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第41話
【ごめん、やっぱ島行けないわ】
和樹に、そうメッセージを送って、俺はスマホの電源を落とした。
あれから俺は、無人の公園で一時間ほどボーっとしていたようで、帰った時に真っ赤になっていたのを母さんに怒られた。
『一度焼けたらダメージは一生なのよ!』と言いながら、氷嚢で俺の腕を覆ってくれた。
多少熱中症っぽくなっていたのか、足の付け根や脇の下にも保冷剤をタオルで巻きつけられた。顔にもタオルで覆った大量の保冷剤を当てられた。
辛うじて顔は木陰に入っていたらしく、そこまで焼けては無かったけど、ヒリヒリはした。
「せっかくカッコいい顔に産んであげたんだから、大事にしなさい!」
プリプリ怒りながらも、塩を入れた麦茶とかトマトときゅうりの冷製味噌汁とか梅干しと塩昆布の白和えなんかも作ってくれた。
父さんが団扇で仰ぎながら『暑かったねぇ~』とか言ってくれるのも、癒やされた。
一時間ほど冷やしてから、アロエのジェルを塗りたくられた上に、ワセリンをまた塗りたくられた。ベタベタだ。
でもそのおかげか、次の日には多少服に擦れると痛いかもしれないくらいで治 まった。
ただ、次の日もアロエとワセリンでベタベタにされた。
シャワーを浴びる時も、絶対に擦るなと厳命された。風呂場から出た途端に、『タオルで拭く時はポンポン抑えて水気を取るだけにするのよ!ゴシゴシ擦ったらダメだからね!』と怒鳴られた。
『へぃへぃ』って答えたら、『へぃ は一回!』と怒鳴られた。
いや、それは言ってみたかっただけだろ。
数日経って、おかげさまでヒリヒリも落ち着いたから『もうアロエもワセリンも結構です』と伝えたら、『今度はこれね』と高保湿化粧水とか乳液とか持って来られた。
皮が自然にすべて剥 けきるまでは、これをつけろと言われた。めんどい。
その日から俺は、剥けてくる皮の『剥いても良いのよ』という誘惑と格闘しながら勉強に打ち込んだ。
剥いたら絶対、まだ生きている皮まで剥いてしまう事を俺は知っている。
そして、剥けそうな皮を放っておいたら綺麗にスルッと剥け落ちることも知っている。
知っているからと言って、剥かずに放置できるかと言うと、これが難しい。
だって、『剥かないの?』『もう剥けるよ?』『ほら、剥きたいでしょ?』って、皮が誘惑して来るんだよ。
知ってる、分かってる。俺だって剥きたい!でも、剥いたら駄目なんだ!
そんな格闘をしていたおかげか、俺はスマホの電源を切っていたことも忘れていた。
気付いたのは、勉強会の二日前。
日焼けをした日から二週間が経っていた。
これは不味いかもしれないと慌てて電源を入れた結果。すぐに電源を切りたくなった。
和樹からの着信が20件、メッセージが15件入っていた。
【なんかあった?】
【稔?大丈夫?風邪とか?】
【電源入ってない?電話かけてみたんだけど、繋がらなかった】
【おばさんに聞いた。もしかして、うち来た?】
【日焼け、大丈夫?一時間も外にいたって聞いた 俺のせいだよな、ごめん】
【電話、話せないか?】
【直接、話したい】
【稔、ホントごめん 俺が悪かったから、声聞いて話したい】
【堤谷から、稔に繋がらないって連絡来た】
【もしかして、ずっと電源切ってる?俺だけ着拒してる訳じゃない?】
【電話、通じないから、メッセージでごめんだけど、言い訳だけさせて欲しい】
【俺がメッセージ送ったあと、稔なら俺の家に来るんじゃないかと思ったんだ
だから、俺も迎えに行こうと思って外出た
んで、偶然、瑞樹 に会った
別に瑞樹と会う約束してた訳じゃないから】
【稔、もし、電源入れたら、教えて欲しい】
【何度も電話かけてごめん】
【メッセージも何件も入れてごめん】
そして、俺が読み終わる前に、もう一件、メッセージが追加された。
【稔、電源つけた?電話していい?】
いや、お前、余裕無さ過ぎでは?
……って言うかお前、弁明している割には、瑞樹とか名前で呼んでんだな。水流さんの事。
【悪い、電源切ってたこと忘れてた
今から昼めし食うから、また後で】
また蘇ってきた、言葉にできないイライラに大人しく従って、俺はメッセージを送った。
何なんだよ。
何で、俺の事が大事だ みたいに言うくせに、そんななんだよ。
もぅ、マジで知らね。
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