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⑪罪と罰〜Sideルーファス〜【前編】

「……あの男に、抱かれたのかと聞いているんだ!」  発する怒気に気圧されたのか、反射的にノアは俺の腕から逃れようとした。  だけどそれにさらにいら立ち、責めるように告げた。 「別の男に、噛み痕をつけさせるとか……。いくら発情期じゃなかったからって、これはさすがに許せないな」  何か言おうとして、彼の薔薇のつぼみみたいに愛らしい唇が小さく開かれた。  だけど余計な言葉はそれ以上聞きたくなかったから、驚き戸惑う彼をベッドに押し倒し、荒々しいキスで彼の唇をふさいだ。  運命の番である俺ではなく、別の男を生涯の伴侶にしようとしているノア。  どこまであの男に許したのかなんて、やっぱり知りたくもない。  それにもしあいつに抱かれたのだとしても、先日発情期を迎えたばかりのノアに付けられたあのいまいましい歯型には、なんの意味もない。  だったら俺以外は受け入れられないのだと、この無垢なオメガの体に教え込んでやる。……運命の番にしか与えられない快楽で、この純粋で残酷な俺の番に、知らしめてやる。 「んっ……、くっ……!」  酸素を求めて開こうとした唇に、強引に舌先をねじ込んだ。  その行為を非難するように、涙目のまま俺を睨み付ける彼の瞳。こんな目に遇わされてもまったく失われないその気高さに、ゾクゾクした。  クスクスと笑いながら、彼の着ていたシャツのボタンをひとつ、またひとつと、見せ付けるみたいにして外していく。  おそらく全力であろう力を拳に込めて、俺の胸元をドンと叩くノア。  だけどそんなささやかな抵抗になんか、なんの意味もなかった。  露わになった胸の頂にそっと指先で触れ、優しく転がす。するとそこはもっと触れてほしいと主張するみたいに、ツンと立ち上がった。  軽く歯を立てながら舌先で弄ぶと、彼の体は面白いくらいビクビクと跳ね上がった。 「これももう、いらないな」  笑顔のまま彼が履いていたズボンに手をかけると、ノアは怯えたように俺の顔を見上げた。  だけどそんな表情は、ただ俺の嗜虐心を煽っただけだった。  最初はノアも必死に抵抗しようとしていたけれど、徐々にその瞳は快楽に濡れ、与えられる刺激に溺れていった。  それに惑うように揺れる、彼の瞳。にやりと上がる、俺の口角。それに気付くことなく彼は俺の背に腕を回し、必死にすがり付いた。    時折迷うみたいに俺をじっと見上げる、ノア。  以前抱いた時彼は、ヒートの熱に浮かされたような状態だった。  だけど今回は、完全に素の状態だ。  だから俺の与える刺激への戸惑いを、隠せずにいるのが伝わってくる。  そしておそらくそうだろうとは感じていたが、その表情を見て俺の考えは確信へと変わった。  ……やっぱりノアは、クリス君には抱かれてはいない。  それに安堵するのと同時に、頭をもたげた強い独占欲。  どうしても彼にも求めて欲しくて、わざと指の動きを止めた。  そして彼の入り口の周りに指でゆるゆると撫でるみたいに触れながら、笑顔で聞いた。 「ねぇ、ノア。……俺が、欲しい?」  ゴクリと、唾を呑むノア。上下する喉を見ただけで、彼の気持ちは伝わってきた。  だけど俺は、どうしても彼からの同意が欲しかった。  真っ赤な顔のまま、無言で俺を見つめる彼の、熱のこもった瞳。  明らかにさらなる刺激を求めているのを知りながら、笑顔のまま彼の言葉を待つ。 「……」  この間の扇情的なノアも素敵だったが、恥じらう様も実に愛らしい。  それでもやはり決定的な言葉を口にするのは恥ずかしいのか、泣きそうな顔で彼はただ俺を見上げるだけだった。 「言えないなら、仕方がないね」  指を離すと、彼は慌てた様子で俺に向かい手を伸ばした。  しかし俺の方ももう限界だったから、条件を少しだけ変えてみることにした。 「ノア、俺が欲しい? 欲しかったら、俺の手を握って。そうしたら、ちゃんとあげるよ?」  彼の下腹部に、既に大きく勃ち上がった俺のモノを押し当てる。  すると彼は、震える手で俺の手を握った。 「いい子だね、ノア。ご褒美を、あげる……ね!」  最後の一音を発するタイミングで、一気に突き入れた。   「んっ……、あっ……!」  俺の手を握る、彼の力が強くなる。  でも痛みはない様子だったから、そこからはただ激しく、何度も何度も突き上げた。 「ノア。やっぱり君は、クリス君に抱かれていなかったようだな?」  すると彼はハッとしたように瞳を見開き、それから小さく息を吸って、非難するように冷たい笑みを浮かべ告げた。 「そうですね。だって彼は僕のことを、大切にしてくれていますから。……あなたと違って」  これまで聞いたことのないほど、冷たい声色。  心まで凍り付いてしまったかのような、なんの感情も宿らない瞳。  それを目にして、自身の犯した罪の深さを再度認識させられた。 「好きなら触れたいと思うし、愛してるなら抱きたいと思う。それは、自然の摂理だ。だって君は俺の、運命の番なんだから」  言い訳としてはかなり稚拙だし、運命の番であるという事実を盾に取り、こんなことをいうのは本当に卑怯だし最低だと自分でも思う。  それでもこの言葉は俺の本心でもあったから、真っすぐに彼を見つめて告げることが出来た。  だけどその心からの訴えが、慣れない快楽に溺れ始めた彼に届くことはなかった。  体の方は抗えないのか、必死に俺の背中に腕を回し、再びすがりつくノア。  だからそこからは、無言のままお互い快楽を貪り合った。

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