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第9話 吸血の作法。

火照った体をどうにか冷まそうと、俺はしばらくトイレに籠もった。 あれが正式な血の舐め方なのか? てか正式な血の舐め方って何? 噛んで飲む時も、あんな感じなのかな…? 考えれば考えるほど、よくわからなくなってくる。 なんとか冷静さを取り戻した俺は、2人のいるリビングに戻った。 「こーくん、痛かった?ごめんね、大丈夫?」 「いや、痛みとかは全然…大丈夫なんだけど…。」 「…あのさ、首から直接血を飲む時も、あんな感じで飲むの?」 「あんな?うん、まあそうだね。」 「えっ、なんか、変だった?」 「変かどうかはわからないんだけど…変になったって言うか…(俺が)」 「普通の食事の作法とは違うかも知れないね。血を直接いただくわけだから、感謝とリスペクトの気持ちを表現するようにはしてるよ。」 感謝とリスペクト? ハァハァ言ってたけど…? 「血が主食って、大変だなとは思うし、俺の血が美味しいのはまあ…不本意ではあるけど…。」 「そんなに美味しいなら、どうにかしてあげたいなとは思ってて…。」 「ええっ、こーくん…!」 月城くんは両手で口を覆い、大きな瞳をキラキラと輝かせた。 「でも、正直、首に牙でかぶりつかれるのは、怖い。」 「見せてもらうことは出来ないの?」 「緋美くんの血を、飲んでるとこ」 「えっ!」 月城くんは視線を左下に落とし、少し考えてから、 「…弟のを飲んでるとこ、見られるのって、なんか恥ずかしいなぁ…。」 「変態すね先輩。」 「えっ!感謝とリスペクトの食事でしょ?!」 「そうだけど、なんか僕、夢中になってハァハァ言っちゃうし…。」 自覚あるんだ。 「倫理的にも…ダメでしょ、弟のなんて…。」 いやその倫理観はわからんけど…。 「まだお風呂にも入ってないし…」 ふ、風呂?! 「俺は見せても良いと思う。」 「緋美…!」 「しーちゃんに血を吸ってもらえることに感謝できない奴が、しーちゃんに血を吸われる資格はない!」 「怖気付いて帰ればいい。」 「緋美は本当に、優しい弟だなぁ…」 優しさ…なのか? 「折角こーくんが、僕に吸われること考えてくれてるし、僕も無理やりは気が引けるから…じゃあちょっとだけ。」 「自分だったらって、イメージして見てて。」 「…うん、わかった。」 月城くんはさっき俺にしたように、緋美くんの膝に跨ると、首の絆創膏を剥がした。 そして、緋美くんの首筋を、 ツ──… ピンク色の長い舌で、何度も舐め上げる。 「ちょちょちょ!待って…!それなに?!なんで首舐めてるの??」 「えっ?噛むからだよ?」 「こうしてから噛むと、痛みも和らぐし、傷の治りも早いらしくて」 「そうなの?!」 「うん、緋美がそう言ってた。」 「だから、いつもはお風呂上がりに飲むことが多いんだ。」 「ちなみに、この跨りスタイルも、緋美におしえてもらったよ。吸われるのに、一番楽な姿勢なんだって。」 「へ、へえ…」 「…….。」 緋美くんは俺と目を合わせないように、黙って顔を逸らしていた。 「じゃあ、続けるね…。」 月城くんは、更に緋美くんの首筋を、何度も丁寧に舐めあげた。 一方の緋美くんは顔を赤らめ、眉をひそめて目を閉じ、何かを堪えるように声を殺していた。 「そろそろ、いいかな…もう我慢できない…」 「緋美…。(心の)準備できてる…?」 「うん、いいよ。しーちゃん。来て…。」 その会話要る?! いちいちなんなんだよ…。 「いただきます…」 と言った次の瞬間、月城くんは薄くて紅い唇を大きく開け、鋭い牙で緋美くんの首元を、噛んだ。 「あっ……。」 緋美くんの顔が、苦痛で歪む。 やっば痛いんじゃん!! 『唾液が万能薬』みたいな設定どこいった! 「.…ジュルッ…ジュルッ………ハァッ…!」 「ハァ…美味しいよ…緋美……!」 これは、感謝とリスペクト。 感謝とリスペクト、だよな…。 「あっ…!しーちゃん!!しーちゃんっ…!!  ああっ…!!」 で、これは、何…?

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