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veil 10. きれいなわたしたち

 はじまりかけた秋の六時となると、景色はうっすらと青のなかです。すこしだけ冷たい空気に微かな星空。 「かんぺきだ……」  完成した「星空喫茶」をながめて、わたしたち息をついてしまう。展望台にはまるでテラス席のようにテーブルがならび、白のクロスがかけられて、ちょこんとキャンドルが灯されています。あたたかいオレンジ色がゆらゆら揺れて、それだけのひかりなのに、なんとも幻想的。  もうすぐ開店するのですが、すでにお客さんは待機していて、ちょっと緊張しますね。そわそわとしていたら、ふいにテントの方がざわめきました。  そしてざわめきが、こちらに近づいてくる。 「……おとね、これつけて」 「……!」  けいくんです。ああ、これはみとれてしまうな。みんな、みとれているな。なんだろうな。降臨しちゃったな。神聖なものが。降臨しちゃったな。 「…………おとね」 「あっ、ごめん、つけるっ」  けいくんから星のブローチを受け取りながら、こっそりとながめてしまう。  とんでもない人脈を駆使して作り上げてくださった衣装は、白を基調としてフリルなどがあしらわれたクラシカルなものです。とても可憐ですが、みんなパンツスタイルなので洗練された感じ。  そして、少しずつデザインは異なりますが、みんなふんわりとしたリボンがどこかに飾られています。わたしはうでのあたりにふたつほど、けいくんは、むなもとにひとつ、小さなお顔を包み込むようにひろがっています。  そして、そして、なによりも、やわらかくてきらきらとしたベールを、みんなかぶっています。布の端には細やかなフリル、布の表面は、わずかなひかりが弾かれる、つややかな感じ。  ベールが黒髪とお顔を引き立たせていて、うん、この世のものではないな。  けいくんのブラウスの左胸の辺りに、星のブローチを留めたら、完成です。綺麗、儚いなあ。でも黒い瞳はしっかりと光を宿して、アンバランスで魅力的です。  実は「ベールをかぶる」というのは、ほんの数日前、急遽決まりました。  あれはアサミくんがテーブルクロスをふわふわ広げて遊んでいたときのこと。けいくんが「おいやめろ」と止めようとしたとき、なんと、けいくんの頭にふんわりとクロスが落ちてきて、そして、衣装係のみなさんがはっとして、次の日にはこうなっていました。  でもベールっていいですね。こう、視界がやわらかくせばまっていて、まわりと自分が仕切られる感じ。でも透けているからさびしくないかんじ。いいなあ、おちつくなあ。 「おとね、似合ってる」 「け、けけけ、けいくん、です、それは、でも、ありがとう」  けいくん、ご自分がうつくしいこと、いつになったら理解するのかなあ。黒い髪に白いベールは神秘的ですね。けいくんは夜に溶けてしまいそうだけど、白をまとうと、ちゃんと存在していて、いいな。  ついに開店の時間になりました。わたしは受付で招待券をビリビリしています。 「あ! 優芽先輩! 世那先輩!」 「音音ちゃん女神様かと思った〜」 「めっ、いや、そんなっそんなっ」  照れ照れしながらビリビリします。世那先輩、ずっと一点を見ている。たぶんけいくんがいるところでしょうね。視線を追いかけたら、やっぱりけいくんがいて、こちらに走りよってきます。 「案内する」  それだけ言って、世那先輩と優芽先輩を、いちばん景色がきれいなところに、ちゃっかり案内していた。でもみんな、そうするつもりでしたよ。  というか、世那先輩と優芽先輩の招待券は、はじめからとっておいたのに。ちゃっかり一番でゴールするんだから、さすがですね。  二十名分の席がうまりました。みんなすでに感動している。いいですね。招待券をゲットできなかった方も店の外に集まっていて、みんなで星を見る感じになった。  いまのところ、みんなけいくんを見ていますが。でも星みたいなものか。そう大差ないですね。  六時三十分。みなさんのテーブルに食事をお届けして、そして、街を見るようにとうながします。  薄暗い夜の街に、ちいさなひかりがひとつ、またひとつと輝いていく。  お客さんの誰かが「わあ」と声を漏らします。わたしもつい「わあ」と言ってしまう。  むかし、お花畑みたいだなってツキちゃんとお話した屋台に、屋根と同じ色の灯りを飾ってもらいました。屋台のみなさん、すごくたのしそうに準備をしてくださった。いい街だなあ。  第二都市が攻撃されてしまったり、なにかと落ち着かない日々だったから、こういうイベントには積極的でした。みんな平和がだいすきだから。  夜空には星の灯り、地上にはお花畑みたいな灯り、そしてテーブルにはキャンドルと、きれいなわたしたち。  とってもすてきな「星空喫茶」です。    

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