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第6話
連れて来られたのはサークルの部室。
スプリングの壊れかけたソファーに2人並んで座る。
2人掛けの小さなソファー。
いくら尚が痩せていると言っても骨格は男。
男2人が並ぶには少々狭い。
お陰でくっつくつもりじゃなくても肩とか腕とか・・・、何ならお尻とか。俺の体の右半分に、尚の体温が伝わって来る。
それにこのいい匂い何だろう?
尚の方から甘い香りが漂って来て、思わず「クンクン」と鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
髪?それとも香水・・・いや、柔軟剤?
「昨夜の事なんだけど」
俺の鼻を擽る甘い香りをめいっぱい鼻から吸い込んでいると、前を向いていた尚が急にこっちに顔を向けた。
尚の首筋に匂いを嗅ぐ為に顔を近付けていた俺と、不意に振り向いた尚の唇が一瞬ぶつかる。
「あっ」
そう一瞬。
超至近距離にある俺の顔に驚いた尚は、ただでさえ大きな目を見開いて凄い勢いで顔を後ろへ引いた。
うわぁ・・傷付くわぁ。そんなに嫌がらなくてもいいじゃん。
「壮太朗…顔…キモイ。て、言うか何かギラギラしてる」
顔を引き攣らせた尚が、顔だけじゃなく体も少し後ろへ引く。
ヤバイ!俺のムラムラが伝わってる!!
「ごめんごめんごめん。尚めっちゃいい匂いがするからさ・・・。俺の好きな匂いなんだよっ」
尚の警戒を解く為に少し大袈裟なくらい弾んだ声で言った。
「匂い?え、何時もと同じだよ。何の匂いがするんだろう」
ほら可愛い。もうすっかり警戒解けちゃってるし。
解けるどころか誘惑してんじゃないかとさえ思えるんだけど。
自分で自分の匂いを嗅ぐ為に、割と襟ぐりの開いたTシャツを引っ張ると、グイッと鼻が隠れるまで持ち上げて自分を匂う。
おかげで俺から尚の白い胸やお腹まで、丸見えなんだけどな。
ほんと俺を警戒してるのか誘惑してるのか、どっちなんだよ。
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