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第7話 バラよりも甘く
「やばい」
財布を手に、 拓斗は呟いていた。
明日は、女とデート。
遊びで付き合っている子だが、モデルなので連れて歩くと気持ちが良い。
だが、軍資金が心もとないのだ。
彼女は派手に金を使うタイプで、拓斗にもあれやこれやと貢がせてくる。
しかし、そのおねだりが可愛いものだから、つい買い与えてしまうのだ。
給料日は3日後。
クレカも限度額いっぱいまで使っている。
電子マネーの残金は5274円。
どうしたものか。
「ギャンブル、だな……!」
しかも、絶対に勝たねばならない。
とぼしい元手を、万倍に増やさねばならない。
しかし拓斗は、にんまりと笑っていた。
絶対に勝てるカモを、知っているのだ。
現金の入った財布を手に、拓斗はマンションの自室を出てエレベーターで上へと登り始めた。
途中、秋也を誘った。
1対1だと、不自然に勝ってしまう。
拓斗、秋也、そしてもう一人のカモ。
この3人で勝ったり負けたりしていれば、怪しまれる事もない。
「ギャンブル? 感心しないな」
「堅苦しく考えるなよ。小遣い稼ぎするくらいだ」
「あと3日で給料が入る。それまで我慢できないのか」
「そういう秋也だって、欲しい新刊がたくさん溜まってるんじゃね?」
むぅ、と秋也は口元に手をやった。
確かに、読みたい本が山ほどある。
特に、好きな翻訳家が訳したロシア文学の全集が、ついに発表されたのだ。
(あれを読みたい……今すぐに!)
結局秋也も財布を手に、拓斗と共に上階へと登った。
二人の目指す先では、玲がこれまた悩ましげに、お菓子の空き缶を開けたり閉めたりしていた。
今、開催されているバラの博覧会。
喉から手が出るほど欲しい、新しい品種のバラがあるのだ。
世界各地のコンクールで、金賞や芳香賞を獲得している逸品。
「心を浮き立たせるような花と、夢のような芳香を持った、ハイブリッドティーローズ……欲しい……!」
でも、こつこつ貯めていたお菓子の缶に入っている金額では足りない。
博覧会は明日で終了。
3日後の給料日を待っていては、手に入らない。
どうしたものかと考えている、その時だ。
「よぉ、玲」
「ちょっと、時間あるか?」
拓斗と秋也が、財布片手にやってきた。
「ポーカー? やるやる!」
拓斗の申し出に、玲は飛びついた。
「金、賭けるぞ。いいか?」
うんうんと、首を縦に振る玲。
「あのバラ、絶対欲しいんだ!」
「やれやれ、まだ諦めてなかったのか?」
「お前も熱心だな」
拓斗と秋也は、呆れた。
玲に誘われ覧会に行ったはいいが、彼は1時間もお目当てのバラの前を動かなかったのだ。
『おい、もう行くぞ』
『この、心浮き立つような花……』
『置いて帰るぞ!』
『この、夢のような芳香……!』
あのバラの苗を欲しがっていた玲の姿は、まだ記憶に新しい。
「じゃ、トランプ」
「玲、準備頼む」
「OK!」
ほんの少し。
ほんの少し勝てばいいのだ。
玲は、もうバラを手に入れた心地でトランプを配り始めた。
ポーカーが始まり、何回か勝負を重ねるうちに、ツキの流れが見えてきた。
「手が悪いな。今回は、降りる」
降りた秋也。
「じゃあ、俺と玲とで勝負だ!」
ツーペアを出した拓斗に、玲はスリーカードを広げて見せた。
「やった~! 勝った勝った! いただき!」
こんな風に勝ったり負けたりを繰り返す三人だが、ツキは玲にあるようだった。
たちまちのうちに、勝ちが積もっていく。
「こんなに勝っちゃって、何だか悪いな!」
「何言ってんだ。本音じゃないだろ」
「一人勝ちだな、玲」
喜ぶ玲だが、次第に流れが変わってきた。
「え? 二人とも、降りちゃうの?」
「悪ぃな。手がよくねえ」
「俺もだ」
ぷぅ、と玲は頬を膨らませてカードを投げ出した。
できていたハンドは、フルハウス。
(せっかく強い手が入ったのに、二人とも降りちゃうなんてぇ!)
あと一回勝ったらやめよう、と玲は考えていた。
あのバラが買えるだけの金額があればいいのだ。
無茶は禁物だ。深入りはしなくていいのだ。
焦る玲だが、もう一息というところで勝てなくなった。
膨れた顔をしてカードを混ぜる玲を、拓斗と秋也はにやにやと眺めていた。
実は、玲はポーカーが弱いのだ。
良い手が入れば、ぱあっと顔を輝かせ、悪ければ不機嫌そうに曇る。
手の内を曝け出しているような、いやすっかり裸のポーカーだ。
顔を見ていれば、降りた方がいいのか、強く張ってもいいのかがすぐに解かる。
バレバレなのだ。
(自分で気づかねぇのかな?)
(玲は素直だからなぁ)
始めは勝たせてやっていた。
場代も小額だし、まだまだ資金はあるし。
だが、勝負が熱くなってきたところで、二人の男は牙をむいた。
情け容赦なく、玲からむしりにかかったのだ。
負けが込んできたことを理由に、天井を決めないようにしよう、と言葉巧みにルールも変えた。
どんどん心もとなくなっていく、玲だった。
ツーペアを手に、玲は自信のない声を出した。
「コール」
「その上に2万積む」
「秋也!?」
「受けないのか?」
うぅ、と玲は震えた。
でも、ジャックと10の二つのペアに、残りの1枚は9なのだ。
勝てそうな手ではある。
ただ、無表情で金を積み重ねていく秋也が怖い。
「受けるよ! その上に……千円」
そろそろ限界かな、と感じたところでやめるのがポイントだ。
あまりコテンパンにやっつけると、次の勝負ができなくなる。
秋也の方は、完璧なポーカーフェイスだ。
無表情のまま、手札を整えた。
「よし、ショーダウンだ」
どきどきしながら、玲は開かれる秋也のカードを見守った。
ジャックのぺア……え、同じ?
10のペア……そんな!
そして、最後の一枚は……キング!
(あぁ、爆死……!)
玲は、テーブルに突っ伏した。
同じツーペアだが、秋也の手の方が強い。
「じゃあ、掛け金はいただくぞ」
秋也が、ごっそりと金を奪っていく。
「そろそろ、やめとくか?」
拓斗が、笑いを含んだ声をかけてくる。
しかし、すでに崖っぷちの玲は、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「勝負はこれからだ、って!」
「そう来なくっちゃな!」
(一度! 一回勝てば、流れはこっちに向くから! たぶん!)
根拠のない自信を支えに、玲はカードを配る。
しかし、彼が破産するまでに、そう時間はかからなかった。
すでに所持金ゼロになっている玲だが、それでもまだ続けると言い張った。
「もう一回! 最後の一勝負!」
「そんなこと言ったって、お前もう無一文じゃねえか」
「このバラを賭ける!」
テーブルに飾ってあったミニバラの鉢植えを抱えて、我がままを言う玲だ。
拓斗と秋也の心は、揺らいだ。
(ヤバい。超・カワユス!)
(この姿は、そそる!)
だが、ミニバラを勝ち取っても仕方がない。
拓斗も秋也も、溜息をついた。
「やめておけ。もうお終いだ」
「バラをもらっても、枯らしてしまうからな」
デートに費やすだけの金を、ゲットしたのだ。
文学全集を買うだけの金を、儲けたのだ。
拓斗はタバコをくわえ、秋也は散らかったカードを集め始めた。
無慈悲な二人の姿に、玲は歯を食いしばって悔しがった。
そして、とんでもないことを口走ったのだ。
「これで最後! 今度のお給料、全額賭けるから!」
「な、何ィ?」
「考えてから喋れ、玲」
拓斗と秋也は目を丸くした。
むふ~、と鼻息の荒い玲。
秋也からカードをひったくると、返事も待たずに配ってくる。
顔を見合わせ、二人は肩をすくめた。
(そこまで、あのバラに入れ込んでるのか)
(まぁ、勝っても負けてもこれで最後だな)
すでに、金は充分巻き上げているのだ。
玲の給金が上乗せされようがされまいが、影響はない。
大切な、最後の大勝負が始まった。
それでも、玲の逆・ポーカーフェイスが変わることはなかった。
(まったく、バカな奴だなぁ)
(そこがまた、魅力ではあるが)
(どうしようかな。少しは負けてやっか?)
(少しくらい負けてあげても、バラの値段には届かんぞ)
拓斗と秋也は勝って当然の勝負を、やはり勝利で終えた。
「借用書、書くか?」
秋也が一応、紙とペンを用意する。
のろのろとペンを取る、そんな玲の手を拓斗が抑えた。
「やめとけ。書いたって、ちゃんと払ったことねえじゃん」
「うッ……!」
拓斗の言葉は確かに真実だが、人は図星を指される事を一番嫌う。
玲の小さく低いプライドは、ひどく傷つけられた。
「は、払うよ!」
「来月、所持金ゼロで暮らすのか? できっこねえよ」
悔しいが、これも図星だ。
ふるふると震える玲の声は、小さくなってしまった。
「払うよ……」
しゅん、とうつむいた玲は、思わず苛めてしまいたいオーラを放っている。
(ヤバい。超・カワユス!)
(この姿は、そそる!)
拓斗は、ポンと手を打った。
名案を思いついたのだ。
「じゃあ、今すぐに払えるもので返してもらおうかぁ?」
拓斗は玲に擦り寄ると、その肩に腕を回した。
「な、何だよぅ?」
「カ・ラ・ダ! 体で払ってもらおう!」
「ええええッ!」
「それは名案だな!」
「秋也まで!?」
全財産巻き上げられた上に、体まで要求されるとは!
「ひ、ひどい! ひどすぎる!」
「自分で蒔いた種だろ?」
「自分で刈り取るんだな」
玲は、二人に散々悪態をついた。
「馬鹿! 外道! 鬼畜!」
「口が悪いなぁ。玲、ご奉仕が済むまで俺たちには敬語を使え。OK?」
「敬語!?」
「敬語ですか、だろ」
「ヤだ! そんな羞恥プレイ、絶対イヤだ!」
「じゃあ、3日後の給料全額払うか?」
「うッ……」
払えなければ言うことを聞くんだな、と秋也が立ち上がり、玲の傍までやってきた。
「それで? どこでやるんだ。ここか?」
「秋也まで、ノリノリとか……!」
真面目な秋也まで乗り気なら、これはもう言うことを聞くしかない。
玲は諦めて、体で払うことを決意した。
だが、昼日中の明るい光の降り注ぐリビングで、というのはあんまりだ。
「せめて、寝室で……」
「寝室で抱いてください、だろう。言ってみろ」
(秋也のバカ! むっつりスケベ!)
しかし、背に腹は代えられない。
下を向いて、玲は小さな声を出した。
「寝室で……抱いて、ください……」
やればできるじゃねえか、と笑う拓斗だ。
(拓斗のアホ! エロエロ男!)
二人に挟まれ、玲はとぼとぼと寝室へ向かった。
ベッドに腰掛けた拓斗と秋也だが、それきり動かない。
(変だな。エッチしたいんじゃなかったの?)
いぶかしく思う玲に、拓斗のニヤけた声がかけられた。
「さて、どうして欲しいのかなぁ?」
「どうって」
「これからエッチするってのに、服着たままじゃできねえだろ?」
まさか、と玲は震えた。
まさか、拓斗の言いたいことは。
確かめるつもりもあって、玲は口にしてみた。
「僕の服を脱がせて……ください」
「ま、いいだろう!」
拓斗は偉そうに胸を張った後、玲に手を伸ばしてきた。
(あぁ、やっぱり!)
これから全て、この調子で進むのだ。
(羞恥プレイなんて、ヤだよぅ!)
拓斗と秋也の手が、どんどん服を剥いでいく。
素裸に剥かれ、玲は身をすくめた。
口づけをしようと顔を近づけた秋也が、思い出したように意地悪を言う。
「これから、どうして欲しいんだ?」
「キス……して、ください」
「いいだろう」
やはり、偉そうに言った後、唇を合わせてくる秋也だ。
普段は優しいのに、こういう時は拓斗以上に意地悪になるのだ。
それでも、秋也のキスはやっぱり優しかった。
唇を何度もついばみ、舌で歯茎をゆっくり舐めてくる。
咥内に入ってくると、上顎の裏の敏感な部分をくすぐるように軽く掃く。
拓斗の手は、キスで興奮し始めた玲の脇腹を両手で上下に撫でさすり、さらに昂ぶらせてくる。
じっくりと撫でられ、首筋を、耳をしゃぶられ、玲はついに声を漏らし始めた。
「ぅん、んっ……あぁん……」
「おい、誰が声出してもいい、って許可した?」
「え?」
「啼きたかったら、声上げたいですって言えよ」
「そんなぁ!」
ここまで来て、まだ意地悪な遊びを続けるのだ、拓斗は。
「それなら、声なんか出さないもん!」
玲は唇を噛んで、声を漏らすまいと耐え始めた。
しかし、秋也の甘いキスに、どんどんのぼせ上がっていく。
拓斗のテクに、どんどん感度が高まっていく。
「んッ。ぅぐ、んンッ!」
「頑固だな。言えよ、エッチな声出させてください、ってよ」
拓斗の指先が、胸の粒をじっくりと擦りだした。
親指と中指でつまんで、指腹でくるくると転がしてくる。
人差し指の指先で、軽く引っ掻くように中心の小さな窪みを掘り起こす。
キスを終えた秋也の唇が、玲の白い胸を這い回る。
やがて唇から分厚い舌が差し出され、ねっとりと舐めまわす。
意地悪な舌先は、ついに乳輪まで伸びてきた。
「はあっ、あッあ、やッ」
「無許可で声を出すな」
「あぁ、秋也のバカぁ!」
必死で耐えようとしても、体がわなないてくる。
結んだ唇から、声が漏れてくる。
拓斗の指が、秋也の舌が、全身に痺れを走らせる。
玲は指を噛んでこらえていたが、我慢も限界になった。
「こッ、声が出したいですっ」
「あと一押し!」
「うぅッく。エッチな声、出させて、くださいぃッ!」
「いいだろう」
「ああッ、あぁ、あ、あぁん!」
秋也のせいで、たっぷりと濡れた玲の乳輪。
拓斗がそこから唾液をすくい、乳首をぬるぬると撫で回す。
秋也の舌は、そんな拓斗の指を避け、ただひたすらその周囲を舐めまわす。
「やっヤッ、秋也。早く、早くぅ」
「早く、どうして欲しいんだ。言わなければ解からないぞ」
「解かってるくせにぃい!」
拓斗の指が乳首から離れ、玲の言葉を待っている。
秋也の舌は、胸に乗ったまま動かなくなった。
じりじりと、近づいてくる気配。
そして吹きかけられる、熱い息。
だが、決して触れてはこないのだ。
近づいたかと思ったら、また離れてしまうのだ。
玲は、また我慢できなくなった。
「そこを、舐めてください……」
「そこ?」
「もぉおお!」
ぎゅっと目を瞑り、玲は恥ずかしい言葉を振り絞った。
「乳首、舐めてください!」
(あぁあ! 僕、何かどんどんダメになっていくぅ!)
恥ずかしさに身をよじる玲を見て、拓斗と秋也はクラクラしている。
そこに、彼は気付いていなかった。
恥ずかしさに身をよじる玲を見て、拓斗と秋也も見悶えた。
(ヤバい。超・カワユス!)
(この姿は、そそる!)
ぺろり、とようやく秋也の震える舌が、敏感な部分に乗せられた。
ゆっくり舐めた後、唇で挟みきゅっと締め付ける。
優しく締め付けながら、時折ちろりと舌先で触れる。
秋也お得意の、焦らしプレイだ。
(ほ、本当は! もっと激しくしたい!)
心の中で悶えている秋也の耳に、玲の声が突然に響いた。
「あぁん! もっと! もっと舐めて! もっと吸って! 噛んでえぇ!」
「れ、玲!?」
拓斗も驚き、玲の胸へとにじり寄った。
「すげえな。玲が、こんなお下劣なコト言うなんて」
「少し、焦らしすぎたかな……」
拓斗は、秋也と逆側の乳首を口に含んだ。
「へっへへ。いただきます!」
「あぁ、そんな。二人でなんて! やっあ、あぁあ!」
まるで女性のように、乳首が弱い玲だ。
これだけで、達してしまうこともある。
秋也と拓斗、二人がかりで同時に両方弄られると、たまらない。
玲は、大きく仰け反った。
「あ、ヤバい。玲のやつ、イッちまいそう」
玲の限界を感じ取った拓斗は手を伸ばし、彼のペニスの根元を締めた。
「ダメダメ、お預け!」
「拓斗、何でぇえ!」
「イきたいなら、ちゃんとお願いしろよな」
「く、クソバカ拓斗!」
「敬語で、だぞ?」
「げ、ゲスバカ秋也!」
お願いどころか、口汚く二人を罵る玲だが、拓斗も秋也も知らんぷりだ。
ゆっくりじっくり味わう、秋也。
激しく刺激を与える、拓斗。
性質の違う二人分の責めに、とうとう玲は悲鳴を上げた。
「出させてください! お願い、イかせてえぇ!」
「よくできました!」
拓斗が手を離すとすぐに、勢いよく精が飛んだ。
「う、うぅう! はぁ、あぁ……」
ぐったりと力を抜く玲の髪を、拓斗はさらりと梳いた。
秋也は体を拭いてあげた。
だがしかし。
「いい子になってきやがった」
「まだまだ愉しめそうだな」
意地悪な二人の男は、その先を考えていた。
(あぁ……このままお昼寝できたら、最高……)
だが、放心したように横たわる玲の体内に、ゆっくりと太い指が埋め込まれてきた。
「んんッ!?」
(この指の感じは、拓斗!?)
たっぷりとローションを絡め、かき回してくる。
「ちょ、待って……そ、そんな……ッ!」
螺旋を描くように内壁を押されると、たまらない。
(お昼寝どころじゃ、なくなった!)
欲しくなる。
そんな事をされると、どんどん欲しくなってくる。
でも、と玲はぶるりと震えた。
(して欲しいけど! してもらうには……やっぱり恥ずかしい言葉を!?)
悦に飛んでいた時には感じなかった恥じらいが、途端に拡がる。
『出させてください! お願い、イかせてえぇ!』
(あんなこと、言っちゃうなんて。僕、おかしくなっちゃったぁ!)
玲の頬は、どんどん熱くなっていった。
薄く瞼を開いて、はぁはぁと呼吸する玲の口に、秋也が長い指を入れてきた。
喉奥に伸ばされ、撫でてくる。
くすぐったさは、すぐに悶える快感に変わり、玲の体に再び火がついた。
下の口は、拓斗。
上の口は、秋也。
再び玲を、いじめにかかる。
「んぁ、んッ。んっんっ、ふぅ、ん……」
口に入れられた秋也の指をしゃぶっていた玲は、背筋にぞくりと欲望が這い上がって来た心地を感じていた。
指よりもっといいものを、と秋也が誘いかけてくる。
咥えたい。
秋也を、口で愛したい。
大好きな秋也に、いっぱいしてあげたい!
そんな玲を見透かしたように、秋也が声をかけてきた。
「欲しいか、玲」
だが、あとは黙ってしまう。
欲しいなら、どうすればいい? と無言のまま迫ってくる。
「秋也の……させて、ください」
「俺の、何を、だって?」
「……」
(そんな恥ずかしいこと、言えないってばぁ……)
しかし、秋也の指を舐めていると、いやらしい気持ちがどんどん前に押し出されてくる。
恥を恥と感じる気持ちが、麻痺してくる。
それでも玲は、精一杯の品を保って秋也に向き合った。
「秋也の……あれを、口でさせてください」
「あれ、か。まぁ、いいだろう」
秋也は、ボトムの前をはだけた。
意地悪だが、それでも優しい秋也は膝立ちをして、玲が咥えやすいような姿勢をとってくれた。
四つん這いになって、玲は秋也のペニスにキスをした。
舌で舐め上げ、先端を唇で覆い細かくしゃぶる。
唾液を摺りこむように、舌で刺激する。
玲のたてる濡れた音が、彼の後膣を弄る拓斗の耳にも聞こえてきた。
(秋也のヤツ、巧いことやりやがって)
俺だって玲を苛めちゃうもんね、と拓斗は指を奥に進めた。
内壁を摺り、感度の高いスポットを焦らす指の動きは、まるでニヤニヤと笑っているようだ。
変化した拓斗の愛撫に、玲は震えた。
「っく、あ。はぁ、う、ん、ッあ……!」
顔は見えないが、解かる。
拓斗の、意地悪な心の内が。
(た、拓斗のバカぁ!)
「玲、集中しろ」
「む、むぅ、あぅ……」
フェラに、秋也の指導が入ってしまった。
(く、屈辱ぅ……)
しかし玲は、二人がかりの意地悪にどんどん溺れていった。
「はぁはぁ。んっ、ふ。ぅうん」
夢中で施す玲の喘ぎが、秋也を、拓斗をどんどん昂ぶらせていく。
「そんなに悦いのかぁ? 玲」
拓斗の声は、ご機嫌だ。
「上のお口は満足そうだな。でも、いいの? 下のお口は、指だけでいいのぉ?」
「んぅう、んふッ!」
すっかり猛々しくなった秋也のものは、玲の口で脈打っている。
(あぁ、これが体の中に入って来たら……!)
そう考えると、玲は熱い息を吐いてしまう。
同時に拓斗の指腹が体内の敏感な部分を押して、さらに責め立ててくる。
内壁の腹側の、感じる部分を擦ってくる。
二本の指は激しく蠢き、玲を翻弄してくる。
「ああ! あっ、あッ、んあぁ!」
大きな声を上げ、玲は秋也から離れてしまった。
「もう一度、咥えて。そろそろ終わりにするぞ」
「んぁ……んんっ」
終わりにする、ということは。
(秋也、感じてくれたんだ。出しちゃうほど)
玲が咥えるとすぐに、秋也は腰をやってきた。
ゆるゆると口を突かれ、咥内の粘膜で感じていると、もうひとつの口も突いて欲しくなってくる。
激しく奥まで、突いて欲しくなる。
(あぁ、僕。もう、おかしくなってもいい……!)
玲の、最後のタガが外れてしまった。
「あっあッ、欲しい。拓斗、欲しい……ッ!」
すがりつくような玲の声が、拓斗の脳髄まで響く。
(あぁ、やべぇ。くらくらする)
いつもなら雄叫びを上げて、すぐにそうするところだ。
だが、拓斗はぐっと堪えた。
指を動かしながら、意地悪な言葉を楽しんだ。
「何が欲しいのかな? どうして欲しいのかな? 言ってごらん?」
「やっ、あ。あぁ、いやぁ!」
「イヤじゃねえだろぉ。言えよぅ」
玲の口に打ち込んでいた秋也が、動きをやめた。
拓斗と同じく、玲の言葉を待っているのだ。。
はぁはぁと震えていた玲が、小さな声で何か言っている。
「聞こえねえなぁ」
「もっと大きな声で」
「拓斗の……を。僕の……に……」
「俺の、ナニ? 解かんねえなぁ~」
「具体的に喋れ」
「拓斗の……あれを……僕の……あそこに……」
「まだよく解んねぇけど、まぁいいや」
「想像はできるな」
「二人とも、解ってるくせに!」
「まぁ、これが玲の限界、だな」
「下品な言葉も使わせたくない」
「うぅう……」
拓斗は満足そうに、玲の蕾に硬く奮い立ったものを挿れた。
「あぁあ、あ! んあぁあ!」
玲の、歓喜の声が響く。
いやらしい言葉責めで、いつもより興奮しているのは拓斗と秋也だけではない。
玲もまた、羞恥に突かれる欲情の昂ぶりを、イヤと言うほど味わっていたのだ。
「玲、口の方も頼む」
「う、くぅ。んむぅう!」
再び動き出した秋也に併せるように、拓斗もたっぷりと腰を使い始めた。
二人から受ける激しい愛撫は、玲を夢中にさせた。
あぁ、ダメ。
頭の先まで、電気が走ってる!
僕、僕、もう……ッ!
「イくぅう! イッちゃうぅう!」
「うぁ! お前、何てコト言うんだよ!」
「下品だぞ、玲!」
玲のオーガズムに誘われ、拓斗と秋也も途端に吐精していた。
「あぁ、俺もイッちまったぁ」
「俺もだ」
「屈辱だぜ。この拓斗さまが、早漏とはなぁ」
「それだけ玲が、魅力的だったということだ」
はぁあ、と深い息を吐く二人は、しみじみと敗北感を味わっていた。
すやすやと、眠り込んでいる玲。
上の口も下の口も、秋也と拓斗の精ですっかり汚れている。
泣き叫び、流した涙の跡が残る頬。
その頬を、秋也の指がそっと撫でた。
「ちょっと、苛めすぎたかな」
「最終的には、俺たちの負けじゃね?」
先程まで激しく乱れていた玲の姿を思い返すと、再び体が熱くなる心地だ。
「あぁ、でも最高だったな! しばらくエッチしなくても平気だぜ!」
「お前は、もっと他のことを考えられないのか?」
へへっ、と笑うと、拓斗は天井を見上げた。
「ホント、可愛いよなぁ……」
「それには、同意見だ」
「金を巻き上げられてぇ」
「羞恥プレイをさせられて」
それでも赦して、応えてくれる玲。
この世に、こんなに愛しい存在は他に無い。
「あのよ、秋也」
「何だ」
「提案が、あるんだけどさ」
投げかけた拓斗の計画に、秋也はすぐに賛成した。
「それは、俺も考えていた」
「さっすが、秋也クン」
玲を起こさないよう、二人の男はそっとベッドを抜け出した。
ウェットティッシュで玲の体をきれいに清めた後、服を着て出かけた。
起き出した玲は、空っぽになってしまったお菓子の缶を前に、溜息をついた。
これであの素敵なバラは、手の届かない遥か彼方に行ってしまった。
こんなチャンスは、滅多になかったのに。
「もっともっと、ポーカーに強くならなきゃ!」
いやその前に、ギャンブルに手を出す、などという考えを起こさねばよいのだが。
「拓斗も秋也も、いなくなってたし……」
拓斗は、デートの準備に忙しいのだろう。
秋也は、書店に行って文学全集を買ったに違いない。
「二人とも、薄情なんだから!」
まだ濡れている洗い髪を、玲は手櫛で梳いた。
「僕が起きて、シャワーするまで待っててくれてもいいのに!」
不満を口にし、と頬を膨らませた。
そこへ、薄情な男二人の声がする。
「おいおい、イケメンが台無しだぜ」
「膨れっ面はやめろ」
「拓斗! 秋也!」
ニヤけた顔で、再びここへやってくるとは!
玲は、ぷいとそっぽを向いた。
「悪いけど、もうギャンブルはしないからね!」
ポーカーに強くはなりたいが、賭けるものが何もないのだ。
いや違う、と拓斗と秋也は手を横に振った。
「悪かった、謝るからさ」
「お詫びのプレゼントを、受け取ってくれ」
プレゼント? と玲は改めて二人を見やった。
「じゃ~ん!」
拓斗の掛け声とともに、秋也が隠していた鉢植えを差し出した。
それは、可憐なバラの花を咲かせていた。
「僕が欲しかった、あのバラ!」
玲は駆け寄って、思わず花に頬擦りした。
「ありがとう! ありがとう、二人とも!」
でも、とそこで気づいた。
「お金は? 二人とも、お金が要るから僕をポーカーに誘ったんだよね」
拓斗はモデル美女とのデート資金。
秋也は、文学全集を買うための資金。
それなのに、どうして高価なバラを買えたのだろう。
玲の素朴な疑問に、二人は照れながらも答えた。
「あ~、女とは別れた! お前の方がずっと可愛いって気づいたからね~」
軽口を叩く拓斗。
「本は、給料を待つ。文学全集より、お前の方がずっと魅力的だからな」
照れながら言う秋也。
「う、嬉しい……二人とも最高!」
玲の頬は、バラ色に染まった。
そして、少しだけ恥じらいながら口にした。
「あの、ね。お礼のキスをしても、いい?」
そして、にっこりうなずく二人の頬に、軽くキスをした。
これは羞恥プレイではない、真心のキスだ。
甘いバラの香りは三人を包み、幸せな時間が刻まれ始めた。
バラの香りよりも、甘い甘い時を刻み始めた。
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