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第13話

結局凜から何も聞き出せずに、もやもやしたままバイトにやって来た。 幸いな事に、今日は暇で5時間のバイト時間の内、配達に出たのは2回だけ。 俺はバイトの5時間の間、ほぼ半分をこのバックルームで過ごしていた。 する事もないし、だけど誰かと話す気にもなれず、俺はバックルームでずっと尚の事を考えていた。 何も考えたくない時に限ってなんで暇なんだよな。 これじゃ家に帰っても眠れそうにないぞ。 くたくたに疲れてベッドに倒れ込んだ瞬間に眠りたい。 「ハァッ・・・」 溜息を吐いて時計に目をやる。もう何度目かは分からない。 午前12時を過ぎて残りのバイト時間も1時間を切った頃、 「おい、注文入ったぞ」 厨房から店長が顔を覗かせた。 厨房に行くと今出来上がったばかりのピザをボックスに入れ、ピザバッグに仕舞う所だった。 「配達ここの2503だから」 「あのでっかいとこっすね。しかも25って・・・結構上の方じゃないっすか」 駅から近いタワーマンションで、上へ行けば行くほど世帯数は少なくなる。 最上階はワンフロアーに2世帯だけ。 今から行く25階は6世帯。 1階から15階までは12世帯だから、単純に考えて倍の広さはあるって事だ。 一体どれくらい稼いでいたらこんな所に住めるのかって、配達に行く度に思う。 「じゃあよろしく頼むな。これ配達したら多分今日は終わりだろうから」 「はい、行って来ます」 ピザを店長から受け取り、自分には一生縁の無い場所に向かった。 エレベーターを降りて、壁に書かれた部屋番号と矢印の通り右に曲がる。 「2503・・・25・・あった」 インターホンのボタンを押して暫くすると、「カチッ」と言う音がしてドアが開いた。 「お待たせしましたピザ…………」 その後俺は何も言えなくなった。 「ピザのデリバリーもやってたんだ」 パイル地のTシャツと短パンと言う、どうみてもここに住んでいるとしか考えられない、部屋着姿の尚が立っていた。

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