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pure 03. おかえり
俺は、第三都市にいる。おとねやツキも一緒だ。学園に通うVeilはみんな来ている。
どうして第二都市から出ることを許されたのかというと、学園に一通の手紙が届いたからだ。
第三都市に住むVeilは、国からとある仕事を任されている。それは、優秀なVeilを育てること。だから第一都市で生まれ育ったVeilも、捨てられたVeilも、等しく第三都市の学校で教育を受ける。
第三都市は国の支配下にあるから支配者はいないのだが、絶対的な指導者がひとりだけいる。
それは教皇と呼ばれている人だ。第三都市にいくつもある教会を、すべてまとめている人。俺たちの孤児院も、その教会のなかのひとつだった。
そんな教皇が、どうやら亡くなったらしい。
正直なところ、遠くから顔を見たことがあるだけで、神を信仰しているわけでもないから、思い入れはないのだが、Veilたちは葬儀に出席することになったのだ。
「……帰りてぇな」
「うーん。こればかりは、わたしも」
おとねと第三都市の空港で空を見上げる。第三都市に来れたのは嬉しいけれど、その理由が葬儀となると話は別だ。ツキも「私もです」と言っている。
俺たちは葬儀が少し苦手だ。Veilは怪我や病で簡単に死んでしまうから、みんな少なからず人の死に触れてきて、そのたびに色々な思いを抱く。大抵、憂鬱になるのだ。
「でも、シスターにあえるかなぁ」
おとねが言う。たしかに孤児院のみんなに会えるかもしれない。それは楽しみだった。
葬儀がはじまった。第三都市の全員が参列しているから、やっぱり教皇の顔は遠くから見るだけだ。街の中まで続く行列のなか、みんな祈りを捧げた。涙を流している人もいて、そういうのを見るのは苦手だった。
「けいくん、ちょっと孤児院の方、行ってみない?」
葬儀がもうすこしで終わるころ、おとねがそう言った。こっそり動いてもバレないだろうし、俺は頷く。ツキに孤児院に行くことを伝えて、おとねとひっそり列をはずれた。
「わたし、お葬式、苦手」
「俺も」
孤児院につながる裏道に出て、ようやく息を吐き出す。あの堅苦しい感じも息が詰まるから嫌いだ。
俺たちの孤児院は丘の上にある教会だ。丘の上までは家も少なくて、周辺には牧場しかないから広々としている。草原でヒツジが草を食べているのもなつかしい。
「……帰ってきたんだな」
ふとつぶやいたらおとねが頷く。またすぐに第二都市へ行くけれど、いまは帰ってきたのだ。
「けいくん! おとねちゃん!」
丘の上から、俺たちを呼ぶ声がした。
「シスター!」
おとねは、孤児院の前で並んでいる人のひとりに抱きついた。白髪混じりの髪に、シワだらけの顔で微笑むシスター。
「おかえりなさい。ふたりとも」
シスターが言う。葬儀を抜け出したことも、すぐに第二都市へ行くことも分かっているだろうけど、シスターはそう言ってくれる。おとねが嬉しそうにただいまと言う。
「ただいま、シスター」
「あら。けいくん、なんだか……」
帰りを伝えただけなのだが、シスターはなぜか驚いて、そしてふわりと笑った。
「なにか、良い出会いがあったのかしら」
「……うん」
「そう」
シスターはやっぱり嬉しそうだった。
孤児院のなつかしい顔ぶれがおとねに群れていて、そして俺のところに来るのを、シスターがそっと抱きあげた。
「さあさ、みなさん。まだお葬式の途中よ。お祈りしましょうね」
シスターがそう言ったら、みんなお行儀よく並び直した。俺たちも列に加わって、両手を組む。
祈ることなんてとくにないけれど、こうして孤児院のみんなに再会できたことを、教皇に感謝するのだった。
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