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⑫罪と罰〜Sideルーファス〜【後編】

 その夜彼はヒートが訪れていたわけでもないのに、俺のことを受け入れてくれた。  ……少なくとも、体だけは。  一晩中抱き潰してしまったため、慣れない行為のせいですっかり疲れてしまったのか、すやすやと寝息を立てて眠るノア。  ほほを伝った痛々しい涙の痕を見て、ようやく自分の犯した罪の深さに気付いた。  ……これでは8年前、彼のことを襲おうとしたあの騎士と、やっていることが変わらないじゃないか。  最後は受け入れてくれたとはいえ、我ながら最低で身勝手な行為だったと思う。  だけど再び彼を抱き、確信することが出来た。……まだノアの体は、俺しか知らないのだと。  その事実だけで、心がほの暗い喜びで満たされていくのを感じる。  やっぱり彼はまだ、俺のものだ。絶対に、手放したりしない。  どうすればこの愛しい人を、俺だけのオメガにすることが出来る? どうすれば俺から、逃がさないですむ? ……どうすれば俺を、愛するようになる?  頭の中を占めるのは、醜くあさましい自分勝手な願望ばかり。  だけどやっぱりノアのことを諦めるなどという選択肢は、俺にはない。  だって彼の運命の番は、あの幼なじみの男じゃない。俺なのだから。  眠るノアの前髪を軽くかき上げて、そっと額に口付ける。  すると彼はちょっとくすぐったそうに身をよじり、クスクスと笑った。  すりすりと、まるで子猫みたいに俺に体を摺り寄せる彼。  窓から差し込む朝の光を受け、まぶしそうに眉間にシワを寄せるそんな表情まで愛おしくてたまらない。  そして薄く開かれた、ノアの瞳。 「ルーファス様……?」  まだ少し、寝ぼけているのだろう。  俺の姿を視界に認め、彼は不思議そうに俺の名を呼んだ。 「おはよう、ノア。目が覚めた?」  抱きしめる腕に力を込めようとしたら、彼は完全に覚醒したのか、『ひっ』と小さく悲鳴を上げて跳ね起きた。  だけどまだ昨夜の情事についてははっきり思い出せていないのか、困惑したように彼は小さな声でぼそぼそと呟くように言った。 「おはようございます、ルーファス様……。えっと……」  自身の現在の姿を、慌てた様子で確認するノア。  そして彼も俺も生まれたままの姿であることに気付き、シーツにくるまりミノムシのようになりながら涙目で俺の顔をそろりと見上げた。 「昨夜も確認したけれど、君を抱いて確信したんだ。……君はクリス君とは、体の関係を持っていない。そしてごめんね、ノア。やっぱり俺は君のことを、諦めきれないらしい。だって君の運命の番は、彼じゃない。俺なんだから」  すると心の底から軽蔑したような視線を俺に向け、彼は吐き捨てるように言った。 「運命の番? あはは、冗談でしょう!? ……そんなおとぎ話みたいなもの、あなただって本当は信じていないくせに」 「何を言っているんだ、ノア! まさか本当に、気付いていなかったのか!? 俺と君が、運命の番だと……」  信じられない思いで、彼の顔を凝視する。  なのに彼は再び冷たい笑みを浮かべ、呆れたように告げたのだ。 「あまりにもひどい言い訳ですね。帰ってください、お願いだから。もう、うんざりなんです。……これ以上あなたの戯言なんか、聞きたくもない」

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