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外伝アネモネ-終末世界御伽忌憚-いつかの日々 後半プロローグ②
郁は、その言葉を聞かなかったように、望月に甘えてきた。
望月もそれを受け入れる。
好きな彼に求められるのは純粋に嬉しいからだ。
「ねえ、もしかして最近、何か辛いことでもあった? 郁は頑張りすぎるから……」
さりげない風を装って、問うてみる。
自分では力不足だろうと思いながらも、少しでも郁の背負っている苦しみや痛みを理解できたら。
共有できるだけでも、きっと違うはずだ。
「……そうじゃない、けど」
郁は首を横に振る。
それから、黙ってしまった。
いつものような感情の機微による不機嫌ではない。
ただ、答えに困っているようだった。
でも、その目が望月を欲しているのは分かってしまった。
先ほど懇願してきたとおり、ただ、自分にそばにいてほしいのだろう。
郁のいじらしい感情の機微が愛おしい。
そっと郁の髪を撫でる。
「ん……こども扱い、しないで……」
「こどもだと思ってないよ。きみにちゃんと魅力を感じているんだから。ね、郁……今だけは辛いこと忘れちゃおっか」
言葉の意味を理解したのだろう。
表情は乏しいが、その頬は真っ赤である。
くすっと望月は喉をならす。
そうすると自分の幼いかんばせは、とても無邪気に見えることを知っているからだ。
「ひどいことをされるのとやさしくされるの、どっちが郁にとっての救いになるのかな」
本当に、こればかりは分からない。
望月に罰されていることに安堵していることも分かるし、やさしさを求める当たり前の感情の機微もある。
どちらが郁にとっての救いになるのか、望月は未だに悩んでいる。
僅かに、郁がびくりと目を見開いて怯えた挙動をした。
望月はとろおりと蜜が滴るような甘い声で言った。
「きみが嫌がっても、今日はいっぱい甘やかしてあげる。やさしくしかしてあげない」
望月の言葉に、郁の緊張が緩み、ほっとした表情を浮かべた。
どうやら、望月の答えは正解だったらしい。
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