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11#蜜の底① ※R

 ソファでは手狭だと、もつれるようにしてベッドへ移動し、改めてそこへ横たえたフランの身体を見下ろす。ラスは、焦れて力が入りそうになる指をどうにか堪えて、そのシャツのボタンを一つ一つ、ゆっくりと外していった。フランはそれを楽しむように、されるがままになっている。  やがてシャツがはだけられて露わになった肌は、ラスが想像していたよりもずっとしなやかでなめらかだった。きめ細かく整った皮膚は蜂蜜をひと匙溶かしたような乳白色で、みずみずしく健康的な艶を宿している。触れれば手に吸い付くようなその感触に、思わず息を飲んだ。  「……ん、」  なめらかな肌を指でなぞると、フランから甘い声が漏れる。その反応に気を良くしたラスは、首筋に顔を埋め、その匂いを吸い込んだ。フランの体温と溶け合って甘く匂い立つ、澄んだグリーンとフローラルの香り。 「……すげえな、あんたの肌」  思わず漏れた素直な感嘆に、フランはふふ、と笑みをこぼす。 「()()で食べてたくらいだからねえ。僕、皮膚だけは頑丈なの」  触れられ、撫で回されて快楽を得ることに慣れ尽くした肌。そのことを冗談めかして笑うフランはさすがの余裕ぶりだった。無性に腹立たしさを覚えて、ラスは噛みつくようにその鎖骨に軽く歯を立てる。そこからゆっくりと胸へと唇を滑らせた。胸の先端をとらえて舌で嬲ると、フランの身体がピクリと跳ね、刺激するたびにそこが硬く芯を持って勃ちあがる。 「……っあ、ん……、んん」  先端を転がすように舌を這わせ、吸い上げては気まぐれに歯を立ててやると、フランの喉から殺しきれない喘ぎが漏れ、腰が震えた。 「ずいぶんとよさそうだな? ここ」  片方を舌先でつつきながら反対側を指でくにくにと押しつぶし、爪で引っ掻くように刺激すると、フランの声が甘く蕩ける。 「あ、……ん、それ、きもちい……、んっ」  その反応が、ラスの欲望にさらに火をつけた。  胸に舌を這わせながら、手をフランの腰に回し、しなやかな輪郭を確かめるように撫で上げる。以前ホテルで目にした記憶と、衣服越しに重ね合わせて想像した肢体。実際に触れると、それは間違いなく男の骨格で、まるみを帯びた女のそれとはまるで違う。けれど肌の弾力と柔らかさはやはりラスの知る男のそれとも違っていた――そのちぐはぐさが、たまらなく興奮を掻き立てる。  ひと息にフランのスラックスと下着を取り払うと、大きく脚を開かせた。白い腿の間で震える彼のものは、すでにしっとりと濡れている。その淫らな光景を見下ろしながら自分のシャツを脱ぎ捨てると、ラスはふたたびフランの上に覆い被さった。唇より先に舌先が触れ合って、そのまま絡め取るように互いの唇を求め合う。 「……ん……ふ、っ、んん……」  キスしながら、ラスの手が肌の上をなぞるたび、フランは小さく身体を震わせ、指がラスの背中を掻き立てるように滑った。ねだるように、確かめるように、ラスの背中の筋肉の起伏をフランの指先がひどく淫らに撫で上げる。  「ん……、ふふ、いいカラダ……」  ひんやりとした指が腹筋の溝をたどり、熱を持った肌を粟立たせながら下腹部へと這い下がっていく。その躊躇いのない手管に、ラスは思わず短く息を詰めた。ジーンズの上から、じっくりとかたちを確かめるようにフランの手が硬くなったラスのものを摩り上げ、やわやわと揉みしだかれる。  硬い布地越しの刺激のもどかしさに耐えかねて、ラスは性急にベルトの金具を外すと、窮屈な布の下から硬く張り詰めた自身を解放した。ぴたりと重ねた肌の間で互いに熱く芯を持ったものを触れ合わせ、絡むように擦り付けると、唇から熱い吐息がこぼれる。 「……はあ、ん……」   フランの反応は恐ろしく素直だった。どこに触れても抗うことも隠すこともなく快感を受け入れ、感じているさまを見せてくる。こんなふうに恥じらいのない正直な反応が返ってくることがいっそ新鮮で、それをもっと引き出したいという欲求がじりじりとラスの腹の底を焦がしていく。  「は、……あ……、ねえ、後ろも、触って、……」  ​淫らにねだられて、ラスはたまらず身体を起こしてベッドサイドの引き出しを乱暴に開けた。雑然とした中で眠っていた小さなローションのパウチを手に取ると、パッケージを確かめる余裕もなくパウチを破り、透明でとろりとした液体を指先にたっぷりと絞り出す。 「ん……っ、……」  指にたっぷりと絡めた粘液を、フランが自ら開いた脚の間に塗り広げ、さらに誘うようにひくつく後ろの襞へと触れる。  そこは熱く、すでに柔らかく潤んでいたが、ローションが加わった瞬間、指は信じられないほどあっさりと呑み込まれた。ぬるぬるとした滑りが、肌と肌の摩擦を完全に消し去り、ただ熱と心地良い締め付けを伝えてくる。 「……あ、あ……んん、」   ​フランの唇からさらに甘い声がこぼれ落ちる。  内側の柔らかさと熱に、ラスは思わずごくりと唾を飲み込んでいた。欲情と興奮で無意識にため息が漏れる。  求めるように中へ引き込もうとしてくる動きに逆らわず、ラスは一本、二本と指を増やし、その内部をゆっくりと解きほぐし始めた。そのたびにそこは一切の抵抗なく指を受け入れ、ぬるりとした熱で絡めとってくる。  男を知り尽くしていることをまざまざと知らしめてくるその感触。これまでどれだけの男を、こんな風に受け入れてきたのか――そう考えた瞬間、湧き上がったのは苛立ちにも似た独占欲だった。同時に今この瞬間だけは、他の誰でもなく自分がこの男を暴いているのだという事実が、それ以上の興奮となってラスを支配していた。 「……本当に慣れてんだな。どんだけ男喰ったらこんな風になるんだ」  ラスの皮肉に、フランは途切れ途切れに喘ぎながら腕を伸ばす。その瞳は、文字通り蜂蜜のように甘く蕩けていた。伸ばされた手がラスを引き寄せ、耳元へ熱い吐息が寄せられる。 「……そういうきみのは、……こんなに」   フランのもう片方の手が、熱く張り詰めたラスのものを的確に捉えた。指先で先端を弄り、手のひらで根元までをゆっくりと扱き上げるようなその動きは恐ろしいほど巧みで、とうに昂りきっていた硬い芯をさらに熱く脈打たせる。思わず息を呑んで動きを止めたラスに、フランは意地悪く唇を吊り上げて、その指先で弄ぶように際どい刺激を与えてくる。 「……ッく、」 「だめ……だよ。まだ……指、だけじゃ」  足りない、と囁いて、はやくこれが欲しいとばかりにフランが自ら腰を揺らして自身の腿にラスのものを擦り付ける。その挑発的で淫らな仕草に、思わずクソ、と奥歯を噛み締めて、ラスはフランの中に差し入れた指をぐ、と押し込んだ。奥にある快楽の芯を擦るように刺激してやると、フランがびくりと身体を震わせて背をしならせる。​  「あっ、……あ、ん、そこ…………っ」  ​ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて掻き回すたびに、フランの内壁が指を締め付ける。  ラスはそのまま、ふたたびフランの胸へ唇を寄せた。硬く尖って色づいたそこを舌先で捏ねながら、沈めた指で執拗に奥を擦り立ててやる。 「あ、あっ、ん、だめ、それ、あん、」  フランがびくびくと腰を揺らすたびに、彼のものからはとろとろと蜜が溢れて、ラスの指を呑み込んだ後ろまでを濡らしてゆく。 「足りない、っ、つったの、あんただろ……!」  ——もう限界だった。  ラスは指を引き抜くと、パウチに残ったローションを限界まで張り詰めた自身の猛りに塗りたくり、その入り口へと押し当てる。  先端が触れただけで、そこはまるで生き物のように、きゅっと収縮してラスのものを迎え入れようと蠢いていた。 「……はやく、」  期待に身体を甘く震わせながら、フランは潤んだ瞳でラスを見上げ、美しく微笑む。 「早く、きて」  ​その言葉が、最後の引き金となった。ラスはひと息に腰を沈め、その最奥までを一気に貫く。 「―――――っ、あ……!」  ​息が詰まるほどの熱と、締め付け。きつく、それでいて滑らかに受け入れる体内の感触に、ラスは思わず低い呻き声を上げた。フランは苦痛に顔を歪めるどころか、恍惚とした表情で息を吐き、ラスの背中に爪を立てる。 「……っ、は、ぁ……っ、すごい……、奥、まで、……」  ​腹の底から突き上げてくる原始的な衝動に身を任せ、ラスは無我夢中で腰を突き上げ始めた。軋むベッド、肌と肌がぶつかり合う生々しい音、そして二人の荒い息遣いと、フランの隠しようのない甘い喘ぎ声だけが、昼下がりの部屋に響き渡る。 「あっ、あ……ッ! いい、もっと……っ、強く……っ」 「……っ、うるせえ……!  どんだけ欲しがりなんだよ、あんたは……!」  ​フランは、ラスの激しい動きに巧みに合わせ、自ら奥へと導いてくる。その肉体は、まるで快楽のすべてを知り尽くしているかのようだった。抱いているはずなのに、己の方が快楽の渦へと呑み込まれていくような、倒錯した感覚に陥っていく。  激しい動きに、時おり負傷した左腕にずきりと痛みが走る――だがその熱さえも、今のラスにとっては興奮材料にしかならなかった。  極上の肌。柔らかく開いてどこまでも深く受け入れる、慣れ尽くした肉体。そして、挑発と素直さが入り混じった反応。そのすべてが、ラスの理性を根こそぎ奪い去っていく。 「ッは……、クソ、」   余裕はとっくに無くなっていた。目の前のこの男を、もっと乱したい、もっと深く貪りたいという衝動だけがラスを突き動かす。  ラスは衝動的にフランの身体を抱き起こすと、自分の膝の上に向かい合わせに抱え上げた。驚いたように目を見開くフランの腰を掴み、ふたたび深く挿入する。 「っ、あ……!」  ​体位が変わったことでさらに奥深くまで貫かれて、フランがたまらず声をあげた。 「……っ、あ、そこ、いちばん、深いところ、に……っ」    白い喉を反らせ、フランは身体を震わせながら荒い息を繰り返す。至近距離で見るその顔は、恍惚に蕩けてなお変わらず美しかった。潤んだ瞳、紅潮した頬、薄く開かれて喘ぎをこぼす唇。そのすべてがどうしようもなく扇情的で、なによりその反応を己が引き出しているという事実――それが、下半身を締め付ける熱以上に、たまらない快感となってラスの全身を駆け抜ける。 「……は、……最高」  ​思わずこぼれたラスの呟きに、フランが息を乱しながら、なお挑発的にふ、と微笑んだ。  甘く蕩けた蜂蜜色の瞳と視線が合って、その挑発に煽られるまま、引かれ合うようにキスをした。  舌を絡め、角度を変えて深く口づけながら、ラスはフランの腰を掴み下から突き上げる。フランもまた、自ら求めるように腰を揺らして、吸い付くように奥深くまで呑み込んでゆく。  もう、どちらが主導権を握っているのかもわからなかった。ただ、互いの熱と欲望が渦を巻き、二人を現実から乖離させていく。思考が、ただ快感の色に塗りつぶされていく。 「……っ、は、あ……もう、だめ、いきそう――、っ」 「………俺も、……限界、だ………!」  ​その言葉が合図だった。ひときわ強く突き上げた瞬間、フランの身体が大きく痙攣し、ラスの肩を強く掴むと同時に互いの腹を熱い飛沫が濡らす。その強烈な締め付けに促されるように、ラスもまたフランの身体の奥深くに自身を沈めたまま、灼熱を解き放った。思考が白く焼き切れ、全身の力が抜けていく。互いの荒い呼吸と、どくどくと鳴り響く心臓の鼓動だけが、世界のすべてになった。

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