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第9話 Take it easy
正午を間近にひかえ、事務所の空気はやや緩んでいた。
もうすぐ、一息つけるランチタイムだ。
そわそわと時計を気にする同僚たちを尻目に、秋也は忙しく書類に目を通し赤でチェックを入れる。
この会社が所有するホールで、まもなく国際的な学会が開かれるのだ。
だが、土壇場になって、責任者が体調不良で倒れてしまった。
現場のサブリーダーを勤めていたのは、秋也と係長がもう一人。
役職的には係長が最前線で働くべきなのだが、この男がまるで緊張感のない人間だった。
人はいいが、度を過ぎたのんびり屋なので、まるで動こうとしない。
何とかなるだろ、の声を忌々しく思いながら、秋也は毎日忙しく働いていた。
「お疲れ様!」
明るい声とともに部屋に入ってきたのは、玲だ。
「玲、今日は公休だろう?」
「激励に来たんだ」
差し入れのお菓子が入ったペーパーバッグを年下のスタッフに渡して、玲は秋也に近づいてきた。
「よかったら、ランチ一緒に食べよう?」
昼は食べずに仕事を進めるつもりだった秋也だが、他ならない玲のお誘いだ。
正午にはペンを置き、彼と一緒に社員食堂へ向かった。
「時間があれば、外食できるんだが。ごめんな」
社員食堂の定食では、洒落た雰囲気はない。
それでも玲は、嬉しそうに硬いパンをちぎった。
「ううん。僕も、報告したいことがあるだけだから」
「報告?」
そうだよ、と玲はちぎったパンを皿へ戻した。
「拓斗はね、もう大丈夫みたいだよ」
それだけで、秋也にはピンときた。
「ナオミさんの件か?」
「うん。一緒にお墓参りした後、あんまり話とかできなかったけど」
拓斗と秋也、そして玲の三人で出かけたのは、すでに10日以上も前になる。
秋也はその後忙しすぎて、なかなか拓斗の様子がうかがえなかった。
拓斗の恩人であり、初恋の人でもあった、ナオミ。
そんな人の墓参りをしたのだ。
秋也は、彼の情緒が心配だったが、玲の報告を聞いて一安心した。
だがしかし。
「昨夜、一緒だったんだけどね。すごく元気だったよ」
『昨夜一緒だった』と『元気だった』との言葉。
これらが重なると、大人の脳ではすぐに性的な言葉へと変換される。
秋也もまた、玲の発言を意味深に受け止め、一瞬眉をひそめた。
(昨夜は二人で寝た、ということか)
秋也はといえば、昨夜は業者への発注ミスが見つかり、遅くまで対応に追われていた。
(人の苦労も知らないで、拓斗の奴一人でオイシイ思いを!)
秋也は気付かないうちに、こぶしを握りしめていた。
「秋也?」
「あ? いや、それは良かった」
取り繕うように、コーヒーを一口すする秋也だ。
三人で仲良く付き合っているとはいえ、時には拓斗と玲の二人きりで過ごすことはある。
(俺だって、拓斗抜きで玲と過ごすし。取り立てて騒ぐことじゃない)
そう自分に言い聞かせ、平常心を取り戻そうと頑張る秋也だったが、そこへ
タイミング悪く、拓斗が現れた。
「よぉ。玲が来てる、って聞いてな。秋也とランチか」
「拓斗」
昨夜、玲と一緒だったというこの男は、ずいぶんサッパリとした顔つきをしている。
そして玲の肩に腕を回すと、熱い声でささやいた。
「昨日は、素敵だったぜ」
「もう、やめてよ。真昼間に!」
頬を赤らめる玲の髪を撫でながら、ちらり、と秋也の方へ視線が流された。
秋也に向ける拓斗の表情は、どこか自慢げに見える。
お前より一歩踏み込んだぜ、との思いが、顔中に現れている。
いくら三人で仲良くやっているとはいえ、秋也も拓斗も時には考えないこともないのだ。
『俺とこいつとでは、どっちが好きなんだ?』
もちろん、玲にそんな事を言うような真似はしない。
そんな野暮なこと、訊けやしない。
それでも、独占欲や競争心が、頭をもたげることがあるのだ。
今、それを充分満たした気持ちでいる拓斗は、ただひたすら秋也の癇に障った。
「社食じゃなくって、外へ行こうぜ。お洒落な店で、ランチ食おう」」
「え。でも……」
「季節メニュー出してるカフェがあるんだ。ご馳走するぜ?」
玲が、秋也と拓斗を交互に見ている。
秋也は、テーブルの下でこぶしを握った。
(ここは、退くわけにはいかないぞ!)
秋也が口を挟もうとしたその時、彼を呼ぶ声が聞こえてきた。
学会の件で一緒に仕事をしている、若いスタッフだ。
その彼女が、慌てて駆けてきた。
「神原さん、大変です! お弁当の予算が下りません!」
「何ッ!?」
「稟議書が出されてなかったそうです! 今、総務から連絡が!」
それは、一大事だ。
早急に手を打つ必要がある。
歯を食いしばる秋也を、拓斗が煽る。
「忙しいねぇ、秋也クン。はい、いってらっしゃ~い」
手をヒラヒラ振る拓斗が、腹立たしい。
(しかし、どうすることもできない!)
秋也は諦めたが、その口惜しさ、憤りは胸の奥へ無理やり収めた。
「玲、聞いてのとおりだ。俺は仕事に戻る」
「秋也……」
後ろ髪を引かれる思いで、秋也はその場を後にした。
玲はこの後、拓斗と二人で仲良くランチをするのだろう。
(そしてその後は、もしかして? いや、昼間っからそれは……しかし、でもやはり……?)
難しい顔はしているが、頭の中は下りない予算のことより玲でいっぱいだった。
夜遅く、秋也はマンションへと帰った。
予算はなんとか明日には下りるように手を打ったが、油断はできない。
一ヶ月前に出してあるはずだった稟議が、通っていなかったのだ。
第二、第三の罠が待ち構えているに違いない。
「もう、夕食を食べる気もしない……」
シャワーを浴びて、白ワインを二杯だけ飲んで、そのまま寝室へ直行した。
そして。
「さぁ、癒しの時間だ」
ベッドの下から、厚紙でできた衣装箱を引きずり出す。
それを開け、ていねいに畳まれた服を取り出した。
拓斗を立ち直らせるために用意した、警察官の制服だ。
制服に顔を埋め大きく息を吸い込むと、玲の香りがした。
こうしていると、これを身につけ、あられもなく乱れた玲の姿が甦ってくる。
「いかん! これでは、まるで変態だ!」
しかし、こういうことでもやっていなければ、到底毎日を乗り切れない。
さらに今日は特別、目の前で拓斗に玲をさらわれるというオマケまで付いてしまったのだ。
やるせない気分は最高に高まっていた。
「ダメだ。変態行為はやめなければ……」
しかし、秋也が制服から顔を離すと、髪が一筋鼻先に付いている。
自分の髪かと思って指でつまむと、淡くて長い。
これは、玲の髪だ。
「たッ、たまらん!」
秋也は思わず制服を胸に抱きしめ、ふるふると震えた。
「このままでは、本当に壊れてしまいそうだ!」
自分を持ちこたえさせるため、秋也は思いを巡らせた。
そして、ある一つの考えを胸に、再び制服を大切に片付けた。
本日は玲も内勤で、秋也と共に事務所にいた。
正午になると、バスケットを取り出して秋也に開けてみせる。
中には、おいしそうなサンドウィッチが詰められていた。
「昨日はごめんね。一緒に食べよう」
「ありがとう、玲」
こういう気配りが玲の魅力のひとつだ、と内心うなずきながらも顔には出さず、秋也は言葉を続けた。
「よかったら、中庭のベンチで食べないか」
「いいね」
二人して中庭へ出て、お昼を食べた。
食べながらも秋也の頭の中は、玲にいつ、どのタイミングで切り出そうかとの考えが渦巻いていた。
それは、昨夜に思いついた名案。
いや、自分にとっては名案だが、玲にとってはどうだろう。
(ドン引きされるかもしれない……!)
そうこうするうちに、食べ終えてしまった。
早く言わなければ、昼休みが終わってしまう。
迷い惑っていると、玲の方から話しかけてきた。
「おいしかった?」
「ん? ああ」
本当かな、と玲は少し不安だった。
秋也ときたら、まったく何も話さず、もくもくと口を動かすだけなのだ。
(でも、残さず全部食べてくれたし)
それに、彼の無口は今に始まったことではない。
そんな無口な秋也が、今度は珍しく自分の方から話しかけてきた。
「玲、実は頼みがあるんだ」
「頼み? 僕に?」
秋也が口を開こうとしたその瞬間、昨日のスタッフが再び駆けてきた。
「神原さん、大変です! テーブルクロスの予算が下りません!」
「何ッ!?」
「三社見積もりを取れ、との事です。今、総務から連絡が!」
うぐぐ、と秋也はこぶしを握った。
(やはりまだ罠があったか!)
赤くなったり青くなったりする秋也の顔色を見て、玲が心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫? 秋也」
その言葉に、秋也は大きく息を吸って玲に向き合った。
「実は、大丈夫じゃない」
「え!?」
「毎日いっぱいいっぱいで、限界だ。そこで、頼みがある」
そうだった、と玲は思い出した。
さっきも、頼みがある、と言われていたところだ。
「学会が無事に済んだら、ご褒美が欲しい。それを心の支えに、頑張るつもりだ」
「ご褒美? 僕に用意できるもの?」
「お前にしか、できない」
何だろう、と玲は背筋を伸ばした。
あの秋也が、折り入ってお願いなんて。
「あの、な。その……例の、アレを、着て見せて欲しい」
「アレ? アレって、何かな?」
「あの、拓斗に見せたヤツだ」
「拓斗に……」
「制服、だ。例の、警官の制服!」
「……ええええッ!?」
息を呑んだ後、玲は大声をあげていた。
(秋也ったら! 真面目そうに見えて、やっぱりあんな趣味が!?)
「馬鹿なこととは解かっている! でも、お前も今、聞いただろう? 毎日が、この調子だ!」
「そうか。何度もスキームつまずいてるからね」
「やり遂げたら何か楽しいことが待っている、とでも思わないと耐えられないんだ!」
「秋也……」
「今度は、俺だけのために着て欲しいんだ」
玲の返事をさえぎるように、さっきのスタッフが遠くで叫んでいる。
「神原さん! 早くしてください!」
「むむむ……ッ!」
彼女をそのまま放っておくわけにもいかず、秋也は黙って玲の元を去った。
(……失敗した!)
顔を上げ、真っ直ぐに歩きながらも、心の中では情けなくうなだれていた。
(やっぱり、ドン引きされた……)
耳まで真っ赤になりながら、午後の事務所へと戻った。
「俺が電話するから、細かい内容をメールで送る準備をしてくれ」
「はい!」
業者へ見積もり願いを出した後、秋也はすっかり冷めているコーヒーを一口すすった。
疲れが、どっと押し寄せてくる。
放心してデスクの上に目をやると、小さな紙が四つ折りにして置かれていた。
「何だろう」
昼休み前には、無かったものだ。
秋也はそれを手に取り、開いてみた。
『例の件、OKだよ! 秋也、ファイトだ! 玲』
「玲……いいのか!?」
秋也は、目を丸くして玲の席を見た。
一瞬、視線が合った後、玲は小さく手を振って応えてくれた。
その後、こぶしを前にファイティングポーズまで構えて見せた。
(これは……効くぞ。メチャクチャに、効くぞぉ!)
秋也に、やる気が沸いてくる。
どんどん沸いてくる。
そこへ、スタッフがまた慌ててやって来た。
「神原さん、大変です! 会誌の製本が間に合いません!」
「何ッ!?」
だが秋也には、これまでにない余裕が生まれていた。
「どうしましょうか? またまたピンチですけど!」
「大丈夫だ。これまでも、乗り越えてきたじゃないか」
「神原さん……何か、頼もしいです!」
「当然だ!」
今の俺は、無敵。
どんな罠だろうと、乗り越えてみせる。
(玲の警官コスが、待っているのだからな!)
その顔には、笑みさえ浮かんでいた。
無事に学会が開催され、終わった後には、ご褒美に玲が警官コスプレでヨシヨシしてくれる。
そんなニンジンを鼻先にぶら下げた秋也の働きには、目を見張るものがあった。
次々と明るみになる問題をものともせず、難なく解決して行くその仕事ぶりに、周囲の人間は感嘆の声を上げていた。
『神原さんは、総括にも向いていらっしゃる!』
『現場に置いておくのは、惜しいよ!』
『係長。いや、課長、部長となって、この会社を動かしてもらいたいな!』
次期部長に、とまで囁かれる秋也の働きの影に、まさか警官コスプレが隠されているなどと知る者は誰もいない。
そして学会は無事に閉幕し、秋也は共に頑張ったスタッフらに胴上げされた。
打ち上げまで開かれたが、彼は二次会を断ってサッサとマンションへ戻った。
今夜は、約束の日。
玲が待っているのだ。
「秋也。お仕事、お疲れ様!」
ドアを開け、そんな温かい言葉で迎え入れてくれた玲の姿に、秋也は呻いた。
「……くぅッ!」
「もう。秋也のバカ」
「警官コスの玲!」
その制服姿に、秋也のこれまでの苦労はあっという間に吹き飛んだ。
通販で手に入れたコスプレ用の制服はサイズがおおまかなので、玲には少し大きい。
長い袖丈は秋也を萌えさせ、ぶかぶかのスラックスは秋也を熱くした。
「似合うかなぁ?」
「最高だ」
秋也はそのまま玲を抱きしめ、深く息を吸った。
玲の香り。
今夜は、ちゃんと中身も入っているのだ。
肩を撫で、背を撫で、腰を撫でた。
全身を撫でまわし、その姿を目に、手に腕に記憶させた。
床に座り込んで、両脚を抱えて撫でまわしてくる秋也に、玲は困惑していた。
まさか、秋也がこれほどコスプレ好きだったとは。
(秋也、いつも真面目にがんばってるもんね)
制服姿というものは、就業中のイメージがつきまとう。
それを脱がせることで、開放感を得るのだろうな、と玲は解釈していた。
「秋也、座って。口で、してあげるから」
ソファに座り、くつろぐ秋也の脚の間にしゃがんで、玲は制服を着たまま奉仕した。
舌で何度も舐め上げ、唇でしゃぶり、白い指で扱いた。
みるみる猛々しくなっていく秋也のものは、いつもより大きく長いような気すらしてくる。
先端は硬く張り詰め、腹の上下が速くなる。
腰が、緩く動き始めた。
秋也の頭の中は、すでに真っ白に。
いや、ピンク色になっている。
「口に出してもいいか」
「うん……」
秋也の動きが速くなった。
腰を入れ、喉奥まで突いてくる。
柔らかな喉で秋也を受け入れながら、玲も舌を動かしていた。
裏を舐めてやると、口の中に苦味が広がる。
もうすぐ、と玲が心の準備をした途端、秋也はぶるりと震えた。
「玲、口に出すぞ」
「ん、くっ……」
すぐさま秋也の精が、玲の喉の中に注がれてくる。
吸い込むようにしながら、玲は余さずそれを飲んだ。
「ん、っく。んんぅん、んぅ……」
「大丈夫か?」
「ん、平気だよ」
終わった後は、お掃除フェラだ。
玲は秋也のものをていねいに舐めとり、最後に先端にキスをした。
にっこり笑って上気した顔で見上げると、秋也もまた満足そうな表情だ。
「警官のくせに、ずいぶんと巧いな」
「いじわるなコト、言うね」
「ありがとう、玲」
「どういたしまして」
二人で笑い合いながら、そのまま寝室へ向かった。
ここまでは、平穏な光景だった。
秋也は、いつも通りの紳士だ。
(制服を着ただけ、だったな。秋也は、やっぱり優しいよ)
玲は、すっかり油断していたのだ。
ベッドに座るや否や手錠を持ち出した秋也に、玲は慌てた。
しかも、今度は二つもあるのだ。
「ちょ、秋也。何かな、それは」
「いいから」
「全然よくないんだけど!?」
「いいからいいから!」
秋也は嫌がる玲の腕を取り、その両手をパイプ状のヘッドボードにそれぞれ繋ぎ止めてしまった。
「秋也、こんなのイヤだぁ!」
「ふっふっふ。叫んでも助けは来んぞ!」
「バカ秋也ぁ!」
頬を染め、怒る玲の腰に、秋也の手があてがわれた。
ベルトが外され、ゆっくりとスラックスが下ろされてゆく。
少し下ろしては肌を撫で、また少し下ろしては撫でる秋也だ。
(秋也のバカぁ。こんなに、こんなにエッチだったなんてぇ!)
しかし彼は、今まで激務に耐え忍んできたのだ。
(少しくらいは、羽目を外させてあげてようかな……)
ここまでは、玲も寛容だった。
「でも秋也、これはスケベすぎるぅ!」
玲は、上半身ははだけた制服、下半身は白いソックスだけにされていた。
単なるスケベというより、フェチ風味が漂う格好は恥ずかしすぎる。
「せめて、靴下は脱がせて!」
「いや、この靴下がイイんだ!」
きゅうッ、と指を縮める玲の靴下を履いた足に、秋也が頬擦りしてくる。
(もう、何を言っても無駄だね……)
この性癖も秋也の一部なのだと、玲は全てを受け止めることにした。
「さぁ、お楽しみの始まりだ!」
「僕は楽しくないよ!」
玲は大きく脚を広げ、高く掲げられた格好で貫かれた。
秋也が腰を穿つたびに、手錠の金属音が鳴る。
「んぁッ! やっ、やっ、あぁあ!」
「出すぞ、玲」
玲の中に精が放たれ、秋也はようやく静かになった。
「うぅ……やっと終わった……」
「いや、まだだ。まだ足りない」
「えっ!?」
動くことをやめ、荒い息を吐いていた秋也だが、再び腰を打ち込み始めた。
「ヤだ! 秋也、もう少し休もう! ね!?」
「鉄は熱いうちに打て!」
「何か引用間違えてる!」
ここまでは、まだ玲も寛容だった。
(えっと。今、3回目……いや4回目……かな?)
玲は、数えることもできないくらい秋也に激しく抱かれ続けている。
ずいぶん長い禁欲生活が続いていたのだ。
秋也は、飢えた獣のように玲を求めてきた。
普段真面目な分、ストッパーが外れたときの反動は大きい。
腰を穿ちながら体を大きく前へ傾け、唇をふさいできた。
「んっ、ぅん。ふッ、んぅッ!」
濡れた音を立てて、激しい口づけが交わされる。
手錠で繋がれ自由の利かない身で、玲はただそれを受け入れた。
「はッ、はぁッ。あッ、あぁ、んあぁあ!」
再び中に吐かれ、玲は大きく身をよじった。
がちゃん、と激しい金属音が鳴る。
ゆっくりと秋也が引き抜くと、収まりきれなかった精が、流れ出してきた。
「あっ、秋也。秋也ぁぁ……」
細かく震える玲の姿を、秋也はゆっくりと眺めた。
そして、その頬にキスをし、流れた涙を優しく舐めた。
指を後膣にそっと差し入れ、中に溜まった精液を、かき出した。
「んっ、う。んんッ」
内壁の敏感な部分に、時折指が当たる。
その度に、玲は身悶えた。
その度に、制服が衣擦れの音を立てた。
頬を染め、瞳を潤ませ、唇は濡れてうっすら開いている。
そんな玲に、制服の色気が加わると破壊力は抜群だ。
再び充血してくる心地を、秋也は感じ取っていた。
正直、自分がこれほど乱れるとは思ってもみなかった。
(だが、ここまで来てしまえば、後はもうどうにでもなれだ!)
毒を食らわば皿まで、の気持ちに傾倒していた。
脱力する玲を上から見下ろしながら、秋也は芝居がかった言葉を口にした。
「いやらしい体だな。警官にしておくには惜しい」
「んあぁ。もぅ、ぃやだぁ……」
「どうだ? 手錠で繋がれて交わる気分は」
「うぅ。秋也のバカぁ……」
「もっと欲しい、だと!? 淫乱なやつだ」
「僕、そんなこと言ってない!」
しかし、圧し掛かってくる秋也を跳ねのける力は、玲に残ってはいなかった。
体を揺すられ、中まで抉られ、息も絶え絶えになりながら、玲もまた何度も絶頂に達した。
「あぁあ、秋也ッ! 秋也あぁああ!」
秋也は、しまいには制服に手を掛け、それを破り引き裂いた。
滅茶苦茶に愛した。
愛して愛して、狂うくらい、玲が愛しかった。
そっと柔らかな感触を頬に受け、秋也はゆっくり目を開いた。
温かな口づけ。
玲の、おはようのキスだ。
「目が覚めた?」
「ぅん……」
ちゅ、と今度は唇に短いキスが落とされた。
「玲……」
昨夜は散々苛め倒したのに、この笑顔。
「やっぱり、お前は最高だな」
「そうかな?」
秋也は、その体を抱き寄せようと腕を伸ばした。
しかし、その途端。
ガチャン、と音を立てて腕が引き戻された。
「なッ、何だこれは!?」
秋也の両腕は、二つの手錠でしっかりとヘッドボードに繋ぎ止められていたのだ。
「ふっふっふ。秋也、どう? 自由を奪われた気分は!?」
「玲!? やッ、やめろ。外せ、これを!」
「外してください、お願いします、じゃないかなぁ?」
でもその前に、と玲は秋也の上に跨った。
さらに、朝で緩く勃っている秋也のものめがけて、腰を落としていく。
「んッ、んぅん。巧くいかないな……」
「玲、やめろ! 朝っぱらから、何だ!」
「今度は、僕が苛める番だからね~」
「やッ、やめ……んくッ!」
秋也の意思とは無関係に、そのペニスは硬くなっていく。
玲の体内で、みるみる凶暴になっていく。
腰を落としながら、玲はそれをたっぷりと味わった。
「あッ、あッ、ヤだな、もう。秋也のバカぁ……」
「玲……ッ!」
朝からこんなことをしている時間はない。
ちらりと見た時計は、すでにとんでもない時刻を指している。
仕事に、間に合わない。
(無遅刻無欠勤を誇ってきた俺が、こんな理由で職務怠慢をしでかすことになるなんて!)
焦る秋也の気持ちも知らず、うっとりと目を細めた玲は、実に気持ち悦さそうだ。
その姿に、秋也は思わずクスリと笑った。
ベッドの上には、昨夜引き裂いてぼろぼろになった制服が脱ぎ捨ててある。
制服から、手錠から開放され、自由に動く玲の姿に、秋也は開放感を得ていた。
「おい、遅刻だぞ。完全に」
「たまには……イイんじゃなぃ、かなぁ?」
「……そうか。そうだな」
たまにはこうして、不真面目になるのもいいのかもしれない。
そうすれば、妙なコスプレに沼る事もないのだろうから。
そんな風に考え、秋也は明るくニッコリ笑った。
「よし。これから逆転するぞ!」
「先にイッた方の負け、だからね!」
二人は真面目に、不真面目な遊戯を楽しみ始めた。
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