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第12話

「それ尚の前で言わない方がいいよ。壮太朗、尚の事好きなんでしょ?だったら尚更・・・。絶対に心開いてくれないから」 そう言うと凜は財布を開きテーブルの上に金を置いた。 「要らないよ、俺が奢るって・・・」 「いい。これで奢って貰ったら気分悪いから」 食べかけのフォンダンショコラと俺を残して、お尻をプリプリ振りながら凜は店を出て行った。 あっちゃー・・・相当怒ってるなあれ。 怒り具合とお尻の振り具合が比例する凛は、怒りの「プリプリ」とお尻のプリプリが=でつながる。 お尻を振りながら凄いスピードで店を出て行った所を見ると、きっと今頃凌大に電話を掛けて迎えに来いと言っているはずだ。 八つ当たりをされている凌大が目に浮かぶ。 「凌大に悪い事しちゃったな・・・」 機嫌の悪い凛を良く知っているだけに本気で凌大に申し訳ないと思った。 それにしても・・・凜は「尚だって好きであの店で働いてる訳じゃない」って言ってたよな? と言う事は、何か事情があるって事だろ。 風俗で働く事情で考えられる事は・・・金?だよな。 「借金とか・・・」 いや、でも別に尚は金遣いは荒くないし。 凛みたいに服とか鞄とか、ブランド物には興味が無さそうだし。 ま、実際そういう物を持っているのを、見た事がないし。 車もバイクも免許は持ってるけど、ほとんどペーパードライバーだって言ってたし。 「ちょっと・・・こわっ」 えっ? 斜め後ろのテーブルから聞こえた女の子達の声。 もしかして俺っ!? 気が付けば俺はかなり注目を集めていた。 どうやら考えていた事を無意識にブツブツ口に出していた様で、完全に不信者を見る様な目で見られている。 それに、女の子しか居ない店内で、野郎が1人ポツンと居るのは確かに目立つ。 急に居心地が悪く感じて、凜が置いて行った金を握るとレジへと急いだ。

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