5 / 6

第5話:本当に大切なもの(後編)

16時に駅前と言われ、強引な誘いにドキドキする胸は抑えられず、僕は期待してしまう。 シャワーを浴びて、清潔な服に袖を通し、髪の毛を後ろに結わく。 駅前へ行くと見知った金髪がこちらを見て笑顔で手を振る。 思わずにやけてしまう自分に、どれだけ楽しみにしていたのかわかってしまう。 「またせたね、竜二くん」 「そんなことないぜ!じゃあ行こうか」 竜二くんに手を引かれ、人前でも構わず僕に接する彼に安心してしまう。 改札で切符を買い、電車に乗り込んでいく。 どこへ行くのだろうか? 「ねぇ、竜二くんどこに行くの?」 「秘密だ。それよりさ、働いてる正義、カッコよかったなぁ」 はぐらかされた。気になって気になってモヤモヤするけれど仕方ないよね。 それより自分の仕事している姿をちゃっかり見られているのが照れてしまう。 「どっかでご飯食べていこう。駅近にあるはずなんだ」 「うん」 笑顔で話す竜二くんが電車で椅子に座っている中、僕の手をそっと握る。 それだけでドキドキしてしまい、僕は舞い上がってしまう。 もしかして?もしかしてだけど…期待してもいいのだろうかと考えている。 そうこう考えているうちに駅は降りる場所について僕たちはそっと手を離し地面に降り立つ。 「とりあえずそこでいいか」 竜二くんが指をさしたのは長居できそうな個室の居酒屋で、僕はずるずると彼について行ってしまう。 未成年の子を居酒屋にいれる三十路ってどうなんだろうなぁと思いつつ…。 とりあえず今夜は酒は飲まないぞと意気込み、店員にはソフトドリンクで烏龍茶を注文する。 居酒屋で適当に食事を注文し、竜二くんと話をする。 コンビニでも毎日会っているから、特に変わった内容もなく、竜二くんの学校での様子や、僕らの仕事についてなど他愛もない会話だ。 それでも気が付くと時間が経っていて、時計を見ると20時過ぎている。 「あれ?もうこんな時間?」 「おっ、20時か~。よし正義、行こう」 「えっ?う、うん」 行くってどこに?と思うも聞けず、お会計は僕が払った。 竜二くんが払おうとしていたけど年下の恋人に割り勘とかさせたくないと思い、金を出す。 店を出ると竜二くんが僕の隣に立ち、手を握ってきた。 「正義の手ェ冷たいなぁ」 「そうかい?竜二くんの手は温かいね」 2人で手をつないで歩くと、駅に向かうのかと思いきや、竜二くんは繁華街をスタスタと歩いて僕を誘導していく。 そして歩くこと数分で、ラブホテルの前に立っていた。 「え?竜二くん、これって」 「正義、いやか?」 「えっ!?いやって、そんなわけないけど」 「じゃあ入ろう」 思わず即答してしまいラブホテルの中へ入って行ってしまう。 中へ入ると好きな部屋を選べるパネル式のベッドが一覧できて、竜二くんが無難な部屋を選んでいる。 僕はまさかラブホに入るとは思わなかったため、呆然としており、いつの間にか先払いで会計を済ませていた竜二くんが僕の手をひいてエレベーターへ乗り込む。 「大丈夫か?」 「ふぇ!?ああ、だ、大丈夫だよ??」 緊張と驚きで声が裏返ってしまい、エレベーターの中で思わず無言になってしまう。 そうして指定した階へつき、ホテルの部屋へ入ると、シックな雰囲気で中央にキングサイズのベッドがある部屋へ入った。 竜二くんが繋いでいる手を離し僕のことを正面から抱きしめる。 服越しにだけど重なる身体に心臓がドキドキして、ただ一か月、体を重ねていないだけなのに恥ずかしい気持ちにもなる。 「正義…」 「ぁっ、竜二くん…」 首元に顔をうずめられ、耳を甘噛みされる。 それだけで腰のあたりがウズウズしてしまい、これから先どうなってしまうのかと思ってしまう。 竜二くんは手慣れた様子で僕の衣服を脱がしていき、コートはそこらへんにバサッと投げていく。 「んんっ……はぁぁっ……」 首元から鎖骨を舐められ、少し当たる歯に背筋がゾクゾクする。 開いた手で少しずつ脱がされていき、お尻をそっと触れられる。 「ごめんな、正義」 そう謝ると竜二くんは僕のお尻をそっと撫でると、僕を抱き上げベッドまで運んでいく。 ゆっくりとベッドへ下ろされ、竜二くんと視線が交わると、口づけをし、舌を絡めていく。 「んふっ……んん………」 「はぁっ……んむ……」 お互いの唾液を交換し合い、深い口づけを繰り返し、竜二くんが僕の熱のこもった下半身を撫で上げる。 服を次々と脱ぎ捨てていきお互い生まれたままの姿になると竜二くんが僕の顔に何か所も口づけを落とす。 「痛かったよな、傍にいてやれなくてごめん」 「謝らないで…、竜二くん…」 「わかった…」 「あのさ…」 「うん?」 心臓がバクンバクンと鳴って死んでしまうんじゃないかと思う心境で僕は竜二くんを見つめ、震えた声を絞り出す。 「僕の中、君でいっぱいにして……?」 2人の長い夜が始まる瞬間だった。 *** バチュンバチュン 肉と肉がぶつかり合う音が響き、ベッド上で正義は四つん這いになって喘いでいる。 「あっ…ふぁっ…あああっ…あんっ……」 「正義っ……正義……」 熱い塊が正義の身体を貫き、甘美な声を聞かせ、何度も達した体は快楽に敏感になっている。 竜二が上から覆いかぶさり、正義の耳を甘噛みし、腰を振って彼の好いところを突いて行く。 「あっ……ああっ…竜二くん……竜二くん……」 涙をぼろぼろと流しながら竜二の口づけに応え、腰がガクガクになっても彼に応えようと正義は夢中になっている。 一か月ぶりのセックスはとても激しく、刺激的だった。 マッチに火がついたかのように熱く燃え上がり、2人はお互いに夢中になり、行為に没頭していく。 気が付いたら朝で、足腰が立たなくなった正義は、何とも言えない満足感に満たされていた。 「ねぇ竜二くん…」 かすれ切った声で恋人の名を呼ぶと、横で正義の腰をさすっている竜二が返事をする。 「なに?正義」 「君がこの一か月、うちでアルバイトしてるのと、一か月セックスしなかったのは関係あるの?」 いざ口に出すと恥ずかしいけど、とても気になっていたことである。 だが、竜二くんは髪の毛を少しいじって、顔を少し赤くすると、 「正義が大事だって、思ったから…俺なりに考えてみた」 とまぁ、可愛い事を言う恋人に、正義は思わず笑顔になって笑ってしまうのである。 「ここのホテル代で、バイトで稼いだお金全部飛んだんじゃない?」 「別にいいんだよ。正義と過ごせたから…、それより風呂入ろうぜ!」 竜二がバッと起き上がり、風呂場へ駆け込む姿を見て、正義は満たされた気持ちになった。 なんだ、中々に良い一年の始まりではないか。 腰がズキズキして痛むが、それも愛情だと思えば愛しいものである。 「今年も竜二くんと楽しく過ごせますように…」 独り言でボソッと言い放ち、1人で楽しく微笑む正義であった。 おわり ----------------------------- ラブホテルに行く話をまた書きたいと思い、書きました。 漫画にできるとGOODなんですけどね、それは環境的に無理なので…。 エロシーンがやむをえずカットで短くなってしまい申し訳ないです。 次はねっとりと前戯から書きたいですねドゥフフ。 ここまで読んで下さった方ありがとうございました( ̄▽ ̄)ノ

ともだちにシェアしよう!