリスマスデートだ、って」
「まあ、それは。それなりに」
そこで、二人の手がこつんと当たった。
冷たい、お互いの手。
衛は、早紀の凍えた手をそっと握った。
「衛さん」
「繋げば、温かくなる」
「じゃあ、僕の熱を衛さんにあげるよ」
「それは、こちらのセリフだぞ」
二人で手を繋いで、歩いた。
なぜだろう、胸が高鳴る。
(手を繋ぐ、なんて。今まで、誰とでもやってきたのに)
(柄にもなく、照れるな。相手が、早紀だからかな)
ああ、このまま二人で。
二人でなら、どこまででも行ける。
「少し、歩こうか」
「僕も、そう思ってたところ」
お好み焼きの店は通り過ぎ、公園まで歩いた。
風は冷たかったが、二人の頬と手は、ぽかぽかと温かかった。
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