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【SS】本物の番になった夜①

 僕は最初は一生ひとりきりで、そしてメリルが生まれてからはふたりで生きていくものだとばかり思っていた。  だからこうして大好きなルーファス様と結ばれ、さらには僕を愛して可愛がってくれる義父母と暮らす毎日は、身寄りのなかった自分には本当に大げさなんかじゃなく夢のようだと思う。  ルーファス様との挙式を終えて、戸籍上本物の夫婦となり、あっという間に二週間が過ぎた。  家族で過ごす、穏やかで幸せな日々。  そしてそんな暮らしにようやく慣れ始めた頃、僕はふと気付いた。  ……そういえば、そろそろヒートが来る頃じゃないかと。  元々オメガとしての機能が弱めとはいえ、それはほぼ毎月、決まったタイミングでやってくる。  だからメリルの世話はその間、隣に住んでいたロジャーじいさんにいつもお願いしていた。  でも彼のいない今、どうしたものかと考え悩む。  やはりここは事情を報告して、侍女の誰かにメリルと一緒に過ごしてもらうのが一番だろうな。  メリルの方もなんとなくではあるが、この期間になると僕の体調が悪くなるという感じで理解もしてくれているようだし。  そんな風に考えて、特にメリルがよく懐いてくれている侍女にお願いすることに決めた。 *** 「では、メリルのことをよろしくお願いします。ちゃんと、いい子にしているんだよ?」  ヒートに入る兆候を感じ、侍女にメリルのことを任せた。 「お母さん、僕はいつだっていい子だよ! ……だから、早く良くなってね」  少し寂しそうながらも、フンスと鼻息荒く答えるメリル。  それが愛しくて、ぎゅっと強く抱き締めた。   「ありがとう、メリル。本当に、心強いよ」  抱きしめたまま、うりうりと頬に頬を押し当てる。  するとメリルは、キャッキャとくすぐったそうに笑った。 「ご安心してお過ごしください、ノア様。メリル様のお世話は、しっかりこの私がさせていただきますから」  笑顔で侍女が答えてくれたことにホッとしたものの、次なる問題に頭を悩ませる。    ルーファス様は最近増えた魔獣の討伐で忙しいらしく、結婚休暇が終わってからは、帰りの遅い日が続いている。  まだヒートを抑制するための薬は残っているし、今回はそれを飲んでしのぐのがいいかもしれない。  ……本当の意味での番(・・・・・・・・)にしてもらうのはもう少し先になりそうだから、ちょっと残念だけど仕方ない。  そんな風に考えていたその時、どこからともなくお義母様が現れ僕らに声をかけた。 「……聞いたわよ、メリル」  なぜかちょっと恨みがましい目を向けて言われ、それに驚く僕。  するとお義母様は、いつものように唇を少し尖らせた。 「なんで私を、頼ってくれないの? 孫のお世話くらい、私だって出来るのに!」  あぁ、なるほど。それでお義母様は、拗ねていらしたのか。  その理由を理解して、ちょっと苦笑した。 「お義母様、ありがとうございます。ですがメリルは世間一般の子供と比べて、少しヤンチャと申しますか。……たぶん、かなり大変だと思いますよ?」  広い広い、マクドゥガル公爵邸。その中をメリルはいつも、元気いっぱいに駆け回る。木登りだって大好きだから、本当に目が離せない。  そのためいつも、侍女の中でも体力のある者を中心にメリルの世話係をお願いしているのだ。 「大丈夫よ、私に任せてちょうだい!」  自信満々に答えるその表情は、メリルにそっくりだ。  それがおかしかったから、ついプッと吹き出した。 「ありがとうございます、お義母様。ではメリルのこと、ヒートの間よろしくお願いします」 ***  その日の夜。やはりとでも言うべきか、僕はヒートを迎えた。  だけどもしかしたらという期待を捨てきれなかったから、薬は飲まずに部屋にこもることを選択した。  ルーファス様の匂いが残る、シーツや枕、そして騎士団の制服。  それらをかき集め、慣れない巣作りを行う。  だけどこんなことをするのは初めてだったから、仕上がりはかなり不格好なもののように思う。  それでも今家にいない彼の香りがすると、心の方は少しだけ落ち着くような気がした。  とはいえ大好きな彼の匂いのせいで、薬を服用していない体は否が応でも熱を持っていく。  このまま彼は帰ってこないまま朝を迎えることになるはずだから、かなり辛い夜をひとりで過ごすことになりそうだ。  そんな風に、諦めの気持ちでひとり自慰行為にふけっていたら、突然ガチャリと音を立て、寝室の扉が開いた。 「水臭いな、ノア。ひとりでそんな風にやり過ごして、君は本当に満足出来るわけ?」  ニヤリと意地悪く、形のよい彼の唇が弧を描く。  普段なら彼にこんなところを見られたら、恥ずかしくてきっと僕は死にたくなっていただろう。  だけどヒートの熱のせいで既にちょっとおかしくなっていたから、彼が僕のために帰ってきてくれたのが嬉しくて、無意識のうちに笑顔を浮かべていた。 「ルーファス様……! お帰りなさい。……でも、なんで?」  なぜ最近多忙だったルーファス様が、帰ってきてくれたのか? その理由が分からなかったから、疑問をそのまま彼にぶつけた。  するとルーファス様はベッドに腰を下ろして、僕の体を優しく抱きしめながら答えてくれた。 「俺の可愛い番のヒートの前兆を、見逃すはずがないだろう? 昨日の、夜あたりからかな? ……めちゃくちゃ甘い匂いがしてる」  ちゅっと音を立ててうなじを軽く吸われ、たったそれだけのことで僕の体は歓喜に震えた。 「ルーファス様。僕ね、巣作りをしたんです。初めてだから、あまり上手には出来なかったけど」  きっと彼が褒めてくれるのを知りながら、スリスリと体を擦り寄せ、本物のルーファス様の匂いを堪能する。  するとルーファス様は心底愛しそうに僕を見つめたまま、優しく微笑んで言ってくれた。 「とっても上手に出来たね。本当に、いい子だ」  よしよしと頭を撫でられたけれど、これじゃ足りない。もっと彼からの、ご褒美が欲しい。 「ありがとうございます、ルーファス様。……めちゃくちゃ嬉しい」  あまり普段はしない、僕からのキス。それに一瞬彼は驚いたみたいだったけれど、クスリと妖艶に笑って僕の後頭部に手をやり、唇にぬるりと舌を差し込んだ。  夢中でキスに応えながら、彼のシャツのボタンをひとつ、またひとつと外していく。  いつの間にか僕の方も、彼の手で生まれたままの姿にされていた。  それから彼は僕の足を開かせ、ふたりが繋がるための入り口に指を這わせた。  するとそこはもうぐちゃぐちゃに濡れそぼり、彼を求めているのが自分でもよく分かった。 「ノア、見て? まだキスしかしていないのに、こんなになってるんだけど」  それからルーファス様は指を離して、蜜で濡れた指先をわざと僕に見せ付けた。

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