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veil 11. 恋や愛
喫茶店とはいっても学園祭ですからね、メニューはサンドイッチとスープ、焼き菓子がいくつかと、ジュースと紅茶、というシンプルなものです。ですが、お客さんは景色をみながら、たくさん注文をしてくれて、開店から一時間もしたら焼き菓子は完売してしまった。すごいですね。
なので、たまにドリンクのおかわりを運ぶくらいで、ちゃんとひまになった。だからのんびり星を眺めています。うれしいな。
クラスのみんなも、お友達とお話していたり、客席にいる家族や恋人と過ごしていたり、けっこう自由な感じです。
「音音ちゃん〜」
「わっ、優芽先輩!」
展望台の階段にすわってぼんやりしていたら、優芽先輩がやってきて、わたしのとなりに、すとんっとすわりました。
「展望台なつかしいね〜」
優芽先輩はつぶやきます。そしてくすくすとわらっている。なにがおもしろいのですか、と聞いたら、
「あのときの音音ちゃん思い出してた」
と言いました。あのとき、一年生の、とき、ですかね。はずかしいなあ。
わたし、ちょっとは成長できたのでしょうか。できたとおもう。なんだかたくさん心が動いた気がします。だからきっと成長している。
でも優芽先輩って、ずっと優芽先輩だなあ。みんながぐってしているときも、ほわってしてるときも、優芽先輩って変わらなくて、だから安心します。
「優芽先輩がいてくれて、よかったな」
あ、声に出ていた。聞こえてしまったかな、と思ったら、優芽先輩ちょっとおくれて「ええうれしいなあ」と言いました。本当にうれしそうです。
そして、ふふっとわらってから、「俺もね」と言います。
「音音ちゃんに、たくさん助けてもらったよ」
って言いました。こんどはわたしがおくれて「ええ!?」となりました。たすけた、なんてこと、わたしがですか? ええ。
「音音ちゃんを見てると、頑張ろ〜ってなるんだよねぇ」
うれしい、けれど身に覚えがなさすぎて、うーんっとうなってしまう。そんなわたしに、優芽先輩はまたほほえみます。
「あのね、俺ね、」
優芽先輩、そう言ってから、いつもの笑顔をゆるませた、あまり見たことがない顔をしました。
「世那も慧くんも、家族も、みんなのことが好きでね」
すてきですね。とても優芽先輩らしい。
「嫌いなものってなくてさ。どんなものでも好き」
ええ。すごいなあ。
「でもね、だれかの特別になりたいなあって思ったのは、はじめて」
へえ。すてきですね。……え、だれかって。
「ふふ。お返事、まってるからね〜」
わたしのこと、ですか? いま、ちょっと、星を見るどころではなく、わたし、頬が熱すぎて痛いくらいだ。
優芽先輩はイタズラに成功した子どもみたいです。すごくたのしそう。余裕があってくやしいなあと、さすがだなあ、が同時にきますね。
でも、そうか、とくべつ、かあ。
わたしも、みんなのことがすきです。きらい、というものに出会えたことはないな。とくべつも、よくわからない。
でもそれって、けいくんと世那先輩のような、恋や愛みたいなもの、ですよね。
むずかしいなあ。むずかしいけれど、気になります。
優芽先輩が「お嫁さんにならない?」と言ってくれたときから、恋や愛というものに、生まれてはじめて興味がわいた。
恋や愛を、このひとと知ってみたいなあと思ったら、それはとくべつですか。
「これは、とくべつだろうなあ」
あ、しまった、声に出ていた。はずかしい。口を抑えて、おそるおそる優芽先輩をちらりとしたら、優芽先輩、なんか見慣れない顔してました。ちょっとたじたじしていて、照れているみたいな……。
でも、しばらくしたら、ふわりとほほえんで、
「ふふっ。それお返事〜?」
と言います。そっ、どっ、そうなのかなっ、どうなのかなっ。ちょっとパニックになっちゃいました。
優芽先輩、ぽんぽんとやさしく頭をなでて、
「卒業式、迎えに行くね」
と言いました。わたしは、もう、どうしよう、となって、
「……ハイ」
としか言えなかった。でも、なんていうのかな。未来に約束があるというのは、すてきなことだと思いました。
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