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第10話

 街の西側に近い所で見回りをしていたクラウドとエバンは、偶然マイケルと遭遇した。マイケルは本日は非番となっている。此方に気づき片手を上げて近づいてくるマイケルに、二人も歩み寄る。  市場として使われている広場の一角で三人は合流した。治安の不安はあれど、市場はそれを振り切るように賑わっている。 「よう新婚夫婦、結婚生活はどうよ」 「何から何まで間違いの発言‼」  エバンは激昂した。さらっと笑顔でとんでもない事を言い放ったマイケルを、敬うべき先輩だと言うのに睨みつける。  その横でクラウドは涼しい顔で 「毎朝二人で体を痛める程熱烈に過ごしています」 爆弾発言をした。  間。 「えっまじか、やるなお前ら……」  マイケルが引き気味に二人を見て後退った。口元が引きつっている。とんでもない誤解をされた事に気付いたエバンが顔を青くした。  どこか誇らしげにしているクラウドの胸元を掴んでエバンが思いっきり揺する。 「違ううううう‼ 何誤解されそうな言い方してんだ馬鹿‼ お互い寝相悪くて毎朝とんでもない姿勢で起きてるだけだろ‼」 「あっ一緒には寝てるんだな」 「〜〜〜〜ッ、ッッ‼」  墓穴を掘ってしまいエバンは反論出来なかった。クラウドの胸元を離して崩れ落ちた。クラウドは静かに胸元を直す。 「毎朝芸術点が高いポーズになってますよ、こう足とか手が絡み合ってたり」  実際にはもっと複雑に絡んでいるが、クラウドが両手を色々と交差させて二人の寝相を表現する。それを見たマイケルは笑みをこぼす。 「お前らどんだけ寝相悪いんだよ。ははっ、本当に仲良くなったなあ」  かつての仲の悪さを目の当たりにしてきたマイケルは今の二人を見て心温まる思いをしていた。時間が経ったのもあり、驚愕していたマイケルも今では二人の事を生温かい目で見守る一員となっている。 「今自警団ではお前らの関係性がどうなるかが一大ブームになってるからそういうのもっと皆に話してやるといいぞ」 「もっと関心向けないとダメな事あるのに何してんですか⁉」  またもとんでもない事を聞いたエバンは地面に座り込んだまま驚愕する。自警団が抱えている案件は多いというのに、とエバンは思った。やけに周りの自警団員からの視線が生温かいとはエバンも思っていたが、楽しまれていたとは。エバンはそれを不服に思い顔を顰めた。  対するマイケルは楽しそうに笑っている。 「息抜きだよ息抜き。シンディとか躍起になってるぞ」 「照れますね」  クラウドが頬をかいた。エバンが立ち上がってクラウドを睨みつける。 「お前はもっと困れ焦れ! 何でオレばかり焦ってるんだ⁉」 「ははは」 「はははじゃなくて!」  クラウドはエバンの反応を楽しんでいるようだった。  そのように一人騒いでいるエバンの肩にマイケルが手を置いた。 「お前がクラウドの家で同棲する事になったって決まってからこれはもう勝ったな、と。団長ってばナイス采配」  ぐっと親指を立ててマイケルがウインクする。エバンはマイケルの言葉に引っ掛かりを覚えた。 「待ってください今勝ったとか言いませんでした? オレ達の事でなんか賭けしてません⁉」  マイケルはエバンににっこりと笑顔だけを返し、クラウドの方へと向き直った。 「一人でエバンをちゃーんと守れるんだろうな彼氏様」 「私は強いので大丈夫ですよ」 「訂正してくれクラウド……もうツッコミ疲れた……」  エバンが顔を片手で覆って項垂れる。対して二人は楽しそうにしていた。 「…………」  ――その会話を、影から聞いていた人物は路地裏へとそっと去っていった。通りすがりの人がその異様な様子に首を傾けたが、既にその姿は路地の暗闇に消えていた。 「お前他の人がいる時は『私』なんだな」  マイケルが去った後、見回りをしながらエバンは会話中に気になった一人称についてクラウドに尋ねた。少し考えた後、立ち止まったクラウドがエバンの片手をとる。そのまま歩いていこうとしたエバンがつんのめった。クラウドが自身の口元にエバンの手を寄せて微笑んできた。エバンは文句を言おうとしたが、突然の色の乗った仕草に目を見開いて固まってしまった。 「素で接するのは今は君だけと決めている」  エバンの頬が赤く染まった。  急に往来で始まった恋人同士(仮)の甘いやり取りに何人かの通行人も歩を止めて興味深そうに見ていた。完全に見せ物になっている。 「そ、そうかよ……。おい今のでさっき面白がってた事が流せると思うなよ」 「おっと手強い」 「お前なんかどんどんしたたかになってない……?」  エバンが訝しげにクラウドを見た。  そしてようやく見られている事に気がついたエバンは、顔を更に真っ赤にし、クラウドに握られたままの手を握り返し、クラウドを引っ張って足早にその場を去っていった。  その後、自警団で有名な二人が付き合っているかもという噂が街にまで広まってしまったのはまた別の話。  ◆  ――某所にて。 「団長、指示通りにしましたよ。慣れてないのでちょっと浮ついた事言ってしまいましたが」 「ご苦労さん。さて……来るとしたら明日、いや焦ってるだろうから今夜かね」  言葉を区切り、前に立つ人物が腕を大きく振り上げた。 「配置につくよ皆! 気合入れなぁ‼」  大勢の人物の声が屋内に響いた。  ◆  その日の夜。  エバンは一人台所に立っていた。ぎこちない動きで包丁で野菜類を切っているところだ。クラウドは入浴中である。 「家事苦手だけど何でもかんでもクラウド任せは良くない。頼むから交代制にしてくれ」  と、何でもかんでもやりたがるクラウドにエバンは強めに待ったをかけた。  家事スキルはクラウドの方が断然上であり、クラウド自身気に入った相手の世話を大層焼きたがる性質だった。エバンは何度か自分が動こうとしたがその度に甘い言葉を囁かれて気がつくとソファに座らされていた。そして歯痒い気持ちを募らせていき、今日それが爆発したのである。  しかしクラウドは近くにいるとすぐにエバンを手伝おうとする為、エバンに「風呂入ってこい‼」と物理的に追い出された。そうしてエバンは一人で夕食を用意する事になったのである。  室内にとん、ととん、とん、と不規則な包丁の音が響く。沸騰待ちの鍋の様子を逐一確認する。エバンは料理に没頭していた。 「作り方これで合ってるっけ……? い、いいやとりあえず食べれれば……」  一応作ろうと決めているものはあれどざっと作り方をクレアに聞いただけな為だいぶおぼつかない。あれを準備してその間にあれをやって、と目まぐるしく動いていた。  しかしふと気になって動きを止めた。鍋の方を見る。 「ん? いや待て、先に沸騰させるんじゃなくて切った野菜入れてから沸騰待つんだったっけ……?」  しかし時すでに遅し。鍋に入れた水はぶくぶくと沸騰していた。それを虚しく見つめた後、エバンは切り終わった野菜が乗っているまな板を手に取る。沸騰している鍋の中に一気に野菜を投入する事にした。 「いいや! とりあえず野菜この中に突っ込んでしま、」  ――ガシャアアアアアン‼ 「おうううう⁉⁉ な、何だ⁉」  突然何かが割れた音が響き、エバンは肩を揺らして驚いた。鍋の中に入れる筈だった野菜のいくつかが床に落ちてしまう。反射的に火だけは止めたが、しかしそれに気をとられる間は無かった。次々と足音が聞こえた為だ。音がした方へと視線を向けると、割られた窓や壊された扉から続々と人が土足で上がり込んできたのである。 「は⁉ 誰だお前ら⁉」  エバンは咄嗟に持っていた包丁を構えた。その間にエバンは見知らぬ人々に囲まれてしまう。  明らかに普通の来客ではない。十名弱の人物達は各々武装しており、鋭い目つきでエバンを睨みつけている。荒々しい仕草とその雰囲気から、街の西側に陣取っているならず者達だとエバンは気付いた。  そしてその中に。 「よお、エバンくん。久し振りだな」 「⁉」  名前を呼ばれた事でエバンはそちらを向いた。切れ長の目で鼻筋が整った輝く銀髪の男が勝ち気に笑い、立っていた。容姿端麗という言葉が似合う程の美男子だが、周りを畏怖させる恐ろしさが滲み出ている。  男はエバンを舐めるように見つめている。それに気色の悪さを感じつつ、エバンは強気に構えた。 「護衛が一人しかいない状況で一人になるなんて、愚かだねぇ」 「お前確かあの時の……」  心底嘲笑うように男が笑う。  銀髪の男は酒場でエバンに絡んできたあの男だった。またエバンを狙って襲撃を仕掛けてきた事を察したエバンは、ちら、とクラウドがいるであろう浴室に目を向ける。クラウドが先程の音で異常事態に気づいたとしても瞬時にこちらへ向かう事は出来ないだろう。一人でこの場を切り抜ける必要があると判断したエバンは銀髪の男を睨みつけた。 「俺様はヴェルダーだ。末永くよろしくな、エバンくん」  エバンを囲んでいるならず者達はニヤニヤとしながら動こうとしない。銀髪の男、ヴェルダーの指示を待っているようだった。 「何かオレに用か。……いや、?」  エバンが殺気をまとう。使い慣れない包丁しか武装が無いが、誰か一人でも動けば斬りかかる算段だ。 「狙われる心当たりはあるみてぇだな。そうさ、俺様達が欲しいのはお前……」  しかし勝ち気に笑っていたヴェルダーは 「……?」 言葉の途中で何かに気がついて周りを見渡す。それにエバンも首を傾けると同時に、ヴェルダーは側にいた部下の一人に声を掛けた所だった。 「おい他の奴らはどうした。もっと沢山いた筈だろ」 「え、いや知らねえっすよ」  部下が首を振る。ならばとヴェルダーが別の部下にも視線を向けるがそちらも首を振った。ヴェルダーの額に青筋が浮かび、目元がピクピクと痙攣する。 「はぁ? ふざけてんじゃねぇぞ。たった一人捕まえるだけの簡単なお仕事じゃねえか。逃げ出すような弱い奴は殺すしかねえよなぁ?」  一段と低くなった声でヴェルダーが怒りを露わにした。ならず者達はそれに気圧されたのか後退りする者や、肩をはねさせた者もいる。その弱々しい反応にまたヴェルダーは気を悪くしたのか舌打ちをした。 「ったく使えねえ雑魚共が……まあいい、さっさとそこのエバンくんをお縄にかけろ。丁重に扱えよ、我々の愚かな救世主だからな」 「……!」  ヴェルダーの声に反応し、エバンを囲んでいたならず者達が縄や武器を構えてエバンへと距離を詰めてきた。  エバンが包丁を構えつつ周りを探る。どこか囲いが薄い所から包囲を抜けられないかと目線を動かす。  そして、ならず者の一人がエバンを攻撃する為に走り寄り棍棒を振り被った。反射的にエバンが包丁で受け止めようと防御態勢をとり、衝撃に備える。  しかし。 「ぐぇッ……!」  その男は突然うめき声を上げて白目をむき、床に倒れ伏していく。倒れゆく男の背後に 「自ら罠に飛び込んだ事に気付かないとはな……愚かはどちらだ!」 「クラウド! ってん⁉」 クラウドの姿があった。全身が濡れており半裸である。そう、濡れており半裸である。上半身は筋肉質な肉体が晒され、下半身は半ズボンを履いている。手にしていた両手剣の柄で殴り男を気絶させたようだ。突然の武器を持った半裸の濡れ男の登場に場がざわめいた。ヴェルダーが目を見開いて更に青筋を深くした。 「すまないエバン。待たせたな」  混乱する場を気にもとめずにエバンを安心させるようにクラウドは微笑む。 「いやいやいや何で上裸でずぶ濡れなんだ⁉」 「風呂に入ろうとしていたからだが」 「……そういやそうだったわ」  エバンの方が逆に慌ててしまったが、そもそもクラウドは入浴の為に不在だった事を思い出した。 「全裸でお湯をかぶっていたのだがそのまま出てくるのは流石にどうかと思って下だけ履いてきた」 「そうだね……全裸だと色々とまずいね……」 「まあ全裸でも戦えるには戦えるが」  もし全裸でこの場に現れていたら敵も味方も大混乱必須だっただろうとエバンは遠い目をする。敵に囲まれた危機的状況だというのに毒気が抜かれてしまった。 「そ、それにしても……」  エバンはクラウドの濡れた体をまじまじと見てしまう。拭く暇も無かったのだろう水が滴っていて、いつもより髪が抑えられている。滑らかな筋骨が水に濡れた事によってその弾力と硬さを美しく強調している。ズボンも濡れて体に張り付いており、体のラインが浮き出ている。体格の良いクラウドの肉体美を惜しみなく表現していた。  エバンの顔が真っ赤に染まった。 「〜〜ッ、目のやり場に困る! せめて拭いてきてくれ‼」 「そんな暇無いのでは……」  自身が風紀を乱している事に気付かずクラウドは首を傾けた。 「オイテメェ‼」  脱力しかけた空気を霧散させるように、刺々しい大声が響いた。声の主に周囲の視線が集まる。声を発したヴェルダーは額に青筋を浮かべ、目を見開き眉を釣り上げている。その視線はクラウドを真っ直ぐに射抜いていた。 「よお覚えてたかよ俺の顔、あの時は世話になったなあ、おい⁉」 「貴様、あの時の……」  クラウドも男の事を思い出したのかエバンを庇うように前に立った。 「俺はテメェが心ッ底嫌いでなぁ……‼ ここで始末してやるよ」  目を血走らせているヴェルダーに、クラウドがため息をついた。それがまたヴェルダーの気に障りますます青筋が立っている。 「頭に血が上りすぎて状況把握を怠っている事にまだ気が付かないのか」 「あぁ⁉ 何の事だよ‼」  クラウドは脅されても動じずに冷静に言い放った。 「気づかなかったのか? 私の家の周りで自警団の団員達が待機していた事に」 「……⁉ 何だと⁉」  ヴェルダーの目が見開かれた。 ◆  一方、クラウド宅の外。  ヴェルダー達に続いて家の中に突入しようとしてした二十余名程のならず者は、突然物陰や背後から自警団に奇襲を仕掛けられて瓦解していた。 「な、何だこいつら!」 「待ち伏せだと⁉」 「ぐあッ⁉」  動揺し士気が下がった状態のならず者を自警団員達が制圧していく。マイケル等古参の指示で確実に一人に対し数人がかりで取り囲み、無力化をしていった。混乱したままのならず者は抵抗する間もなく次々と倒れていく。 「オラオラオラどうしたどうしたぁ⁉ 散々街を混乱させておいてすぐにおねんねしちゃ釣り合いがとれねえだろうが! 起きろこの野郎‼」  セオドアが気絶しているならず者の一人の胸ぐらを掴んで無理矢理起こし、その頬を何度も何度も手のひらで叩いている。 「ぶべべべべやめやめてぶべべべべ」  叩かれた方はあまりの衝撃に起きたが抵抗出来ずに力無くセオドアに制止を呼びかけていた。しかしセオドアの手は止まらない。ならず者の頬は赤く腫れ上がっていた。  それを少し離れた所で見ていた団員のリッツが近くにいた別の団員にセオドアの異様な様子について尋ねる。 「何であの人あんなに荒れてるんだ?」  その団員は顎でくい、と別の方向を指し示した。そこにはクレアと共に気絶したならず者達を縄で縛っているシンディの姿があった。にこにこと笑みを浮かべながら容赦なくならず者を捕縛している。 「シンディさんについにはっきりとお断りされたそうだぜ」  セオドアがシンディに惚れている事は周知の事実の為、リッツは納得した。そしてまた別のならず者を痛めつけているセオドアの方を見た。先程まで痛めつけていたならず者は地面に倒れ伏している。鬼気迫る様子である。 「失恋の痛みをこいつら痛めつける事で発散してるのか……」 「うるせーよ外野‼ うおおおおん‼」  セオドアは心からの嘆きを叫びながら鬱憤を晴らし続けていた。大の大人が思い切り号泣しながら他人に八つ当たりしている様子は見るも無残なものだった。  やり取りが聞こえていたクレアがシンディに視線を送ると、シンディは微笑んだ。 「ふふ、私心に決めた人がいますので」  シンディはどこか楽しそうにしている。クレアが手を止めて目を見開いた。 「えーそうなの? 全然気が付かなかったわー。大体一緒にいるけどそんな素振り見た事無かったかも」  クレアが引っ張りながら持っていた縄を離すと、縄で繋がれていたならず者が地面に防御姿勢も取れずに落ち、カエルが潰れたような声を出した。白目をむいて気絶してしまっている。  今捕まえていた人物を縛り終わったシンディはクレアの方を見つめ、頬を染めて目を蕩けさせた。 「はい、いつも一緒にいてくださる素敵な方です」 「……そうなんだ……?」  クレアは首を傾けて誰の事だろうと疑問に思っていた。 「首尾はどうだい?」  粗方片付け終わりそうな頃にマグノリアがマイケルへと声を掛けてきた。 「団長! 団長の方は……」  マイケルがマグノリアの方を見る。マグノリアはその手で気絶した傷だらけのならず者を引きずりながらマイケルの方へと向かってきているのをマイケルは目撃した。視線を少しずらすと、マグノリアの歩いてきた場所に気絶したならず者達の体で道が出来ていた。マイケルが口元を引きつらせる。 「あっ問題無さそうですね死屍累々が見えます。流石猛者……」 「おうよ、猛者の帰還だよ褒め称えな」  マグノリアが斧を肩に担ぎ直す。斧からは血が滴り落ちていて、マグノリアの顔は返り血で少し汚れていた。 「……殺してませんよね?」  マイケルが顔を青くして恐る恐る尋ねると、マグノリアは頷く。 「抵抗が強かった奴がいてねー、キツめにお仕置きしただけだよ。こいつね」  ずい、と引きずってきたならず者をマイケルの方へと突き出した。確かにそのならず者は腕と足に斧で出来たであろう裂傷があった。これでは手足に力がはいらず、自力で立てないし何も手に持てないだろう。即座に、無力化されて一方的に叩きのめされた事が察せられた。  突き出されたならず者は「うぅ……」と顔色悪く呻いている。 「あっ引きずってきた人の事でしたか」  マイケルが苦笑いする。数多の実力者を率いる自警団団長の強さを改めて実感していた。 「クラウドにも作戦の事は伝えた。あの人数ならクラウドとエバンだけで制圧出来るね。ここ片付け終わったら中入るよ」 「了解です。とは言ってももうほぼ捕まえられた感じですね」  マイケルが周囲を見渡すと、まだ抵抗しているならず者は指で数える程であった。この調子なら近い内に終わりそうである。 「我々レザルークの街を甘く見たのが運の尽きだったね。伊達にこの厳しいご時世で生き残ってないよ」  自信満々に胸を張るマグノリアの言葉にマイケルは強く頷いた。  ある程度片付け終わった後、団員達はマグノリアの元へとまばらに集まっていった。後は中にいる黒幕を制圧するだけだという空気になっている所で、リッツがおもむろに挙手をする。何だなんだと視線がリッツに集まる。 「あのーところで誰も言わないから自分が言うんだが、クラウドの家を破壊される前にこいつら取り押さえるべきだったのでは」  間。  少しして団員達がざわめき始めた。 「それはそう」 「壊れ損」 「皆で修繕費とか出そうぜ」 「賛成」 「ついつい相手の混乱する様子を楽しんでしまった……」  団員達が揃って苦笑いをする。  そこかしこに縄で縛られたならず者が転がる中、自警団達はいつもの空気を保っていた。  ギリギリ意識を保っていたならず者の一人が、朦朧とする視界の中その様子を見て 「ば、化け物どもが……」 と、一言振り絞った後地面に倒れ伏した。

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