33 / 46
第三十三章 愛の行方
とぼける衛に、新年の初キスをお見舞いした、早紀だ。
「ぅあ! 早紀、ちょっと!」
「逃がさないからねぇ!」
早紀が、積極的に舌を絡ませてくる。
「ホントに、もう。少し、待ちなさいぃ!」
「何でぇ? 早くやろうよぅ」
衛は早紀の下から這い出すと、彼の隣に並んで寝た。
「その、何だ。少し話をしたいんだ」
「エッチの前に?」
衛は改まった口調で、早紀に向き合った。
「縁あって、私は早紀とこうして暮らしているんだけれど」
「うん」
「今年も、一緒に過ごしてくれるか? 一年間、傍にいてくれるかな?」
何をいまさら、と早紀はまず思った。
(僕が他に行けるところは、どこにも無いのに)
でも……。
おそらく、衛が言っているのは、そういうことではない気がした。
ただ、一緒に。
傍にいて欲しい。
何気ない日常を大切に、共に暮らして欲しい。
衛の切なる願いは、早紀にちゃんと伝わっていた。
「衛さん。来年もまた、一緒にお正月迎えようね。お雑煮食べて、初詣に行こう」
「ありがとう、早紀」
そこでようやく、衛は安心したように早紀に口づけた。
「ん、衛、さん……」
「早紀、愛してる」
ちょっぴり弱気な、衛さん。
どうしたのかな。
僕は、どこにも行かないのに。
(お父さんから、年賀状が来たから、かな)
父が戻れば、どうなるだろう。
(僕、お父さんとまた暮らしたい。でも、衛さんとも離れたくないよ)
何だか急に、早紀も不安になって来た。
「ん、ふぅ、んん。ぁん。っく、ぅん……」
不安を振り払うように、早紀はキスに溺れた。
温かな衛の舌を感じ取り、必死で舐めた。
「ね、衛さん。早く僕のここ、いじめて」
「ああ、いいよ」
「っん、うぁあ……」
慌ただしく胸の乳首に移った衛の舌は、自在に早紀を翻弄した。
「あ、あっ、あッ。くぅ、う。あぁあ……」
鼻にかかった甘い声が、響く。
深く、熱い息が吐かれる。
(あと何回、こうして早紀と愛しあえるんだろう)
そう思うと、今この行為が尊いものに思えて仕方がない。
衛は、夢中で早紀の体を拓いていった。
ぴったりと、衛と併せていた早紀の動きが、ちぐはぐになってきた。
「あ、うぅ、ん。あ、あぁ、うぅ!」
腰のうねりが、ひどく淫らだ。
そう時を置かずに、早紀は大きく悶えた。
「あぁああ!」
体を震わせ、精を飛ばす早紀。
そのペニスを、衛は大切に手のひらで包んだ。
「あ、ダメ! 衛さん、だめぇ!」
達したばかりの体に、さらに刺激を与える。
早紀はすぐに回復し、とろとろと蜜をこぼした。
「今夜は、何回出せるかな?」
「もう、ダメだってばぁ。あぁ、あ。うぅ……ッ!」
腰を打ち付けながら扱いてやると、早紀は簡単にオーガズムに達してしまう。
下半身の痺れを感じながら、彼は泣きながら衛におねだりしていた。
「ね、お願い。もう、もうダメ。早く、ちょうだいぃ……!」
かすれた声が、まるで早紀ではないような響きだ。
衛は新しい彼の魅力に、震えた。
「早紀、愛してるよ」
「ま、衛さぁん!」
衛は、早紀の体内に大きく注ぎ込んだ。
熱い精を、たっぷりと放った。
「あぁああ! んぁ、はぁ、あぁ!」
「早紀……」
引き攣った後、早紀はくったりと力を抜いた。
(あぁ。体の奥、ひくひくしてるぅ……)
今また触れられると、すぐに射精してしまうだろう。
だが衛は、そこまで意地悪ではなかった。
そっと早紀の体内から去り、優しく汚れを拭きとった。
体を清められ、まだ弾む息を整えながら、早紀は声を押し出した。
「どうだった? 今年初めてのエッチは」
「最高だ。良い一年に、なりそうだよ」
「僕も、だよ」
衛が、腕枕をしてくれる。
早紀はその腕に頬を擦り付け、笑顔で言った。
「衛さんとのエッチは、いつでも最高だけどね」
衛は、ただ微笑んだだけで返事はしなかった。
(考えるのは、よそう。この一年を、ただ悔いの無いように過ごそう)
日常というささやかな幸せが、まるで儚く崩れていくことは、何度でも経験済みだ。
「衛さん、どうしたの?」
「早紀、今年もよろしく」
「うん。今年もよろしくね」
温かな毛布にくるまれて、二人で抱き合い眠った。
今は、幸せなんだ。
それだけは、確か。
ただ衛は、ここに早紀の父が居れば。
そうすれば、彼はもっと幸せなのだという事実から、目を逸らすことができなかった。
「自分史上、最高に味気ない正月だったな」
実家からアパートへと戻った秀一は、ベッドに仰向けになったままつぶやいた。
大晦日から三が日は、まだ気がまぎれた。
実家へ帰ると、両親や兄弟に囲まれて楽しかったのだ。
それでも、こまめにスマホのチェックをしていた秀一だ。
桂からの連絡があるかもしれない、と思って。
「あけおめのスタンプすら、くれないんだもんな……」
付き合うようになってから、そういったコミュニケーションは欠かさない桂だったのに。
「やっぱ、俺の方から連絡して謝るか?」
これまでも、ケンカをするたびに自分の方から折れてきた。
例え桂の方が悪いと思っていても、だ。
「でも、今の気持ちのまま謝っても、また同じことを繰り返す気がする」
『秀一は、バイト先の早紀くんのこと、好きなんだよね。僕、知ってるんだから』
そんな鋭いことを指摘して、別れると言った桂だ。
そして確かに秀一は、早紀に惹かれている。
「この想いに決着をつけないと、前に進めないな」
明日から、またメビウスで働く。
そして、早紀と顔を合わせる。
しかし彼は、衛と愛しあっているのだ。
「大丈夫かな、俺……」
新年早々、秀一は浮かない気分を持て余していた。
ともだちにシェアしよう!

