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veil 08. いそがしい
おおいそがしですよ。
ことの発端は、そろそろ学園祭だね、というはなしを、わたしとツキちゃん、アサミくん、そしてけいくんで、していたときのことです。
「けいくん! 今年こそ、今年こそ! かわいい衣装を着よう!」
「…………わかった」
「そんなこと言ってもムダですよ! 絶対着てもらうんだから、あっ、えっ、ワカッタ?」
けいくん、頬杖をついて、すごく、ものすごくいやそうに、かなりすぐ了承してくれたんですよ。理由は、わたしに迷惑をかけたから。なんともけいくんらしい。
「なんでも着てやるよ。好きにしろ」
というそのひとことが大問題でしたよ、けいくん。
教室の時間がピタッと止まって、わたし、ツキちゃん、アサミくんは、首根っこをつかまれて、ずるずると連れていかれます。と言っても、教室のすみっこですけどね。
わたしのクラスは十五人います。ここ、教室のすみっこにいるのは、たぶん、十人くらい。ほとんど居ますね。
「あのね、ご贔屓にしている仕立て屋がいるの」
「えっあのっ、」
「私も腕のいい仕立て屋、何人か知ってるよ!」
「へぇっ、」
「宝石店のひとりむすめ、やらせてもらってます」
「おぉ」
と、こんな具合に、貴族のご息女、ご子息もですね、どんどん集まってきて「ちょっとこれ本気で挑もうよ」と手を組み合ってしまった。
わたしのクラスメイトって飲食店がだいすきなんです。だから今年も喫茶店をやりたいって、それは決まっていました。けれど、けいくんがなんでも着るのなら、そうだな、もっと豪華に、と悩んでいたら、ツキちゃん、ひかえめに手を挙げて、
「あの、展望台、夜に、ほ、星空の喫茶店、どうですか」
と言いました。ほお! みんな、ほお、と言っている。学園外でもいいのかな、というのは確認するとして「星」というテーマなら、これはもう、無限大にうつくしいですから、みなさん、ガッツポーズをしています。
すぐに学園長先生に確認をして、「夜ならば六時から八時まで」「定員は二十名」という条件付きで、許可されました!
そして、おおいそがしですよ。
学園外というのは異例ですからね、下調べとかもあって、それはたのしくできていますし、みなさんやるきでよいのですが、問題は、けいくんの衣装ですね。
第一都市のオートクチュールのご息女、ご子息(他クラスです)も名乗りを挙げて、たぶん、けいくんの知らないところで、とっても白熱している。
最初は、ただただみんなけいくんの隠れたファンで、こんなチャンスはない、といった感じだったのですが、だんだんたのしくなってしまったみたい。
だって、クラスの十五人分の衣装を、すごい人脈を借りて、日夜考えているんだもの。
「わ、わたしも、いいの? こんなにすてきな……」
決まりかけているデザイン図に絶句します。おいくらするんだろう。と思ったら、これらの費用は要りません、と言われた。なんて、なんて、ふとっぱら。
「おとねちゃんと優芽先輩のこと、応援してたから!」
「……ふぅぇ!?」
変な声が出てしまった。けいくんといっしょに、わたしもすこし、目立っていたらしいです。「だから、かわいくさせて!」なんて言われたら、わたしはもう、うれしい。
四年生。最後の学園祭は、とても華やかになりそうです。
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