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第23話
その日の午後は帝の執務室での仕事だった。
建物に入ると、いつもはいる沐陽 がいない。
癇癪を起こして仕事をサボってるのかもしれないが、俺にとってはちょうどいい。
俺の仕事場所、もとい帝の執務室に入る。
挨拶をする前に帝が急に立ち上がり、俺の前にやってきて手を掴んで包帯を巻いてあるところを観察し始める。
「なんですか?」
「火傷をしたと聞いたぞ」
「……話が回るのが早いですね」
「大丈夫なのか?」
「火傷程度、問題ありません。刺されたわけじゃあるまいし」
「お前の体を傷つける者は誰だろうが許さない」
その言葉を聞いて、沐陽 がいない理由に気が付いてしまった。
「沐陽 さまを処罰するのですか」
「2度目は許さないと警告していた。処罰する」
「……俺は平気です。処罰しないでください」
「お主は自分の大切な存在が同じことをされても、処罰するなと言えるのか。沐陽 についても、この国の法に則って処罰する」
帝のきつい言葉に、俺は黙り込んだ。
それもそうだ。
もし、兄が、姉が同じようなことにあったら、俺は処罰するなとは言わない。
むしろどんな処罰をするのかと聞くだろう。
そして、この国に住む限り法は平等だ。
「沐陽 さまはどうなるのですか」
「国外に追放する」
「そんなに厳しい処分をするのですか」
「志明 、お前は分かってない。謝志 一族に手を出したこと、余の大事な存在に手を出したこと……斬首にしても良かったのだぞ。命があるのだ。優しいものだろう」
「……」
俺は何も言えない。
法を決めるのは帝であり、帝に口出しできるような立場にもない。
俺はただの相談役。
帝が決めたことは従うまでだった。
「分かりました」
そう呟き、俺は帝を見た。
「ご心配おかけしました。問題ありません」
「ああ。痕が残らないといいな」
「残りませんよ」
そう言って席に戻ろうとしたが、帝の手が伸びて、俺を抱きしめた。
お香の爽やかな香りが鼻を抜ける。
体の匂いを感じて、夜を思い出す。
体の奥が熱くなって、顔に熱がこもるのを感じた。
「今日もお前のところに行く」
「たまには別の人のところに行ったらどうですか」
「嫌だ」
「ふふっ、わかりました。シャンチーとお酒を用意しておきます」
「ああ」
体が離れると、帝が俺を見つめる。
その目は優しくて、とろけてしまいそうなほど甘い熱がこもっていた。
とくん、とくん、と静かに心臓が音を立てる。
いつもよりも早い鼓動を感じながら、俺は席についた。
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