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㉖告白
「こうしてふたりきりで話すのは、本当に久しぶりですね。ルーファス様」
今にもまた泣き出しそうになるのをこらえながら、無理やり笑みを浮かべた。
「うん……。そうだね、ノア。君が元気そうで、よかった」
そういって微笑んだ彼の表情もまた、僕と同じで何かを我慢しているように見えたのはきっと、気のせいなんかじゃない。
だから改めて僕は、自身の犯した罪の深さに気付いた。
「これまでのことと、これからのことと言いましたが、いったい何から話せばいいかな……」
ポツポツと紡ぐ僕のつたない言葉に、真剣な表情で耳を傾けてくれるルーファス様。
それに勇気をもらい、僕はなぜ愛する彼の元を離れたのか。
そしてなぜひとりで生きていこうと思えたのかについて、語り始めた。
ルーファス様の前から、姿を消そうと決めた時。彼の母親から別れるように言われたのは、ほんのきっかけに過ぎなかった。
その前から僕はルーファス様のそばをいつか離れるつもりだったし、その覚悟はとうに出来ていた。
だけど名残惜しくて、離れたくなくて、ズルズルと先延ばしにしてきただけだった。
ルーファス様のことを好きになったのは、はじめて彼と出逢った16歳の頃。
だけどまさかお互い同じ想いを抱いていたとは思わず、助けてくれた彼に名前も告げずに別れた。
そして再会した、5年前。ルーファス様は媚薬の、そして僕はヒートのせいで、まるで事故のように関係を持ってしまったのだと思い込んだ。
そのせいでルーファス様をたくさん傷付け、苦しめてきてしまった。
彼と離れていた間に、ひとつ分かったことがある。
メリルを妊娠して訪れた助産院。そこでお医者様に言われたのだ。
……僕はオメガとしては、他人よりもかなり劣っているのだと。
そのためフェロモンの香りも薄いし、生殖機能も弱い。
だからこうして子を宿すことが出来たのは、奇跡にも等しいことだったそうだ。
なのでお医者様には、相手は運命の番だったのではないかと問われた。
でも僕には分からなかったと答えたら、それも僕に欠陥があるせいかもしれないと言われた。
それを聞かされて僕は、ますます頑なに考えるようになってしまった。
自分のような欠陥品のオメガは、ルーファス様のような素敵なアルファと結ばれるべきではないと。
お医者様にはそんなことはない、その運命の番を逃したら一生独り身を貫くことになると諭された。
それでも僕のお腹には、彼との愛の結晶が宿っている。
それだけで僕は、生きていけると思った。
彼と離れてから、5年。はじめて会った時からだと、13年もの歳月が流れてしまった。
時が過ぎればこの想いも、いつか消えてなくなるはずだと思い込もうとしてきた。
だけど逆に、思い知らされてしまった。……僕はルーファス様との運命から、逃れることなど出来ないのだと。
「ねぇ、ルーファス様。今さらだと呆れられるかもしれませんが、僕はあなたのことが好きです。……愛しています、はじめて会った時からずっと、変わることなく」
涙をこらえて無理やり笑って告げたその表情は、とてもじゃないが見られたものじゃないくらいブサイクだっただろうと自分でも思う。
でも彼は僕の体を強く抱きしめ、震える声で答えてくれた。
「呆れるだって? そんなはずないだろう。俺はずっと、待ち続けていたんだ。君の、その言葉を」
「たくさんの嘘をついてごめんなさい、ルーファス様。なのに僕のことを、変わらず愛してくれて。……僕のことを諦めないでくれて、本当にありがとうございます」
彼の指が、僕の顎先に触れる。
キスをされるのだと思い、僕が目を閉じたその瞬間、ルーファス様はプッと吹き出した。
それに驚き、パッと目を開ける。
「ルーファス様……!?」
すると彼は、ククッと笑いながら公爵家の家紋が入った馬車のほうを指差した。
「残念ながらキスは、もう少しお預けのようだ。俺たちの世界一可愛い宝物が、待ちきれずにこっちを見ているからな」
彼の言葉に従い、視線を馬車へと向ける。
するとキャリーの窓から、興味津々でルーファス様と同じ碧色の瞳を輝かせて僕らを見つめるメリルと目が合った。
「……すみません」
途端に恥ずかしくなり、顔を手のひらで覆う。
するとルーファス様はクスクスと笑いながら、僕をお姫様みたいに横抱きにして抱きかかえた。
「謝らなくていいよ、ノア。……だけど今夜は、寝かせてあげられそうにないかもな」
その言葉に驚く暇もなくルーファス様の美しい顔が近づいてきて、一瞬だけ僕の頬に彼の唇が触れた。
そのため僕は彼に対して文句を言ってやろうとしたのだけれど、ちょうどそのタイミングでいよいよ待ちきれなくなったのかメリルが馬車の扉を開けて、勢いよく飛び出してきたせいでうやむやにされてしまった。
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