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clear 07. ぬくもり
時計塔は日当たりがいい。だから風が冷たくても寒くはないけれど、けいは「さむい」と言って、俺の腕のなかにすっぽりと収まってきた。
学園祭がおわってから、なんというか、けいが甘えてくる。きっと甘えているつもりはなくて、ただくっついてくれるのだとは思うのだけど、嬉しかった。
そんなことを考えていると、けいは得意気な顔をする。俺たちにとって、匂いが分かるというのは感情が分かるということで、俺の感情は筒抜けだ。けいはそれが面白いみたいで、なにかとくっついてくる。
いまも、ここちよさそうに目を細めて、だらりと俺に体重を預けている。ひだまりみたいなぬくもりが愛おしい。
「……運命ってよくわかんないけどさ」
けいがふとつぶやく。俺は頷いて、けいの顔をそっと覗いた。けいはねむってしまいそうなくらい、まどろんでいた。
「世那のとこにずっといたいんだ。世那の匂いとか、声とか、ずっと手の届くとこがいい。これ、運命だから?」
けいは、こういうことをサラリと言う。俺は心臓がもたなくて大変だ。すこし息も苦しいくらいだ。
けれど喜びばかりが湧いてきて、けいを抱きしめた。
「ふふ。どうだろうね」
「……そんなにうれしい?」
「うん。うれしい」
けいがさらさらと頭を撫でてくる。けいは自分の魅力に疎くて、そんなところが危なっかしいけれど、とても惹かれるところ。
ふいに、けいが「世那」と呼ぶから抱きしめる力を緩めた。どうしたの、と言おうとしたら、けいは両腕をのばして、俺の首に抱きついた。
そして、そっと耳元に息がかかった。
「……すきだよ」
「…………え」
ささやくように言って、けいはすぐに離れていく。そして、きっと戸惑いと喜びが混ざっている、俺のおかしな匂いに、けいは満足したみたいだ。
「よろこんだ」
そう言って、また腕のなかに収まった。けいは面白いだろうけど、俺の心臓は止まる寸前で、けいのこういうところが、なんというか、困るのだ。
けいを抱きしめたら、けいは楽しそうに笑った。
「……なに、もう」
「世那の真似」
「…………うーん」
やっぱり、愛おしさはどこまでも積もっていく。この透明なぬくもりには「運命」なんて言葉じゃ物足りなくて、きっと似合う言葉はどこにもないのだと思う。
けれど、この時間は、きっといつまでもつづく。
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