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silica 01. あまくてつめたい
わたしたちVeilは、月に一度、体調を崩してしまうときがあります。これはヒートと呼ばれるものですが、症状はひとそれぞれ。
「おとね、色々もってきた」
わたしの部屋を訪ねてくれたけいくんは、大きな袋にゼリーとか飲み物とか、本当に色々もってきてくれました。
「ごはん食べれそう?」
わたし、頷きます。お返事をしたいのですが、わたしはヒートになると喉が痛くて、喋ることができないのです。けいくんは「あたためてくる」と言って部屋を出ていきました。
VeilにはCore というものがありまして、その場所はひとによって違います。『弱点』とも呼ばれるところなので、本当に親しい人、家族とかパートナーとか友人にしか教えません。
そしてわたしのCoreは喉の辺りなのです。ヒートなのか風邪なのか、たまに分からないときあります。
「これ食べて薬のんで寝ろ」
けいくん、あたためてくれた卵のおかゆとお薬をテキパキとならべて、最後にわたしのおでこに手を当てて、
「だいぶ高いな」
と言ってから、氷枕を用意して、喉にひんやりとするシールみたいなものを貼ってくれました。少し痛みが引いていきます。
Veilがヒートのとき、GlassがCoreを噛むと、番と呼ばれるパートナーになれるのですが、この番がいると、Coreの痛みとか、熱とか怠さとか、かなり楽になるらしいです。
授業ではそう習いましたけど、本当なのか分かりません。第三都市に、パートナーのいるVeilはいませんでしたから。
「おとね、あんまり部屋から出るなよ」
わたし、コクコクと頷きます。
学園に通うVeilは、ヒートのときに寮からでません。ヒートのVeilはなんだか匂いが強くなってしまって、それはGlassにとってあまりよくないらしいです。相性が悪いと具合が悪くなったりおかしくなったりしちゃうらしいのです。
これは大切なことなので授業で何回も習いました。このお話と同じくらい、わたしたちはジェスチャーをたくさん教わります。Veilにだけ通じる合図みたいなものです。
たくさんあるのですが、これだけは覚えなさいと言われるのは『逃げろ』のジェスチャー。わたし、これだけは覚えましたよ。そのほかはあいまいです。
「また見に来る」
けいくんぶっきらぼうに言って、きちんと机の上を整えてから出ていきました。
孤児院のときも、けいくんがいつも看病をしてくれました。でも、けいくんがヒートになっているところは見たことがありません。
けいくんはヒートがこないのかな、と思って、わたしシスターに聞いてみたのです。直接聞くのはよくないことだと学んだので。
そうしたらシスターは困り顔で頷きました。そんなVeilもいるのですねと、わたしは少しうらやましく思いました。ヒートは重い風邪みたいで、ぼんやりするし熱もでるし、わたしは喉も痛いので、すごくきらいだったのです。
『そんなVeilは、けいくんだけでしょうね』
シスターは悲しそうに言いました。だからわたし、これはいいことじゃないんだって知りました。
ごはんを食べて薬を飲んで横になっていたら、コンコンとノックの音がしました。けいくんかなと思って扉を開けたら、そこにはツキちゃんがいました。
「あの、具合はどう?」
わたし、あわててメモ帳を取りに行きます。喋れないって不便です。「だいじょうぶです」と書いて見せたら、ツキちゃんは不思議そうな顔をして、わたしの喉に貼られたシールを見つけて、なにか理解したように頷きました。
「これ、たべれるかな」
ツキちゃん、小さな袋からアイスを取り出しました。わたしアイス大好きです。
「熱が出るとたべたくなるから」
と言って、ツキちゃんは照れたようにわらいます。わたしが「ありがとう!たべたい!」と書いたら、ツキちゃんがアイスを渡してくれます。カップのアイスで三種類もあります!
せっかくだからツキちゃんを部屋に招きましたが、ツキちゃん、「おとねちゃんが元気になったら、またくる!」と言って帰っていきました。はやくヒートがおわったらいいのに。
お部屋には一人用の冷蔵庫があって、なかに冷凍室もあります。アイスが好きなので買っておいたのです。冷凍機能つき冷蔵庫。けいくんの反対を押し切ってよかった。
アイスをひとつだけ選んで、ふたつはしまいます。バニラのアイスにしました。わたし、こういうシンプルなのが好きです。
(つめた、おいし、おいしい!)
熱を帯びた喉がひんやりとします。なかなかいいですね。今度からはアイスを食べることにしましょう。そうしたらヒートの憂鬱も吹き飛びますね。
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