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第10話

 突然荷台の扉が開き、僕ははっと目を開けた。  どれだけの時間馬車に揺られていたのだろう。起きているのか眠っているのかわからない狭間で意識をふらふらさせていたから、道中の記憶がほとんどない。  扉の方に目を向ければ外はもう真っ暗で、僕が捕まったのがまだ朝の早い時間だったので相当時間が経過しているのがわかった。 「大丈夫ですか、意識はありますか?」 「!」  声をかけられ、初めて荷台の扉の前に誰かが立っているのに気が付いた。暗くて見えないが、おそらく声からして男の人だろう。  その人は荷台に上がって僕の傍まで来ると、僕の腕を縛っていた縄を刃物で切って解いた。 「え……?」 「立てますか?」  長い時間後ろ手に縛られていたから腕の関節が痛む。縄を解いてくれた男の人に手伝ってもらいながら立ち上がり、僕は荷台から降りた。 「怖い思いをさせて申し訳ありません。ここは安全な場所なので安心してください」 「…………」  馬車の行者らしき人がランプを持って男の人の傍に立つ。  そこで初めて男の人の姿がよく見えたが、僕を捕まえた王族騎士の兵士たちとはまた違った様相をした人だった。  雰囲気も柔らかい。こちらに敵意もないように見える。 「あの、ここは一体……それに僕は、国王軍に捕まったはずで……」 「驚かせてしまいましたね。詳しい話は中でしますので、こちらへどうぞ」 「中?」  男の人が歩き出したので、僕は状況を掴めぬままそのあとを着いていく。  周りは草木が生い茂り一見森の中のように感じたが、ちゃんと人が歩く用の道があり、見上げるほど高い頑丈そうな壁沿いを進んでいるようだった。  何かを守るよう高い壁を拵える場所と言えば、この国には王城しかない。僕が捕まったのも王族騎士だったから、連れて行かれるのも王城が自然だ。  でも、国のシンボルとなる王城に、まるで人を隠すよう草木を生やすだろうか。僕は遠目でしか王城を見たことがないけど、美しい壮大な王城にこういう場所は全く結びつかない。  じゃあ、ここは王城じゃない何処か別の場所?  そんなこんな考えていると男の人が重厚な扉の前で立ち止まり、一緒に着いてきていた行者と共に扉を開いた。 「どうぞ、お入りください」 「……あの、ここは一体どこなんですか?」 「ここは……かつて後宮として使われていた宮。現在は王に反旗を翻す、我々反乱軍の砦です」 ***  宮内に入り薄暗く長い廊下を歩きながら、男の人は掻い摘んで状況を教えてくれた。  曰く、僕をここに連れてきたのは現国王への謀反を計画している、所謂反乱軍の人たちらしい。王族騎士に紛れて、処刑されそうな人や捕まりそうな人をできる限り助けているんだとか。ぎりぎりではあったが、僕も彼らに助けられたということだ。  それを聞いてやっとほっと息をつけた。正直、直前まで彼らのことを信じていいのかわからなくて警戒をしていたが、嘘を言っている感じもしなかったのでとりあえず信じてみることにしたのだ。やはり僕がいた街の人たち以外にも、現国王に不満を抱いている人はいるみたいで安心した。  そして僕が連れてこられたここは、先代国王の側妃が暮らし、亡くなってからは放棄された後宮らしい。王城からもそれなりに距離があり監視も管理もされていないため、隠れ蓑として使用させてもらっているそうだ。  なるほど、だから宮の周りは大して整備がされていないのか。整えたら誰かがいると勘付かれてしまうからな。納得だ。 「暫くして落ち着いたら街にお送りします。それまでは空いている部屋をお貸ししますのでそこで寝泊まりしてください」 「なにからなにまで……ありがとうございます」 「いえ。民を守ることが我々の責務なので。……それと、主が貴方と話がしたいと申しています。お疲れのところ申し訳ありませんが、もう少し時間をください」  主って、もしかして反乱軍のリーダー?  それしかないよな。  なんでそんな人が僕と話がしたいのだろう。  理由なんてものは想像もつかない……が、話したいと言っているなら僕に拒否する権利はない。命を救ってもらった恩もある。僕ができることがあるならば何でもしよう。  僕がわかりましたと頷くと、男の人は微笑んで「ありがとうございます」と言った。  それからとある部屋に案内された。少し待っていてくれと言われ、今は案内された部屋に僕一人だ。手持ち無沙汰なのでソファに腰掛けながらも室内を見渡してみる。  応接室か執務室なのだろうか、座り心地のよいソファが向かい合わせにあり、窓際には重そうな机が置かれ紙が積み重なっている。窓には分厚い板が張られていて、外から室内は見えないようになっていた。  今思えば、歩いてきた廊下の窓にも同じように板が張られていた。明かりも最低限で、全体的に室内は薄暗い。これも、室内に誰かがいると悟られないようにしている対策なのかも。  そんな考察をしていたら、こんこんとドアがノックされた。 「失礼します。お待たせしました」  反射的に立ち上がりドアの方を振り返れば、僕を案内してくれた男の人が入室してきた。そして恭しくお辞儀をして道を空けると、その後ろから別の男の人が入室してきた。  この人が……反乱軍のリーダー。 「殿下、彼が例の青年です」 「きみが……」  反乱軍のリーダーらしき人が僕の前まで歩み寄ってくる。  かなり背が高い。エディと同じくらいだろうか。  それから……なんだかこの人の顔、どこかで見たことがあるような気がする。見たことある、というか、誰かに似ている……? 「突然呼び出してすまない。僕はアル。聞いたかもしれないが、反乱軍を率いてる者だ」 「は、初めまして。僕はノアと申します。捕まりそうだった僕を反乱軍の方が助けてくれたと聞きました。あなた達は命の恩人です。ありがとうございます」 「礼には及ばない。むしろ危険な目に遭わせてすまなかった。……ノア、きみに聞きたいことがあるんだ」 「……あの、僕はただの平民です。皆さんのお役に立てるような情報は持っていないと思うのですが……」  期待外れとがっかりさせたくなくて先に断りを入れたが、アルさんはゆっくり首を横に振った。 「いや、きみは重要なことを知っている。……きみが命を救ってくれた――エディとニーナのことだ」 「!」  なんで……この人が二人の名前を知っているんだ?  エディとニーナを探しに来た王族騎士たちが浮かび一瞬警戒する。しかしふと、思い至った。目の前にいる男の人の既視感がなんなのか。  ――チャールズ様だ。つい今朝、僕を捕えろと命令した。あの人に似ているんだ。  人と人が似ている理由は、血縁者であるというのが自然だ。  ……え、じゃあもしかして、この人は……。 「普段は明かさないが、きみには明かそう。僕の本当の名前は、アルフレッド。僕はかつてこの国で第一王子だった。そして、エディとニーナの兄でもある。……まぁ厳密には、エディとは異母兄弟なのだが」  僕は思わずぽかんと口を開けて固まった。 「……エディとニーナの、お兄さん……アルフレッド様……でも、アルフレッド様って確か、ご病気で亡くなったんじゃ……」  頭の中をぐるぐるとまわっている疑問を無意識の内に口に出す。  目の前のアルさん――アルフレッド様は、そんな僕に特に気を悪くした様子もなく、自身に何があったのか説明してくれた。 「あぁ。他国への会合に向かう道すがら、チャールズの刺客に襲われ致命傷を負い、一度は生死を彷徨った。しかし僕の臣下たちが懸命に看病し命を救ってくれた。刺客が僕を仕留めそこねた事実を隠しチャールズに嘘の報告をしてくれたおかげで、身を隠しながらも治療に専念することができた。しかし僕がまともに動けるようになる前にチャールズは僕の死を公表、その後父も殺された。……僕が不甲斐なかったばっかりに、この国はチャールズの手中に落ちてしまったんだ」 「そんな……」  チャールズ様は自分の家族を自分の手で殺したと言うのか。そんな人が今、平気な顔をして国の王をしているのか。  その恐ろしい事実にぞっとして身震いする。チャールズ様が国民を殺すことに容赦がない理由が少しわかった気がした。 「詳しい話は座ってしよう。掛けてくれ」 「は、はい」  それからアルフレッド様は事の顛末を包み隠さず話してくれた。  チャールズ様は昔から私欲のため国王の座を狙いそのためには手段を選ばなかったこと、エディのお母さんのこと、チャールズ様がエディを気に入り狙っていたがアルフレッド様がエディとエディのお母さんを守ってくれていたこと、アルフレッド様が倒れたことでチャールズ様が覇権を握ってしまい、エディを守るためエディのお母さんが身代わりになったこと、そしてエディとニーナが二人で逃げ出したこと。  壮絶な過去を聞いて、僕は言葉を失った。  やっぱりエディはいろんなものを背負ってしまっていたんだ。僕には到底、背負えないものを。  僕も正直に話した。エディとニーナとの出会いからこれまでのこと。そして今は国境を超えるよう言って逃したことも。  聞きたいと言われたので、エディとニーナの普段の生活の様子の話をしたら、アルフレッド様は表情を和らげ穏やかに笑っていた。 「そうか、きみのおかげで二人は幸せに暮らせていたのだな」  全て話し終えると、アルフレッド様は何かを堪えるように俯いて長く息を吐いた。  先程、王族の間にあった過去の出来事を聞いて思った。言葉にはしていないが、きっとアルフレッド様はすごく後悔していたのだろうと。己の無力さもそうだが、あまりにも大きな物を幼いエディに背負わせてしまった。本来、不便はあったかもしれないが、穏やかに家族と暮らせるはずだったのに。 「エディたちを逃してくれてありがとう。きみがあの子達を保護してくれて本当によかった」 「そんな、僕は……」  二人を拾ったのはただ自分が、独りが嫌だっただけのエゴなのに。  感謝をされることに少し罪悪感を抱いてしまうが、それを言ってしまったら気を遣わせてしまうだろうから僕は口を閉ざした。 「でも、チャールズ様は王族騎士に国境付近を探すことを指示していました。僕が安易に国境に逃げるよう言ったせいで、かえって危険に晒してしまったかもしれません」 「きみのいた街の方角の国境には深い森があるだろう。あそこは歩き慣れない者が入ればたちまち方角を見失う迷いの森だ。エディはきみと行った薬草採取で歩き慣れてるが国王軍はそうではない。エディであれば無事に国境を越えられる。きみは素晴らしい判断をした。誇っていい」  一国の王子であったアルフレッド様に褒められなんだかむず痒くなる。  でもよかった。ずっと不安に思っていたから、アルフレッド様にそう言ってもらえて安心した。  しかしもうひとつ、気になっていることがある。  それは、なぜチャールズ様は僕の処刑を止めて捕縛することにしたのか、だ。  あの人達からみたら、僕は王族に楯突いたただの罪人だ。人の捜索にノイズになるだけだから、あの場で殺してしまうのがよっぽど楽だったろう。実際、兵士たちは捕縛に切り替えたことに驚いていた。たぶん、チャールズ様の独断だ。  もしかしたら、アルフレッド様ならそういう判断を下した理由がわかるかもしれない。そう思って、僕はその疑問を投げかけてみた。  するとアルフレッド様は難しい表情をして、考え込むよう口元に手を当てた。  どうしたのだろう。アルフレッド様でもわからないのだろうか。 「あの、気になっただけなので、無理に考えなくても大丈夫です。命があるだけで僕はすごくありがたいので」 「……いや、伝えるか迷ったのだが……ノアが今後も危険な目にあう可能性もあるから、知っておくべきだろうな」  アルフレッド様はなにやらぶつぶつと呟いたのち顔を上げる。その真剣な目に、僕は少し背筋を伸ばした。 「ここ数年調べ続け掴んだ情報だが、チャールズは、珍しい特徴を持った人間を捕まえ、裏でコレクターたちに売り捌くビジネス……つまり、人身売買をしている」 「……え⁉」 「人身売買はあいつが王位に就く前から行っていたが、国王になってからはより手広く行うようになった。ここ数年で盗賊に襲われる平民が増えただろう。それもチャールズが原因だ。金で賊を雇い平民を襲わせ、高値で売れそうな者がいれば誘拐しコレクターたちに横流ししているんだ」 「そ、それって、この国だけじゃなく、他の国でも禁止されてるはずじゃ……」 「あぁ、大犯罪だ。それを、あいつは金のために平気でしているんだ」 「…………」  あまりの衝撃に絶句する。今日は言葉を失うようなことばかりだ。 「ノアのその金色の瞳と黒髪、今は滅んでもうない、隣国南部の村のものじゃないか?」  アルフレッド様の言う通りだ。僕自身の生まれはこの国だが、僕の生みの母が、隣国の今はもう滅びている村出身で、この国出身の父に嫁いできた。  両親はとっくの昔におらず、小さかったからほとんど記憶はないけれど、僕と母はよく似ていたことをうっすら覚えている。 「あの村の生き残りは、今はもうほとんどいないと聞く。近隣の国合わせて見ても、きみの見た目は非常に珍しい。チャールズは高値で取り引きできると踏んで、きみを処刑ではなく捕縛させたのだと思う」 「…………」  チャールズ様が僕のルーツを言い当てたのも、その辺りの情報に詳しかったからか。ならば、納得だ。  じゃあ僕は、アルフレッド様たちに助けられていなかったら、売られていたのかもしれないのか?  人身売買が世界的に極刑ものの犯罪に制定されてからは随分久しい。人身売買の詳細はあまりにもセンシティブだから伏せられがちだが、僕は知っている。  まず売られた人間は生きては帰ってこられない。コレクターが気に入った部分を切り取って、大事に大事に保管する。他の悪趣味なコレクターに買った以上の値段で売れる場合もあるので、コレクターたちは買い取った人間を粗末には扱わない。しかし、売れる部分を切り取ってしまったら、臓器など売れるものは売って残りは廃棄だ。まだ息があっても、容赦なく処分される。  そんなおぞましい、人を人とも思っていないことが大昔はあった。……いや、今でも蔓延っている。信じられないことに。 「……確信はないが、チャールズがエディに目を付けたのも、半分人身売買のためだと僕はふんでいる」 「なっ、なんですって?」 「チャールズはエディの母のことを女性として気に入っていた。しかし手に入れられないと知るやいなや、エディにターゲットを変えた。あいつは沢山の愛人を囲っている、男女問わずだ。だからエディもそのうちの一人にして、飽きがきたら売り捌く魂胆だったのだと思う。そういう手口は何度も使っているようだからな」 「エディにまで……」  確かに、エディの透き通るような白髪と宝石のような赤い瞳は、この国だけじゃなく世界で見てもそういない。しかもあの顔の整い具合だ、悪趣味なコレクターでなくても、彼に魅了され手に入れたいと思う人が出てきてもおかしくない。  金儲けのためだけに、非人道的なことを平気でする。最低で、最悪な国王だ。  怒りと嫌悪が湧き出て、僕は無意識に拳を強く握りしめた。 「……回りくどい言い方はよくないと思い、ストレートな物言いをしてしまったな。気分を害しただろう、すまない」 「! いえ、アルフレッド様は何も悪くありません。悪いのは、全てチャールズ様です」 「あぁ……そのとおりだ」  僕の言葉にアルフレッド様は深く頷きそして、決意のこもった目で僕を見た。  その力強さは、僕たちの家を飛び出す直前のエディのものに似ていた。アルフレッド様はエディの家庭教師もしていたと言っていたからきっと、エディの強さの根源はアルフレッド様なのだろう。 「こちらの戦力は漸く整った。近いうちに王城に奇襲を仕掛け、僕はこの手で、あの愚弟を打ち取る。そして、先代たちが守ってきたこの国を取り戻すつもりだ」 「…………」 「必ず、人身売買をはじめとした悪事を暴き一掃する。きみやエディのような人が、何処ででも安全に、平和に暮らせるように」  アルフレッド様は、なんて誠実なお方だろう。今日初めて会ったただの平民である僕にも、こうやって決意を示してくれ、心から信じようと思わせてくれる。  僕が頷き返したのを見て、アルフレッド様は真剣だった表情をふっと和らげた。 「長い時間、僕の話に付き合わせてすまなかった。きみからエディとニーナの話が聞けて嬉しかったよ。……改めて、二人を救ってくれたこと、感謝する。ありがとう」 「いえ……僕の方こそ、重要な話を聞かせてくださってありがとうございました」 「部屋に案内させるから、今日はもうゆっくり休んでくれ。落ち着いた頃に街に送り届ける。それまで外出は許可できないが、宮内であれば自由に使ってくれて構わない」 「重ね重ねありがとうございます。少しの間、お世話になります」  それからあの男の人(ダルクさんというらしい)に客間らしき部屋に案内された。僕が普段寝室として使っている部屋より何倍も広い。やっぱり、王族が使うような部屋は一味違うんだな。住む世界の違いがびんびんに伝わってくる。  そして、ダルクさんから部屋の使い方や宮の間取りなどを簡単に聞いたのちにようやく、僕に一人きりの時間が訪れた。 「……はあぁぁ」  緊張が解けたからか、どっと疲労を感じ、僕はたまらずベッドに倒れ込んだ。  うわ、なにこのベッド、ふかふかすぎる……。  雲の上にいるのではないかと錯覚するほどふかふか柔らかい感触が僕の体だけでなく意識も一気に包み込んできて、意識がとろんとしてくる。油断したらこのまま眠ってしまいそうだ。  今日は、怒涛すぎる一日だった。殺されかけたり、投獄されかけたり、かと思ったら反乱軍に救われて、ずっと謎だったエディの過去を聞いたり。  ひとつひとつ振り返って情報を整理したいところだけど……とにかく今日は心も体も疲労困憊だ。考えるのは明日にしよう。  散々アルフレッド様たちにお礼は言っていたが、こうしてふかふかのベッドに寝っ転がってやっと、自分の命が助かった実感が湧いてきた。  エディとニーナが本当に国境を越えられるかの不安は残っているが、僕にできるのは無事を祈ることくらい。ひとまず、自分の命があることを喜ぼう。 「つい数時間前まで、死んでもいいやって思ってたのになぁ……」  人のあたたかさとか愛を知ると、人は臆病になる。  僕もそうだ。  独りは寂しいからとぬくもりを求めるくせに、いざ与えられると失ってしまうことが怖くなって遠ざける。こんな矛盾を抱えているからエディのことも振り回して、結局まともに話せぬままお別れになってしまった。  でも、エディはこの国の王族だ。今は追われる身だけど、アルフレッド様が国を奪還できれば、エディだけじゃなくニーナも国に戻って王族としての生活を取り戻せる。  そうなれば僕たちは王族とただの平民という関係になる。どっちにしろ平民の僕のことなんか、忘れてしまったほうがいい。忘れて、見合った令嬢と結婚するのが、彼にとってより良い未来を築ける。  ほんの少し胸が痛んだ。  けれど知らないふりをして目を閉じ、今度は抗うことなく眠りに落ちた。

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