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第8話
カチ、カチ、と壁にある時計の針が時間を刻む音が居間に響く。それ程にクラウド宅の居間は静まり返っていた。
「………………」
「………………」
無言。沈黙。静寂。だんまり。
エバンもクラウドも二人とも口を開かなかった。気まずい。
(おい何で何も言わないんだクラウド。さっきから石像みたいに固まって……え、もしかしてオレの自惚れ? 勘違い⁉ もしそうだったら穴があったら入りたいくらい恥ずかしいんだが⁉)
口は全く開いていないがエバンの心の中は荒れ模様だった。
対してクラウドの心の中は
(……? …………?? …………???)
状況を全く理解できずにクエスチョンマークで溢れていた。クラウドとしては、エバンに嫌われるのを覚悟の上でエバンの行動を愚かと断じ欲求に従ってしまおうと思っていた。返ってくる反応としては拒絶と嫌悪と恐怖、最悪憎悪かと覚悟していたのだ。
しかしエバンは思ってもみなかった反応を返した。青天の霹靂であった。
(告白…………告白⁉)
ようやく言われた言葉を理解したクラウドの顔が温度の無い冷めた表情から一転して真っ赤に染まった。口を何度も開閉させながら、震える。
「……エバン、い、今のはつまり……」
絞り出した声は蚊のようだった。口を開いたクラウドにエバンは食ってかかる。
「ようやく喋った‼ そうだよまずは言葉を通してだな、」
「筋を通せば君の気持ちを私にくれるという事か?」
「ぼえっ⁉」
しかしすぐに形勢を崩された。今度はエバンの顔が真っ赤になった。自分で気付いていなかった言外のメッセージを取られて盛大に戸惑う。
「お、オレ……そ、そそそそんなつもりは! た、ただまずは言葉にしろって言いたくて!」
盛大に照れてしまってエバンの口がうまくまわっていない。
「そうか、私は君に……気持ちを伝えていなかったな。それなのに私は先走って迷走を。なんという愚行だ」
眉を下げてクラウドが己の言動を悔いる。
「おい今まさに先走ってるっつーの、反論を聞けよ!」
クラウドは戸惑っているエバンの両手を両手で包んだ。エバンの肩が跳ねる。
クラウドは曇りのないどこかスッキリとした爽やかささえ携えた瞳でエバンの目を射抜いた。あの黒い欲求も今のクラウドを理不尽に飲み込む事が出来ていない。クラウドは、自分の想いに真っ直ぐに向き合っていた。
拘束などされていないのにエバンはあまりの熱視線に動けなくなる。
「私は……いや、俺は君が好きだ。愛おしい、慕っている、誰にも渡したくない。君の誰にも見せたことのない好意を寄せた相手にしか向けない顔や聞いた事のない艶やかな声を俺に見せて聞かせてくれ。俺のそういう姿は君だけに捧げよう」
「え、ちょ」
クラウドは表向きの『私』ではなく素である『俺』を使い、心からの気持ちをエバンに伝える。
エバンの手を包む力が強くなる。視線は一切そらされない。あまりにも深いエバンに対する愛のこもった告白にエバンの頬だけでなく耳まで一気に赤くなる。顔の周りだけ夏になったかのようだった。制止の言葉を投げかけようにもうまく言葉が出てこなかった。クラウドの一人称が変化した事もこの時点では察せていない。
「これからは何を行動するにも君を優先するから君もそうしてくれ。団長には俺から報告しておくから安心して欲しい。今すぐは無理でも二人で住むもっと広い新居も用意する」
エバンは真っ赤なまま固まってしまっている。
(な……なんか最初からオレがオーケーする前提で話してね……? しかもめっちゃ話が進んでる)
言葉に翻弄されている自分と冷静に分析している自分、結局はどちらも目の前の先走りしているクラウドに大層翻弄されていた。
クラウドはエバンの左腕の火傷痕を先程とは違う優しい手つきで触る。まるで覆って守るように。しかしやはり過去のトラウマからエバンの体が強張ってしまった。それに小さく「すまない」と言った後クラウドは火傷痕を愛おしいものを見る目で見つめる。
「この傷ごと、君の全てを俺だけのものにしたい。君の怯えも全て俺が包み込む。これからは夜を共に明かしていきたい。俺の恋人になって、ゆくゆくは人生の伴侶となってくれ」
「は……伴侶ぉぉぉ⁉」
エバンの目が点になった。情熱的な告白に圧倒されていたがあまりの飛躍にエバンが叫ぶ。
「いやホントお前止まれまじで‼ 頼むから一回黙って⁉」
叫んで震えているエバンをクラウドは微笑ましいものを見る目で見つめて、そっと抱き締めた。
「ぎぇっ」
エバンが奇声をあげてさらに固まってしまった。
「本当に……君とこうやって素直に言葉を交わせるようになれて、良かった。君を毛嫌いしていた過去の自分を助走つけて殴りたい」
その状態で暫くしてから。
「お前ほんと……極端すぎる……」
エバンが蚊の鳴くような声を絞り出した。受け止めきれない程の怒涛の告白を受けて、いっぱいいっぱいになっていた。
「それで……どう、だろうか。返事は」
「…………」
エバンは少しクラウドの肩を押す。抵抗なくクラウドは抱擁をやめた為、二人の間に空間が出来る。エバンはクラウドに目線が合わせられず下を向いた。
「正直に言うと……あまりの熱烈なアプローチに照れちまったりはするんだが、オレにとってアンタは距離感バグってる友人としか多分まだ思えてなくて……なんかこう、決め手が無いというか。このままじゃいつ好きになったんだろうって自分で自分に疑問を、」
「……」
エバンが喋っている途中でクラウドがエバンの腰と膝裏に手を入れて抱き上げた。そのまま居間を出ようと歩き出してしまう。突然の浮遊感にエバンがぎょっとする。
「エッちょっ、おい⁉ 無言で抱き上げんな‼ 続きっ続きを聞け‼」
「続き?」
クラウドは不服そうにしている。
断られそうな気配を察して場所を変えて口説き落とそうとしていたのだ。
「そう‼ とにかくおろせ‼」
エバンの気迫にクラウドは渋々エバンをおろした。
ゴホン、とエバンは咳払いをする。
二人はまた改めてソファに並んで座っている。断りの言葉聞かなければならない事にクラウドは少し顔をしかめてしまっている。
「そ、そりゃあナンパ男から助けてくれたあの時の背中は頼もしくてその、す、縋りつきたかった気持ちはあった」
「……それはもうほぼ恋情で良いんじゃないのか……?」
クラウドがそれで何故ダメなのかとエバンの考えが分からずに困惑した。慌ててエバンが弁解する。
「こんな中途半端でなんとなくで付き合うのはクラウドに失礼だろ?」
「むしろ大歓迎なんだが」
う、とエバンが口ごもりそうになる。エバンはそれを振り払うように首を振った。
「だ、だとしても‼ オレ自身は真面目で好青年……だと思ってたアンタの事確かに好きだがそれは多分友愛だし、アンタとどうこうなるとかは正直考えもしてなかったから、自分でも確信が欲しい」
「エバン……」
クラウドは眉を下げる。エバンの今の葛藤を聞き、どう反応するべきか考える。クラウドととしてはそのような確信は付き合ってからでも得られるのでは、と考えていた。
しかしその考えは途中で中断された。
「ん? 『だと思ってた』とは。今は違うのか?」
クラウドは、エバンの言葉の中で何か引っ掛かりを覚えてそれを指摘する。まるで今は真面目な好青年ではないと受け取れる言葉にクラウドは疑問を呈する。
「自分の胸に手を当てて考えてくださいヘビー級チャンピオン」
「だ、だから何だそのヘビー級チャンピオンというのは」
「話戻すぞ……でもこの話でアンタと気まずくなるのは嫌だ。それくらいは気を許してんだよ」
「……そうか」
(つまりこれからもお友達でいましょう、という事か……振られたな)
クラウドはそう受け取った。眉を下げ、目線も、頭も自然と下を向いてしまった。気持ちも沈んでしまう。
あからさまに落ち込んでしまったクラウドを見て、エバンは焦ってクラウドの両肩を掴んだ。突然の接触にクラウドが驚いて顔を上げると同時にエバンが口を開く。
「そ……そこで提案なんだけどさ!」
「提案?」
「一ヶ月恋人として付き合ってみるのはどうだ」
「……何……?」
クラウドはエバンの提案をすぐには理解出来ず眉をひそめた。
(先程告白を断られたのに恋人になる? そして期間限定?)
困っているクラウドを見ながら、エバンは止まらずに言葉を続ける。止まってしまったら何も喋れなくなってしまう程緊張しているが故に。
「一ヶ月オレはアンタの恋人になる。オレなりにクラウドに向き合っていくし、クラウドもオレの事を本気で恋人としての扱っていい。そして終わった後にオレもアンタの事がす、好きになっていたらそのまま付き合いを続ける。やっぱり無理だったら友人同士に戻る。このまま終わるよりは……何か得られるんじゃないかって」
「……」
クラウドが顎に指を当てて考える。クラウドが考えているのを見ながら、エバンは先程よりは勢いを弱めて口を開く。
「その、随分勝手な事を言ってるのは自覚してるし、アンタの気持ちを利用しているのもわかってる。だからこれでオレを嫌いになったならそれでいい。オレはアンタへの気持ちが何なのかハッキリさせたいんだ」
エバンは弁解をしながら自己嫌悪に襲われていた。クラウドが考え込んでしまい反応が薄い事も、更にエバンを追い込んでいった。
その言葉の後、暫くの間二人とも口を開かなかった。
一考の後、クラウドは時間が進む程肩身が狭い思いをしてきていたエバンに呼び掛けた。
「本気で恋人として扱って良いんだな」
「お、おう」
クラウドが覚悟を決めたような顔をしていた為、エバンにも緊張が走る。
「わかった。了承しよう。一ヶ月で君の事を落としてみせる」
「……よ、よろしく」
ニヤ、と勝ち気に笑ったクラウドに気圧されてエバンは苦笑いをした。
こうして、二人は一カ月限定の恋人として過ごす事になった。
早速恋人扱いしようとしたクラウドに対し
「心の準備させてくれ!」
とエバンが訴えた為、期間限定の恋人の契約は明日からとなった。
エバンは今日はクラウド宅には泊まらず、真っ赤な顔で帰宅していった。
夜道を酒場へと向かって走っていく。酒場で飲んできたのだろう何人かの人が、顔を真っ赤にして涙目で走るエバンの姿を目撃していた。
「ははっ」
エバンの背中を見送った後、クラウドは思わず笑いが漏れてしまった。
「あんな提案をして、何もかも許しているのに、俺の事が好きではないとは……可愛いな」
心底楽しそうに、クラウドは玄関から居間に戻っていく。
「疑いの余地のないくらい骨抜きにしてやろう、かな。ははっ」
「っていか気のせいか途中からアイツ自分の事俺って言ってなかったか? 普段は猫かぶってるってこと? 一人称の使い分けって何……?」
帰路についているエバンはクラウドの言動を不審に思い顔を青くしたり、自分の思い切りの過ぎた提案に羞恥で赤くなったりと忙しくしていた。
◆
数日後、早朝のアジトにて。団長であるマグノリアの招集で全団員が集合していた。屋内に詰め込まれて各々窮屈そうにしている。その中には勿論クラウドやエバンの姿もある。普段は順番に休みを取ったり取り掛かる任務の関係で団員全員が一堂に会する事は少ない。珍しい事に浮ついているのか団員達は各々会話をしざわついていた。
マグノリアが前に出て団員達に向き合う。マグノリアの少し後ろでマイケルも控えていた。
「マイケル達が担当した商隊の護衛任務から、何度か恐らく同じ目的を持った集団の襲撃に遭っているのは皆知っての通りだね。そいつらの目的なんだが革命を生き延びた王子を探しているらしい。キリニネラって国に聞き覚えがある奴は?」
ちらほら、と手があがる。二十年以上前に滅んだ国だからか、知っていると反応したのは年配の者が多かった。大半の団員は顔をしかめて何か心当たりがないか考え込んだり、キョトンとしてしまっている。エバンとクラウドは目を見開いて、驚いていた。
「いわゆる亡国の王子の生存説だ。そしてその生き延びた王子がこの自警団にいると奴らは思ってるらしくてね」
団員達がざわついた。薄々何か目的を持った集団に襲われているのは皆感じていたが、その狙いの不可解さに戸惑っている。各々隣り合っている団員に「どう思う」、「知っていたか」、「なんだそりゃ」と聞いたり、怪訝な表情をしたりしている。
ざわめきの中、エバンも飛躍した話に瞠目しクラウドに小声で話しかけている。
「な、何なんだろうな王子って。言い掛かりにも程があるよな」
「……あ、ああそうだな」
クラウドは少しどもったが同意した。
マグノリアが二度手を叩くと、ざわめきが少しずつ静かになっていく。おさまったのを見てマグノリアはまた口を開いた。
「暫く様子見しながら知らせる準備をしてたんだが、前回の襲撃から少し洗練された集団に切り替わってきてる。怪我を負った団員も出てきちまった。冗談抜きで命の危機だ。これからは任務の担当に常に護衛をつける」
団員の中には体の所々に包帯を巻かれている者もいた。じゃあその怪我はそのせいで……と何人かの視線がその団員に向かう。包帯を巻いている団員はそれを受けて少し居心地が悪そうに下を向いた。
「あともう一つ。最近西側の治安が悪化してる件だ。取り調べで街に入り込んだ荒くれ者達はここよりもっと西の方で有名な裏社会の組織だと確定したよ」
またざわめきが起きた。謎の理由による繰り返される襲撃の件に驚いたばかりだと言うのに。
「何の目的でわざわざ辺境のこの街に来ているのかはまだ分かんないけどね。捕まえた奴はそこまで詳しい事情は知らないようだ」
マグノリアはそこで集団に混じっているクラウドとエバンへと目線を寄越した。クラウドは少し厳しい顔をして、エバンは不思議そうな顔をしている。
「クラウドとエバンが遭遇した銀髪の若い男はその首領の息子らしい。ただ、最近その首領が死んだらしく息子が後を継ぐかもしれない……とも言っていたよ。それで今――少なくとも捕縛した奴が捕まるまでは揉めていたらしい」
(あのナンパ男そんな偉い奴だったのか)
エバンは驚いた。身綺麗だとは感じていたが想像以上の立場の人間だった。
それも踏まえて、エバンは怪訝な顔をする。あの銀髪の男との接触は先の一度きりであり、それ以前には顔すら見た事が無い。何を知って何を思ってエバンに接触してきたのか、と。
あの時に掴まれた左腕の火傷痕が痛んだような気がして、エバンは右手でそこを押さえた。
その様子を心配そうに見ながらクラウドもまた難しい顔をして頭を悩ませていた。
「それと、エバン」
「え、ハイ!」
突然の名指しにエバンが肩をはねさせながら反射的に返事を返した。周囲の人々もエバンへと視線を寄越した為、注目の的になってしまう。それに照れていたが
「アンタ今日からクラウドの所に泊めてもらいな。酒場の主人にはもう話は通してあるよ」
「……エッ⁉⁉」
それは直ぐに吹き飛んでしまった。急な提案にエバンは思わず素っ頓狂な声を出した。
(クラウドの所に⁉ 泊まる⁉ いや泊まった事はあるけど何故それをわざわざ言うので⁉ しかも名指し⁉)
エバンの頭に様々な疑問が思い浮かぶ。やがてその思考はつい最近クラウドと交わした期間限定の恋人の件に行き着く。
(ま……まさか仮で付き合ってるのバレた⁉⁉)
エバンの顔が青くなった。クラウド以外の誰にも言っていないがどこからか情報が漏れてしまったのだろうか、と周囲を見渡す。エバンの視界に此方を見るクラウドの姿が入る。
横にいたので手で顔を寄せるようにジェスチャーをする。クラウドが「?」という表情でエバンに耳を寄せる。
「おいどうするもしかしたらバレたんじゃねーの⁉」
小声で切羽詰まったような声色でエバンが耳打ちするが、クラウドは返事はせずに何故か生暖かい目でエバンを見つめた。
その反応の意図が分からずにエバンが戸惑っているとマグノリアが言葉を続けた。
「アンタは一度明確に狙われてるからね。クラウドならその時に相手の顔も見てるし対処も可能だ。クラウドは快く了承してくれたよ」
「お前知ってたんかい‼ 焦って損したわ‼」
思わずエバンがクラウドの胸ぐらを掴んで前後に揺する。揺らされながらクラウドは「わ、悪い」と苦笑している。
「ついに同棲か………エバン、何かあったらアタシ話聞くよ」
「順調に進んでいますねえ、ふふ」
「クレアさん何かって何⁉ シンディさんも微笑ましそうな表情やめて⁉」
周りから二人をからかうような野次が飛んだ。それに更に顔を赤くしてエバンが吠える。そのように反応をする為に周りがもっとからかってきているのをエバンは分かっていなかった。
より一層ざわめきが大きくなった中、マグノリアがまた手を二度叩く。
「ハイハイからかいがいがあるのは分かるけど緊張感持ちな!」
それを受けてまだエバンを気にする目線はやまないが徐々に静かになっていく。
「とにかくだ、これからは街の見回りにも護衛をつけるからね。組織の拠点が分かり次第部隊を編成しての大捕物になる」
先程までの浮ついた空気がマグノリアの言葉で徐々に引き締まっていく。事の重大さは各々理解している。
「奴等を捕縛し、洗いざらい吐いてもらって黒幕を引き摺り出すよ。皆気合い入れな‼」
ビリビリと痺れるような感覚を団員達のほぼ全員が感じていた。マグノリアの喝に団員達が応と応えた。
集会が終わった後、二人で話をしていたエバンとクラウドの元へマグノリアが足を運んだ。
「団長、どうしましたか」
未だに少しムッとしているエバンを押さえていたクラウドがマグノリアに気づいた。エバンも遅れて会釈する。
「一応アンタ達には伝えておいた方がいいと思ってね。アタシの勘だし、確証がある訳でも無いけど……。この二つの件、もしかしたら繋がっているかもしれない」
「……どういう事ですか?」
クラウドの顔が強張る。
「例えば、王子探しを族に依頼しているのはその組織の息子かも、とかね。わざわざ族を使わなくても組織なら手下を使えばいいのでは、とか引っ掛かりもあるけど……」
クラウドとエバンが息を呑んだ。そうなってくると話はもっと街にも自警団にも密接に関わってくる事になる。自警団に害をなす存在が同様の目的で既に街の外と街の中に入り込んでいるのだ。
「今の所確信があるのはエバンが狙われているって事だけだ。クラウド、エバンをちゃんと守ってやりなよ」
マグノリアの声掛けに、クラウドは反応を返さなかった。何か難しい顔をして考え込んでいるようだ。それをエバンが心配そうに見つめている。
「……クラウド?」
再度マグノリアが声を掛けると、クラウドはハッと反応した。
「あ、……分かりました。任せてください」
ぎこちなく胸をトン、と叩いてクラウドは了承した。
離れてマイケルの元へと向かったマグノリアの背中を見送ってからエバンがクラウドに視線を戻すと、また難しい顔で考え込んでしまっていた。
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