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第11話

「何で知ってるの・・・」 気を取り直す為かゴクリと水を飲んだ。 「昨夜偶然入った店で尚に会ったんだ」 昨夜の店の入り口に飾られていたパネルを思い出す。 「ふ~ん壮太朗そう言う店行くんだぁ~」 しまったぁ~風俗通いを自分の口から言ってしまったあっ!! 凛の含みのある笑顔を見ながら俺は頭を抱えた。 「そっかそれで尚の・・・ん、会った?尚のパネルを見たじゃなくて。会った?」 気付くなよーーーーーっ! 「もしかして尚の事指名したの」 俺を攻める材料が出来た凜は目を輝かせた。 「ねえねえ何で?尚の事指名したの?ねえ何でっ」 凜はそれはそれは楽しそうに、キャッキャ言いながら椅子の上で器用に飛び跳ねた。 「何でって、最初は尚本人だと思ってなかったよ」 今までも、店に行っては少しでも尚の面影のあるボーイを探して指名していた。 「すっげえ似ててさ、びっくりしたんだ」 男が数人集まると、特に酒が入ると必ず盛り上がる下ネタ。 でもそんな時も、尚はあんまり話に入って来ない。 何時も曖昧な笑みを浮かべて一歩引いている感じだ。 「まさか尚があんな・・・」 「何それ?どう言う意味」 凛の棘のある声に、俯いていた顔を上げた。 眉根を寄せて俺を見る凜は本気で怒っている顔だ。 何時も見せる頬を膨らませた嘘の怒った顔じゃない。 「あんなって何。必要とする人が居るから壮太朗が言う『あんな』場所があるんでしょ?自分の事棚に上げて良く言うよ。尚だって好きであの店で働いてる訳じゃないよ」 言いたい事を一気に吐き出すと、凜はぷいっと顔を背けた。

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