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 来客用のベッドで目覚めた照近は、昨夜の出来事をすっぽりと忘れて二日酔いの頭痛に苦しんでいた。  泥酔して迷惑をかけたという認識だけを抱え、顔を合わせるなり平謝りされた。  元はといえば飲ませすぎた私が悪いのだ。あまり気に病まないでほしい。 「記憶がおぼろげで……。弁償するものとかあったら言ってもらえると……」 「ないよそんなの。照近さん、結構しっかりしていたよ」 「そ、そうなら……いいんですけれど……」  昨夜のことを忘れてもらえたのは都合が良かった。あんな情けない振られ方が無かったことになるのなら。  予想通り、彼は一旦帰って数時間後には仕事でまた来ると言いだした。今日は休むよう言うがなかなか頑固だ。  仕方なく私が折れる。来たらベッドに縛りつけて寝かせてやればいいか。家で一人にさせておくよりむしろ良いかもしれない。  そうして、彼が泣いた夜のことは私だけの記憶となり、日常が再開された。  だが、あんな言葉で、あんな涙を見せられて、なにもしないなんてことができるだろうか。  私は何事もなかったかのようにふるまいながら、求婚を始めた。  それはもはや、説得だった。  一方的に思いつく限りの理由を並べた。金銭的・時間的なメリットの提示、私はおまけでしかなく、責任が増えるわけではないと、あれやこれや、照近を前にすると小心者のように喋りすぎてしまう。  人を口説くなんて初めてなのだ。頼まなくても他人が寄ってくるから、何もしなくても事足りていた。  たった一度、縦にうなずいてもらうまで、毎日どれほど頭を悩ませて言葉を選んでいたかなんて彼は知らないだろう。  彼からすると、突然私が気まぐれを起こしたように思えたかもしれないな。  できることなら、しがらみから自由にしてあげたかった。  だが結局、違う檻に閉じ込めてしまっただけのようにも思える。十五も年上の男に嫁がせてしまったわけなのだから。  不自由のない暮らしは提供できるが、しょせんそれだけだ。  もしかしたら、私がしゃしゃり出なければもっと若くて清らかな人物が彼に寄り添っていたかもしれない。  周りに何もない丘の上に住み、毎日私と顔を合わせるだけの生活。さみしい思いをしていないか……そればかり考えてしまう。  不安は数えきれない。  けれど、キミが私と出会ったからには、「幸せだ」と言わせてやりたい。  あんな泣きながらではなく、笑顔で。  私がキミと居てそう思うように。

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