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第5話
「確か昨日バイト代入るって言ってたよなぁ・・・。じゃあ昨夜はふうぞ」
「うおぉぉーーーーーーいっ!!」
そこそこ大きな声だぞ!周りに居る人間に聞こえちまうだろぉっ。
風俗通いしてる事知られたくねぇっつうの!
大輝の口を掌で覆い、自分の声で大輝の声を掻き消す。
口を手で覆ったまま大輝を目を合わせ、『言うんじゃねえ』と念じながら睨みを利かせた。
そのまま暫く睨み合っていると、大輝が「分かった」と言う様に頷いたので、ゆっくりと手を外してやる。
それなのに、
「何かやらかしたのぉ?」
大輝は人をおちょくる様に鼻の下をびよぉ~んと伸ばすと、頭がくっつくくらいに顔を近付けた。
うわ、むっかつくぅ~。この野郎っ、もう一度口塞ぐぞ!
何なら鼻まで手で覆って、息が出来ない様にしてやろうか。
大輝をきっと睨むと、
「壮太朗、ちょっといい」
頭の上から女の子みたいに優しい声が聞こえて来た。
この声・・・尚?
声のした頭上に顔を向けると、声と同じ様に女の子みたいな可愛い柔らかい笑顔で手を振る尚がいた。
尚の顔を見た途端にフラッシュバックする昨夜の記憶。
は、恥ずかしい。猛烈に恥ずかしいぞ。
自分でも段々と顔が赤くなっていくのが分かる。
「え、なになになに?お前がやらかした事と尚、何か関係あるの」
さっきまでの俺の様子と、尚の姿を見て顔を赤くする俺を見て何か悟ったのか、大輝は視線を俺と尚と行ったり来たりさせながら言った。
「お願いだから一緒に来て」
大輝を完全に無視して、尚は俺の腕を掴んで立たせると外へ引っ張り出した。
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