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第42話

和樹の電話を取らなかった事も、三時過ぎにスマホを開いたのに今から昼飯とか苦しい言い訳で電話を拒否った事も、また後でとか言いながらその後何も連絡しなかった事も、心苦しいと思う。 めちゃくちゃ嫌な気持ちだし、和樹を傷付けたと思ったらホント、泣いて謝りたくなる。 でも今、電話で話したりしたら、泣くし喚くし責め立てると思う。 ゴメンって言う気持ちもあるけど、それ以上に、何でって言う気持ちでいっぱいだ。 何で、ずっと放置していたくせに島に行こうとか誘ったんだ? 水流さんと仲良いの、何で? 呼び捨てにしているのは何で?いつから? 俺に会うより、水流さんに会う方が大事なのか? 女々しいとは思うけど、こんな気持ちになるのに男も女も無いよな。 女々しいとかいう言葉を作った人にすら苛つくわ。 もう、すべての事にむしゃくしゃしながら、明日の勉強会に持っていく教科書やノートをまとめていた時、部屋のドアがノックされた。 「稔?和樹君が来たんだけど、どうする?」 母さんが、ちょっと小さい声で話しかけてきた。 母さんにも父さんにも何も言っては無いけど、俺が和樹のとこ行ってくると言って出て行ったのに一時間外に突っ立って帰ってきたから、喧嘩したんだろうとは思われている。 「……ごめん、まだ会えない。まだ無理」 母さんも父さんも友達は大事にしなさい派だけど、仲直りは気持ちが落ち着いてからで良いんじゃないというタイプだ。 「分かった。じゃあ、和樹君はお昼食べて帰るから、稔が会わないなら、気を付けてね」 なんと。 和樹は追い出しませんって事?!むしろ、俺に部屋に籠っとけって事?! なんて酷い母親なんだ! 信じられない! いや、ってか、それって、昼だけだよな?!夕飯まで食べないよな?! くっそ~。 まぁ、俺の部屋にはウォーターサーバーが御座いますので、水分補給には困らないけどな! 間食だって用意しておりますし!二階にトイレだってありますし! 別に一階に降りたり出来なくっても何も問題ないからな! ハンカチの角を噛んでキーって叫びたい気分でいたら、またドアがノックされた。 「残念。和樹君帰っちゃったわよ。稔に迷惑かけたくないからって。可哀想にね」 今度は、何の遠慮も無くドアを開け放って母さんが入ってきた。 いや、ノックより先にドアが開いたような気がするんですけど? めちゃくちゃ大きい音にビクッとした体勢で固まった俺に、母さんがのしのし近づいてくる。 何。なになに?!怖いんだけど?! 変な体勢のまま固まっていたら、母さんにギュッと抱き締められた。 「も~。何よ~。何、青春してるのよ~。可愛すぎるんだけど~。和樹君も泣きそうな顔しちゃって、悩んでますって顔に書いてあるし、稔もウジウジして、どうしたら良いか分かんないって顔に書いてあるし、二人とも可愛すぎるんだけど~」 抱き締められたまま、ブンブン左右に振られる。 吐く。吐くから、止めて!気持ち悪くなるから~! 「はぁ、でも、あんなイケメンな息子が、いつか私の息子になるかと思うと、楽しみよね~。稔もカッコよく成長してくれたし。傑(たける)さんと稔と和樹君に囲まれて生活するなんて、もはや楽園(パラダイス)じゃない。ねぇ~。あ、和樹君が息子になるって事は、和季(わき)君も家族みたいなものよね。最高だわ~」 傑は父さんで、和季君は和樹の父親だ。 和樹が何で母さんの息子になるんだよ、と言いたい所ではあるが、こういう時に反論すると面倒な事になるのは分かり切っているので、何も言いません。 なんたって、腐女子でもある叔母さんのせいで、母さんだけじゃなくて初月萌(うずめ)ちゃんにまで、『彼氏の和樹君とは仲良ししてる?』って聞かれたんだからな。

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