28 / 37
㉘運命の番
メリルにもちゃんとルーファス様がお父さんなのだと伝えたけれど、スヴェン村には若い父親というものがほぼいないためいまいちピンときていない様子だった。
そのためルーファス様はたいそうがっかりしていたけれど、そのあたりは追々教えていくとしようと思う。
当初僕は、お借りした客間で寝るつもりだった。
だけどルーファス様に『久しぶりの再会だというのに、ノアは冷たい』だの、『寂しい』だのと半ば泣き落としのように説得されてしまった。
いくら公爵家のメイドの皆さんに体をピカピカに磨き上げられたとしても、僕はもう30近い男なのだ。
しかも、出産の経験まである。
一方ルーファス様は離れてから5年も経つというのに、まったくといっていいほど衰えを感じない。
……むしろ色気が増しただけのような気すらする。
それでも僕自身、久しぶりに大好きな彼に抱かれるのだと思うと、それを嬉しく感じてもいた。
だから覚悟を決めて、彼の部屋へと足を踏み入れた。
「ノア……」
夢にまで見た、ルーファス様が僕を呼ぶ声。
ヒートのせいでも、媚薬のせいでもなく、僕ははじめて自らの意思だけで彼に向かい手を伸ばした。
ベッドに座る彼の隣に腰を下ろして、身を委せた。
まるで僕の存在そのものを確かめるみたいに、優しく僕に触れるルーファス様。
それがなんだかくすぐったくて、思わずクスクスと笑った。
「ノア。俺の、ノア……!」
ルーファス様が僕の名前を呼ぶ声に、胸が締め付けられる。強く抱きしめられたまま、彼の背中に腕を回した。
「はい、あなたのノアです。愛しています、ルーファス様。……もう二度とあなたのそばを、離れません」
どちらからともなくその距離を縮め、触れ合った僕らの唇。
その甘さを堪能する間もなく、僕の体がカッと熱くなっていくのを感じた。
だけど、今なら分かる。これはオメガの僕が、運命の番であるルーファス様を本能で求めている証だったのだと。
良質なガウンと、買い物の際に買い与えられたシンプルなデザインながらも肌触りの良い寝間着。
「今後はもっと、セクシーなものも用意しないとな?」
クスクスと笑いながらいたずらっぽくそんな破廉恥なことを言われ、今度は羞恥のせいで一瞬のうちに顔が朱に染まった。
「……そういうのはいりません、どうせ似合いませんから」
またしても卑屈な言葉を口にしたら、ルーファス様はおかしそうにプッと噴き出した。
「俺は、そうは思わないけれどね。これからは、もっといろんなノアの姿が見てみたい」
その発言に驚き、彼の顔をじっと見上げた。
すると彼は溶けそうなほど甘い笑みで僕を見つめ、耳元で囁いた。
「まぁ、いい。今はそれよりも、生まれたままのノアの姿を見せて?」
するりとガウンの腰紐を解かれて、本当に恥ずかしくてたまらなかったけれど、僕はただ小さくうなずいた。
ボタンをひとつ、またひとつと外され、徐々に露わになっていく僕の肌。
そのまま前をはだけさせ、彼は心から愛しそうに僕の貧相な体に触れた。
何度もキスを交わしながら、彼の与えてくれる刺激に溺れる。
お互いの気持ちを確かめあった上でのおよそ五年ぶりの行為が、僕たちの心と体を極限まで昂らせていく。
彼の指先が僕の胸の頂に直接触れた瞬間、体が大きく跳ね上がった。
それを見たルーファス様の口元が、意地悪く歪む。
「相変わらず無垢で恥ずかしそうな仕草をするくせに、体の方は敏感に反応して。……本当に、たまらないな」
そんな言葉を囁きながら、胸の先端を転がし、そのまま強く摘まれると、否定の言葉ではなく卑猥な喘ぎ声が僕の口をついて出た。
すでに大きく勃ち上がった、彼のモノ。それをグリッと下腹部に押し当てられ、恥ずかしいのに彼を受け入れるための場所からヌルヌルとした透明の体液があふれ出るのを感じた。
そしてそんな僕の体の変化を、彼が見落とすはずもなく。
指を突き入れられ、そのままぐちゅぐちゅと音を立てて弄ばれた。
「あっ……、んんっ! ルーファス様……!」
彼の名を呼びながら、背中に腕を回す。
すると彼は愛しそうに瞳を細め、息を乱しながら僕の唇に荒々しくキスを落とした。
彼の指と舌に翻弄され、もう何度目か分からないほどあっさり達して意識が朦朧とする中、彼は僕の目をじっと見つめたまま聞いた。
「ノア……、そろそろ大丈夫? もっと可愛がってやりたいところだが、早くノアが欲しくてたまらない」
いつもよりも少しだけ上ずったような、色気ある声。
そこからも彼が、僕のことを心から求めてくれているのだということが伝わってくる。
だから僕はまた小さくうなずき、彼にねだった。
「はい、大丈夫です。……僕も早く、ルーファス様が欲しい」
ゴクリと彼が、唾を呑む気配。
そのままベッドの上に組み敷かれ、僕はルーファス様の愛を全身で受け止めた。
およそ、五年ぶりの行為。だけど痛みは一切なく、ただ気持ちいい。……もっともっと、彼が欲しい。
どんどん激しさを増していく、彼の腰の動き。
ずっと求めていたルーファス様の愛に溺れ、わずかに残っていた理性すらも蕩けさせられていった。
そのため彼に合わせるようにして、はしたなく僕も腰を振った。
まるで本物の、獣になってしまったみたいだ。
……恥ずかしいのに、やめることが出来ない。
結局この夜はお互いを求め合い、奪い合うようにして、明け方近くまで行為に及んだ。
***
翌朝になり目を覚ますと、そこにルーファス様の姿はもうなかった。
なのでそれを少し淋しく思いながらも、倦怠感に包まれた体をのそのそと起こす。
すると部屋の外から、ルーファス様とメリルのものと思われる楽しそうな声が聞こえてきた。
「ええっ、お父さんは騎士様なの!? じゃあ、竜は? 竜と、戦ったことはある!?」
興奮した様子のメリルの声に、思わずプッと噴き出した。
「あぁ、あるよ。竜はな、とっても大きくて、とっても硬いウロコで体が覆い尽くされているんだ」
「そうなんだ……。なら、どうやって戦ったの? お父さんは、竜に勝てた?」
クスクスと笑いながらベッドから抜け出して、部屋の扉を開けて外へ出る。
するとメリルは嬉しそうに笑って、僕のほうへ向かい勢いよく駆けてきた。
その小さな体を受け止め、抱きかかえながら言った。
「おはようございますルーファス様、メリル。その話は、まだ聞かせてもらったことがないな……。だから僕も、一緒に聞きたいです」
ともだちにシェアしよう!

