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5 【4】*R18
(こんなの、はしたないと思われる……!)
後部座席で悶々とするが、一向に落ち着く気配がない。考えないようにしようとするほど、内に渦巻く欲望の気配を感じ取ってしまうのだった。
ずっと、ヒートをコントロールできていた。こんなふうにところ構わず発情したことなどない。
ヒートはオメガの原始的な本能──発情期のことだ。周期的なものではなく、なんらかのきっかけによって不定期に引き起こされる。
繁殖のことしか考えられなくなってしまうことも問題だが、このときに生じるフェロモンがアルファの理性を奪うのが厄介だ。
ヒートにも程度がある。抑制剤を飲んでいればフェロモンの放出も少なく、そんなにひどい衝動には至らない。……はずなのに。
「ふぅっ……、ふぅぅっ……!」
経験したことのない切なさに襲われて、息の仕方もわからなくなる。
(変だ、こんな。抑え込めないなら、部屋にこもってやりすごすしか……)
南雲井邸に到着し、車がガレージに入る音を聞きながら息を殺して耐えていた。
「照近さん?」
英一が運転席からこちらの様子をうかがう気配がする。俺は何も悟られたくなくてうずくまっていた。
声を出すのも怖い。手探りでドアハンドルをつかんだ。
ドアを開け、車から降りようとしたが足に力が入らず、そのまま地面に倒れてしまった。
俺の名前を呼び、英一が駆け寄ってくる。
「っ……あぁ……!」
抱き起こされるも、とっさに突き飛ばしてしまう。
(服越しに触れられただけなのに……、声出た……っ)
英一は驚いた顔をしていた。俺に拒絶されたからなのか、オメガのフェロモンに気付いたからなのか──俺を凝視したまま息を呑んでいる。どうやら、後者らしい。
「離れて……ください……っ」
だらしない顔を見られたくない。顔を背け、手で隠す。
けれど、それを許さないかのように彼は俺の手首をつかんだ。離れるどころか俺の頬に手のひらを重ねる。──冬の外気で冷えた頬には熱すぎる温度だった。
無意識にその手へ顔を擦り寄せてしまう。
もっと触って欲しいと欲が出る。発情した頭が変なことばかり考えている。
「っ、ダメ……、これ、ヒートで……俺いま、普通じゃないから……っ」
「でも、その様子じゃ一人で歩けないでしょう」
次の瞬間には抱き上げられていた。
腕の中で息を乱す俺に対して、英一は平常のように見える。
(こんな近くにいるのに……英一さんほどのアルファなら……平気……なのか……?)
静かに家の中へと運ばれ、リビングのソファへ横たえられた。
「運べたから良かったけど、軽すぎて不安になるよ」
軽口を言えるほど余裕があるなら良い。
仰向けになってコートを脱ぐ英一を見上げる。
なんとか声を絞り出した。
「へ、へやに、行ってて、くれませんか、少ししたら、落ち着くので、一人に──」
急に視界が暗くなり、ソファのクッションがぎしりと沈む。
俺に覆い被さった英一と目が合う。
「一人で、どうするつもりなの?」
「ぇ、あ、……っ……!?」
はだけたシャツの内側に彼の手が静かに差し入れられた。腰を撫でられただけでビクンと反応してしまう。
「さっきから、どうしても私を追い出したいみたいだね」
いつもと変わらない穏やかな口調だったが、言葉の裏の感情が読み取れなかった。
服の下で英一の手が、一文字の傷跡──男オメガが子供を産んだ証──がある俺の腹を撫でる。
盛り上がって皮膚が薄くなっているそこは、指先の動きを敏感に拾い上げた。
それから指は上へと滑り、肋骨の凹凸を確かめながら胸板に触れる。発情でぷくりと勃ちあがった乳首に手がかすめていく。
「ふ、ぅうっ……! だめっ、見ないでっ、英一さんっ」
どこに触れられても気持ちが良い。けれど一番刺激が欲しいのは上半身じゃない。
勝手に脚が開いて、腰が浮いてしまう。己のはしなさを強く恥ながら許しを乞うしかなかった。
「おかしく、なってるからっ……! 俺もっ、英一さんも……っ!」
大丈夫なのかと思っていたが、あきらかに英一も俺のヒートの影響を受けている。
夫婦だからダメではない。それはお互いの共通認識だろう。
でもだからって、こんな。
初めてなのに。
(欲しい……っ、気が狂いそうだ……! ヒートがこんなだなんて……知らなかった……っ)
シャツがたくし上げられ、鎖骨にキスが落ちてくる。
宝物を扱うような唇による愛撫は、今の俺には生殺しでしかなかった。腰が揺れてしまう。俺の痴態に彼が気付いていませんようにと祈る。
(欲しいっ、欲しいっ、欲しいっ……! 身体がつらい。触れられるだけでも気持ちいいけど、満足できない! 何か、何か言ってくれ、英一さん……! 「やっぱり良くないよね」とか、いつもみたいに笑って、俺を突き放して……!)
「──ごめんね」
「ぁ……っ!?」
彼の手が俺の腰ベルトを外し、ズボンを下ろす。
下半身が涼しくなり、中心に染みをにじませた下着があらわになった。
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