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第5話 置き去りのクリスマスと、二人だけの夜

 それでも暁月は毎日健気に柊也に懐いていた。 放課後もいつでも一緒にいたがるし、勿論昼休みも、土日も……ことごとく断られる。 ……付き合う前の方がまだ一緒に帰ったり、遊んでいたのではないか?  今は殆どの時間を夜に割いている。放課後も昼休みも、勿論土日も。暁月は柊也の嘘を信じ、いつも待っている。  夜の心は疲弊し切っていた。いつでも柊也に拘束される。しかもこの男は弟の恋人なのだ。  そして今度は最悪なことにクリスマスを一緒に過ごすという……恋人だと勘違いしているのか……? ──────  12月23日、暁月は嬉しそうに出掛ける準備をした。 「それじゃあ、夜、行ってきます!! 水族館、楽しみ! ……俺、キスだけでも頑張ってみるよ。振られてないってことは嫌われたりしてないってことだろ? キス……したいな……」  夜は心臓を鷲掴みにされた様な気がした。 「う、うん……上手く行く様に祈ってるね……」  夜は笑顔で出ていく暁月を笑顔で力無く見送った。 ────── 「ねえ、柊也!! イルカショーさ、寒いけど前の方で見ない!? めっちゃ楽しい!! 来て良かった!!」 「ここ来たがってたもんな。暁月イルカ好きだよなー。お前可愛い」  暁月は顔を赤らめて照れくさそうに言った。 「ひ、久しぶりに可愛いって言ってくれた……ねえ、俺のことちゃんと好き?」 「え……? あ、当たり前なこと聞くなよ……お前が一番だよ。言ったろ? お前だけだって」  暁月は嬉しそうに柊也に抱きついた。 ……柊也は抱き締め返さなかった。  二人は閉館時間まで水族館を楽しんだ。 帰りにお土産コーナーに立ち寄ると、暁月はお揃いのキーホルダーを欲しがった。 「柊也、このイルカのキーホルダー一緒に付けよ? 良い?」 「ん……良いよ。あ、このペンギンのぬいぐるみ可愛い。……いとこにあげようかな……暁月、待ってて。全部買ってくるから」 「……いとこ? 小さい子でもいるのかな? わざわざぬいぐるみなんて……」 ──────  その後は暁月リクエストのディナーへと向かった。  その日一日中暁月ははしゃいでいた。それもそのはずだ。久しぶりに柊也を独占出来た。 普段感じていた不安が一気に吹き飛んだ。  そのまま良いムードで街の大きなクリスマスツリーの下へ移動した。そこは恋人たちでいっぱいだった。  暁月は勇気を振り絞った。 「ねえ、柊也……俺、キスしたい。もうそろそろ良い頃だと思う。キスして欲しい……」  柊也の顔は曇った。 「暁月……やめとこうぜ……俺、まだ早いと思うし、お前とのこのノリ? 関係? 崩したくない。そういうことやっちゃうと関係長く持たない気がする……。友達みたいな関係保った付き合いの方が絶対に上手くいくって! な? こっち来いよ。いくらでもハグはしてやるから。な? キスは……ごめん……」 「……あ……そっか……うん。は、早いかな? そう? 俺は……そんなことないと……したい……のに。当然だろ? もうすぐ付き合って半年だぜ? キスくらい……そんなことで気不味くなんの? おれ、セックスもしたい。もっと柊也と一緒にいたい。何で最近会ってくれないの?……明日も本当は一緒にいたいよ。何でクリスマスに実家なんか帰るの?……それ、本当? 俺以外にも会ってる人いる? 女の人? そうなんでしょ? 答えて……」 「あ〜 ごめん、そういうの無し。面倒。俺から告ったよな? お前が好きっていつも言ってるよな? 信じないの? なら別に構わないけど? 信じられないなら無理して付き合う必要ないから。もう帰って良い?」  暁月は声が出なかった。 そこに置いていかれたのだ。 ──────  暁月はツリーの下に腰掛けた。スマホを取り出すと電話をかけた。 「──もしもし、夜? 暁月だけど……ごめん、すぐに迎えに来て……俺、もうダメかもしれない」 『は!? 暁月っ!? 何があったの? 事故かなんか……』 「ううん……柊也の事怒らせちゃって……置いていかれたみたい。帰っちゃった。あはは……ひっく……お願い……早く来て……ふっく……」  暁月は泣き出した。 『どこにいる? すぐに行く』 「街のツリーのとこ……ひっ……死にたいよ……」 『ダメっ!! 待ってて!!』  夜は電話を切ると部屋を飛び出した。  途中何度も着信があり、目をやると柊也からだ。異常な回数かけてきている。敢えて無視して暁月の元へと急いだ。  夜は暁月を見つけると駆け寄った。 「あ、暁月っ!? 暁月っ!!」 「──夜? ありがとう……来てくれて。寒い。早く抱っこして?」 「ん……おいで?」  二人はツリーの下でしっかりと抱き締めあった。  どれくらいそうしていただろう? 雪がちらつき始めた。 「──終バス、終わっちゃったね? どっか泊まろうか」 「ラブホ、空いてるかな?」  二人はくすくす笑い合って歩き出した。 ……夜のコートのポケットの中では柊也からの電話が鳴り続いていた。 ──────  幸い夜の胸元には何の痕もない。暁月と堂々と風呂に入れる。二人はシャワーを済ませるとバスタブに浸かり、暁月は背中を夜に預けて抱かれにいった。 「──多分、柊也とはもうダメだ。柊也他に女の人がいると思う。俺とは絶対にキスしない。どんなに言ってもダメだった。『面倒』って言われちゃった。別れても良いって。何でこうなっちゃったんだろ……俺、なんかしたかなあ?……柊也も俺に告白なんてしなきゃ良かったんだよ」  夜は黙ったまま後ろから抱き締めた。  双子はベッドでもキツく抱き締めあい、優しく唇にキスをした。双子は落ち込んだ時や寂しい時、どちらともなくキスをする。  夜は暁月を撫で、暁月は心底安心して眠ることが出来た。 ──夜は、自分の存在が暁月を傷付けている事が苦しく、柊也に再度話そうと決めた。もう関係は終わらせる。

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