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性関係は存在しない

 多少雨足の弱まった晩、打ち捨てられた炭焼き小屋では細い灯りが立ち上る。  ひりひりと目が痛み、まばたきすると微かに目尻からは涙がこぼれた。  アルナウトの先端を細い指が擦ると、裂け目からは既に粘った先走りが溢れていた。    味見とばかりにその液を舐め取り、ジョアンは小さな舌の上で転がした。     「や、止めろ、おぞましい。貴様何をしているのかわかっているのか?」   「何を? わかっていてやっていればなんだと言うのだ」      股座に入られて自らを弄ばれながら、同時に腿にはどうやら貧弱な彼の熱の存在を感じた。    見た目通り、もしかしたら彼は少年なのだろうか?  いやしかし――    器用な右手が、アルナウトの綿の入った胴着の紐を解いてゆく。その下の麻のシャツをまさぐられて、ぞわぞわと皮膚が粟立った。  赤黒く日焼けした顔や腕と違って白いままの胸もと、多少汗と雨水が染み込んで湿ったシャツの奥の一点に男の指が触れて、アルナウトは思わず短く息を吸い込んだ。   「騎士様は初めてのようだから教えて差し上げるが、どんな卑しい商売女であれ殿方のここをきちんと触る」    ジョアンの左手は相変わらず茎を扱いていた、同時に平素気にもしなかった胸の一部を執拗に捏ねられておかしくなりそうだ。  このままではアルナウトが限界を迎えそうになると彼は身を離した。      熾火の音に紛れて、自分の荒い呼吸音がやけに耳についた。いやでも完全に勃ち上がったものが目に入る。    再びぬめった指先を口に含むとジョアンは笑った。    捲れ上がった女物の衣服の裾からは、大人とは思えぬような腿や脛、男性器が覗く。    アルナウトは瞠目した。    「そう訝しむな騎士様、俺と貴方は同じではないか。土から造られた方だ」   「お前は何者なのだ……?」      ジョアンは立ち上がり女の衣服を土の床へ落とすと、子供じみた白く細い身体がアルナウトの膝へ乗った。されるがままに従うしかない。    互いの粘膜同士が擦れ背筋に衝撃が走った。彼とアルナウトの筋肉質な身体が密着する。    アルナウトは耳殻をジョアンの口にあらかた含まれ、この小さい右手に到底あるとは思えない強さで肩を掴まれた。      そのままアルナウトへ向き合い座る形でジョアンに食われていき、ほとんど腰を使う余裕もないままに中へ果てた。  うねる熱い肉に包み込まれて気を遣ると同時に、子種を吐き出した。    ジョアンはアルナウトの硬さを失いつつあるものをなおも身のうちから放さず、腹の中の一ところに擦り付ける。汗が飛び散り、肉と肉の打ち合う音が火の粉の爆ぜる音とともに炭焼き小屋に響いた。  しばらくすると、ジョアンは深く息をした。    白い喉から短く、歓喜の声が絞り出された。    アルナウトは呆然として彼を見た。      ジョアンのものは決して白濁を溢すことはなかった。  アルナウトの熱だけでは飽きたらなかったのか、さらに自らを細い指で弄ると、ときおり透明な粘液を滴らせたが、勃ち上がったままそれは震えるだけで何一つ生み出すことはない。    アルナウトはそれを確信する。      ジョアンの腿をどろりと伝い落ちたアルナウトの精が、あの女物の服に染み込んで行くのがわかった。      ジョアンの右手は体を繋げたままアルナウトの頬を包む。    あの妖しく蠢くような唇がアルナウトの額にそっと触れた。      再び雨足が強まる。       『ああ神よねがはくはなんぢの仁慈によりて我をあはれみ なんぢの憐憫のおほきによりてわがもろもろの愆をけしたまへ  わが不義をことごとくあらひさり我をわが罪よりきよめたまへ』 (詩篇51章1-2) ◆◆◆    トゥールーズの高等法院が使用するナルボネ城の一室は、春分を過ぎたとはいえ肌寒く暖炉から少しでも離れると底冷えがする。      窓から遠目に映るガロンヌ川は雪解けで水量を増し、濁流となって橋脚にぶつかる。  すでに陽は長くなっていたが、ここ数日降り続く雨で視界は悪く窓ガラスからも、弱い光のみが差している。     「来ましたよ、首都からあまり良くない報せが。王弟閣下を担ぎあげるとはあまり良くないやり口です」    やや荒れた指先が小さく折られた紙片を蜜蝋の蝋燭に近づけると、じゅっと音を立て火が上がり、焦げてゆく。  彼は黒いシャペロンを被った若い学者風で、なかなかの色男だ。   「シャロレー伯たちの旗じるしとしては小綺麗すぎる若者ですね、どのように騙されたのやら。こういった荒事にはあなたの方がお詳しいのでは? ド・モンフォコン卿」     部屋の隅でちょうど灯りの当たらない場所から、ぬっと大柄な金髪の男――ド・モンフォコン卿が姿を現す。黒い皮ベルトに留められた剣の鞘に反射した光が弱くきらめいた。     「俺はもうお偉いさんたちの面倒には巻き込まれたくない、散々だ。それでなくともナポリにまで付き合わされて、二度とアンジュー公やそのご子息など見たくもない」      暖炉の赤々と燃える火に照らされ、鈍く輝く錫の酒器から学者は赤ワインを呷った。  同じくド・モンフォコン卿も下男から酒を受け取り口を付ける。   「今のところここは中立を保つことにしています。逆にトゥールーズ伯家の家名が絶えていなければそれこそ面倒なことになっていたでしょう」   「俺のような、金のためにころころ主君を変える日和見はどこにでもいる。その数が多いほど殿様だけが頑張っても、戦況は変えられないだろう」     「アンジュー公のご息女も王太子を連れてアングルテールから敗走し、ロレーヌで父御から面倒を見て貰っているとか」    メストレ・ギルエムの皮肉に応えるように微かに震えるゴブレットの中の赤い水面には、アルナウトとよく似たド・モンフォコン卿の顔が揺れていた。

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