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pure 04. 悪い予感
俺はちょっと焦っていた。
カラットの臨時メンバーとして、情報を父や兄に伝えることが俺の任務なのだが、かなり驚きの真実を知って、さて伝えに行こうと飛行艇に乗って、とつぜん攻撃されたのだ。そしていまは逃げている。
「海景さん〜! これはなにごと!」
「ちょっとわからない! とりあえず逃げるぞー!」
理久さんが飛行艇を操縦するかたわらで、海景さんは飛んでくる飛行艇を、少し開けた窓から撃ち落としている。すごく小型の銃で。どういうことだろう。よく分からないけど、俺はじっとしておく。
じっとするついでに、飛行艇の操縦席は何者か目を凝らしてみる。全く見えないけれど、なんだか違和感がある。
「……あれ?」
俺が首を傾げるのと同時に、理久さんがすごい速さで飛行艇を発進させた。こんな速度が出るのかと驚く。
「優芽、なにか気になったか?」
理久さんが涼しい顔で聞いてくる。なんでそんなに動揺していないのかが最も気になるけれど、それは置いておいて。
「あの飛行艇、操縦してたのってVeilだったかも?」
俺がそう言ったら、海景さんが「ふむ」と言って考える素振りをした。理久さんも「なるほど」と言っている。
「とりあえず第一都市へ行く。優芽はお父上に例の報告を。海景と俺は本部へ行く」
理久さんがテキパキと指示をする。海景さんはゆるく返事をしたら、「腹減ったなあ」とか言っている。強い人たちだ。
◇
俺たちが足を運んでいたのは第四都市。地上だ。
ここは、GlassでもVeilでもない人が住んでいるところで、昔は発展していたところで、いまはGlassとVeilの罪人が送られる地だ。
はじめて訪れたのだけど、すごく不思議なところだった。海に浮かんでいないことも不思議だし、ずっと遠くまで地面が続いているのも面白かった。
俺たちは、フィルストーン学園の前学園長が捕らえられている監獄へ行っていた。そして何日もねばって、ようやく、彼は情報を吐いた。
「前学園長と、第三都市の教皇が、つながっていた?」
父は、すごく重々しく言った。俺はできるだけ軽く頷く。父の書斎には夕にぃもいて、俺の報告を一緒に聞いて、ものすごく険しい顔をしていた。
「夕、どう思う」
父が夕にぃに聞く。
「分からない。偶然とも言える」
なんだろう。なんだか、ふたりとも、様子がおかしい。
「教皇は亡くなった」
「……え!?」
「そしていま、学園のVeilはみんな第三都市にいる」
「……えぇ!?」
夕にぃはため息混じりにおしえてくれた。なんということだろう。というか、どういうことだろう。
「朝宮透が行っていた実験」
夕にぃが思い出したように言う。
「あれはつまり、Glassにも薬が効くという証明だ」
そういえば、そうだった。Glassには薬が効かない。大抵のものは眠れば治る。けれど、朝宮明は我を忘れるほどの効果があると言っていたらしい。
つまり、それは、Glassを混乱させることのできる薬。
例えば、第三都市の教皇を筆頭としたVeilがGlassを恨んでいたとして、その矛先となるのは、第一都市の貴族。しかしVeilではGlassに太刀打ちできない。
となると、Glassのなかで、なにか恨みや執着や野心のある人間を利用して目的を遂行しようと、きっと俺ならそうする。
「つまり、クーデターみたいな?」
俺がつぶやいたら、父が真剣な顔をした。
第三都市の、選ばれなかったVeilは、生涯を第三都市で過ごして、優秀なVeilを育てるために生かされる。それを、箱庭のVeilだと表現する人もいた。
父は、以前からこの状況をよく思っていない。古く根付いた慣習の、Veilを道具として扱うところは、俺も好きじゃない。
けれどそれで世界はまわってきたのだから、いまさら変えることは、それこそクーデターでも起こさないと無理。
「朝宮透も教皇と繋がりがあった。そう考えておくのが無難だな」
夕にぃが言って、父は「薬の出処もね」とつぶやいた。
しかし、これは困ったことになった。俺の予感が外れていることを願うしかないけれど、というかありえないことだけど、ほとんど確信してしまった。
「……あのさ、朝宮透の潜伏先。第三都市、だったりして」
父がはっとして夕にぃの顔がどんどん険しくなる。それもそうだ。だって、いま、けいくんがいるのは。
「世那を、呼んできてくれ」
父がカラカラに乾きそうな声で言う。
大変なことが起きなければよいのだけど、悪い予感はよくあたる。
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