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【SS】本物の番になった夜③
荒々しく腰を掴まれたまま、一度だけ一際深い場所を突かれた。
たったそれだけのことで、僕はまたしてもあっさり達しそうになってしまった。
だけど、後ろからじゃ嫌だ。今度は大好きなルーファス様の顔を見つめながら、抱きしめ合いながらがいい。
そう思ったから、快楽の波に飲み込まれそうになりながらも必死に訴えた。
「ルーファス様、やだ!」
驚いたように、彼の動きが止まる。それから彼は僕の頬に優しく口付けを落として、少し不安そうに聞いた。
「ごめん、ノア。少し乱暴にし過ぎてしまったか? ……もし痛かったなら、本当にごめん」
だから僕はあわてて左右に首を振り、なんで嫌なのかを拙いながらも必死に言葉で伝えた。
「いいえ、痛くはないです。……でもこれだと、ルーファス様の顔がちゃんと見られないから」
一瞬キョトンとした表情で僕を見つめ、それから彼は蕩けそうなほど甘やかな笑みを浮かべた。
「ノア……。本当に、可愛過ぎだろう。これ以上君に溺れたら、いったいどうしてくれるんだ?」
そのまま彼は繋がったまま再び僕の体を反転させて、正面を向かせた。
だから僕はルーファス様に向かって手を伸ばし、その背中に腕を回した。
「フフッ、もしそうなったら嬉しいです。だって僕はもうあなたに、ずっと前から溺れていますから」
長い前髪を軽くかき上げた彼の額から、汗がポタリと滴り落ちる。
それを見て、改めて感じた。同性相手に言う言葉としてはあまり適切ではないかもしれないけれど、やっぱり綺麗だなって。
フゥと小さく息を吐き、それから彼は熱い眼差しを僕に向けた。
「ノア、愛してる。このまま中に出して、君を本当の意味での番にするからね」
うなじにそっと触れる、彼の柔らかな唇。
その言葉にゾクゾクして、足も彼の体に絡めてさらに強く抱きついた。
するとルーファス様は恍惚とした表情で微笑んで、今度は唇に口付けた。
さらに激しさを増していく行為。だけどそれはただ気持ちいいだけじゃなく、僕の心まで満たしてくれる。
この5年の間、彼のことを忘れた日なんて一日も無かった。
でも彼はきっと僕のことなんて、もう忘れてしまったに違いない。
そう信じ込むことで、この想いに無理やり蓋をした。
だけど、今なら分かる。……それはとても愚かで、ルーファス様に対してとても失礼なことだったのだと。
だって彼は今も、こんなにも僕のことを愛してくれている。それが体を通じて、痛いほど伝わってくる。
「ルーファス様……! 僕、もうまた……!」
一際強く抱き締めて、口付けを求めた。するとルーファス様も息を乱しながら、荒々しくキスを返してくれた。
「ん……。いいよ、ノア。俺もそろそろ限界だしね」
自らの意思で顔を後ろに向け、彼に向かいうなじを差し出す。
すると彼は、そこに優しく舌を這わせた。
「ノア。これでようやく君を、本当の意味で番に出来る。……もう絶対に逃がしてあげないから、覚悟して」
コクコクと何度もうなずきながら、その時を待つ。
彼の腰の動きが再開すると、僕はまたしても快楽の波に飲まれ、気持ちがいいということ以外何も分からなくなっていった。
そしてもう何度目かも分からない絶頂を迎えたその瞬間、彼の熱い白濁が僕の中で爆ぜ、うなじへと歯が突き立てられた。
「んっ……、あっ……っ!」
そこを中心に、熱が全身を駆け巡る。
「ルーファ……ス様……!」
朦朧とする意識の中、愛しい彼の名を呼んだ。
するとルーファス様は優しく微笑んで、今度は額にキスをしてくれた。
「ノア。俺の、ノア……! 愛してるよ、これでもう君は、俺の。……俺だけの、ものだ。もう二度と離さないから、覚悟して」
まだ快感の波は引いていなかったけれど、あまりにも彼らしい愛の告白を聞き、僕は笑顔で告げた。
「ルーファス様……。あなたの愛は、本当に重過ぎなんですよ。でも僕も、あなたのことを……」
彼の頬に、手を伸ばし、そっと触れる。
でも『愛しています』というたったひと言を言い終わるより先にそこで完全に意識は途切れ、そのまま深い眠りへと落ちていった。
***
どれくらいの間、そうして眠っていたのだろう?
気付くと僕は彼の腕の中で、眠ってしまっていたらしい。
「ノア……」
寝言で彼が、僕の名を呼ぶ。
5年前はそれを聞き、悲しい気持ちでいっぱいになった。
だけど今は彼のことが、ただ愛おしくてたまらない。
「あなたはさっきこれで僕がルーファス様のものだと言ってくれたけれど、もうずっと前から僕はあなただけのものですよ。……もう僕は逃げてあげないので、覚悟してくださいね」
幸せそうに微笑む彼の額にそっとキスをして、僕も再び目を閉じた。
***
一晩ゆっくり寝たのと、ルーファス様に愛してもらったおかげで、翌日にはヒートはすっかり落ち着いていた。
ルーファス様はとっくに目を覚ましていたようだけれど、ずっと僕の寝顔を見ていたらしい。
それを聞いて途端に恥ずかしくなり、なんで起こしてくれなかったのかと不満をぶつけてみたけれど、彼は悪びれることなく答えた。
「んー……、だってようやく番になれたんだ。今朝くらいは愛するノアを、独占させてくれてもいいだろう?」
そうは言ってもお義母様に任せたままのメリルのことが気になり、すぐに僕は立ち上がろうとしたのだけれど、体がまだちょっとふらついてしまったこともあり、そのままルーファス様にベッドへと連れ戻されてしまった。
「お義母様、大丈夫かな……。メリルがワガママを言ったり、いつもの調子で走り回っていなければいいけど……」
僕の言葉を聞き、ルーファス様はちょっと呆れたように笑った。
「きっと、大丈夫さ。俺とノアの子だからな、お利口にしてくれてるはずだよ。……だから、もう少し」
そのまま僕は、ルーファス様にベッドに押し倒されて。……ヒートはもうすっかり落ち着いていたというのに、またしても彼に散々愛されてしまったのだった。
***
二人きりの時間を堪能して、結局昼過ぎになってようやく彼と共に寝室を出た。
すると僕らの姿を見付けたメリルが、嬉しそうに笑ってパタパタと駆けてきた。
「おはようお母さん、お父さん! ……もう、大丈夫?」
勢いよく僕の腕に飛び込んできたメリルの小さな体を、全力で受け止める。
だけど自分が思っていたよりも体力が消耗していたのか、グラリと体が揺れてそのまま床に倒れそうになってしまった。
でもすぐさまルーファス様が後ろから支えてくれたから、なんとか僕らは転ばずにすんだけれど。
「おはよう、メリル。まだノアの体は本調子じゃないから、もう少しお行儀良くな?」
わしわしと頭を撫でられ、メリルは唇を尖らせた。
だけどその言葉を素直に受け入れ、僕に抱っこされたままはーいと答えた。
「ハァ、ハァ……。おはようルーファス、ノア」
息を切らせながら、ようやくノアに追いついたらしいお義母様が言った。
「おはようございます、お義母様。えっと……。メリルの相手、やっぱり大変でしたよね?」
恐る恐る確認したけれど、彼女はフフンと得意顔で笑って言った。
「いいえ、全然大丈夫よ。……とはいえ私ももう少し、体力をつけた方が良いかもしれないけれど。それにね、今度メリルと一緒に木登りをする約束をしたの! ねぇ、メリル?」
「うん! 僕とおばあちゃん、どっちが早くてっぺんまで登れるか、競争するんだ!」
お義母様そっくりな得意顔で、満面の笑みを浮かべるメリル。
公爵夫人が、木登り……。初めて会った時のことを思い出すと、本当に想像もつかない変化だ。
「あの、お義母様!? 本当に無理はしないでくださいね、ケガをしても大変ですし!」
「大丈夫よ、ノア。ルーファスが小さい頃は、一緒によく登ったものよ。だから、心配しないでちょうだい。ねぇ、ルーファス?」
信じられない思いで、ルーファス様の方を見る。すると彼は、ちょっと困ったように笑った。
「あぁ、それは本当だ。……とはいえもう年なんだから、あまり無理はしないでくれよ? |おばあちゃん《・・・・・・》」
「おばあちゃんはやめてって、いつも言っているでしょう? ルーファス、あなたはやっぱり母上と呼ぶように」
そんなふたりを見て僕とメリルは顔を見合わせ、ほぼ同時にプッと噴き出した。
そして僕は、いつかとは全く異なることを神様に願ったんだ。
……愛する家族と過ごすこの幸せな日々が、永遠に続きますように。
【了】
***
番外編にお付き合いいただき、ありがとうございました!
楽しみながら書いたので、たくさんの方に手に取っていただきとても幸せです。
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