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アネモネ外伝-終末世界御伽忌憚-いつかの日々 前編⑤
「…………」
いくら、長い時間をかけて身体を洗っても、凌辱の痕跡は……らくがきは消えない。
ただ、擦った肌が赤くなっただけだ。
ずっと、水を浴びていたせいで歯がカチカチと鳴る。
まだ、アルコールが残っていて、ひどく気分が悪い。
郁は、簡単に着替えるとふらふらと部屋に戻った。
……テーブルに置いてあったはずの、ケーキの箱がない。
代わりに小さな紙切れが置いてあった。
手紙だ。
「いくへ きみのことはきらいだけど、けーき、ありがとう。おいしかった」
ぽたぽたとアレキサンドライトの瞳から涙がこぼれおちる。
あわてて、涙を拭って、寝室に向かうと――くうくうと望月がまた眠っていた。
郁は、その場にこうべを垂れた。
ともすれば、神に祈っているような。
あるいは懺悔するような。
そんな恰好に見える。
「ごめんなさい……ごめんなさい、」
郁の唇が言葉を紡ぐ。
「もえぎ、」
そして、また郁は少女の名前を呼んだ。
だが、部屋に応じる者は誰もいなかった。
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