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第9話 吸血の作法。

火照った体をどうにか冷まそうと、俺はしばらくトイレに籠もった。 あれが正式な血の舐め方なのか? てか正式な血の舐め方って何? 噛んで飲む時も、あんな感じなのかな…? 考えれば考えるほど、よくわからなくなってくる。 なんとか冷静さを取り戻した俺は、2人のいるリビングに戻った。 月「こーくん、痛かった?ごめんね、大丈夫?」 光「いや、痛みとかは全然…大丈夫なんだけど…。」 光「…あのさ、首から直接血を飲む時も、あんな感じで飲むの?」 月「あんな?うん、まあそうだね。」 月「えっ、なんか、変だった?」 光「変かどうかはわからないんだけど…変になったって言うか…(俺が)」 月「普通の食事の作法とは違うかも知れないね。血を直接いただくわけだから、感謝とリスペクトの気持ちを表現するようにはしてるよ。」 感謝とリスペクト? ハァハァ言ってたけど…? 光「血が主食って、大変だなとは思うし、俺の血が美味しいのはまあ…不本意ではあるけど…。」 光「そんなに美味しいなら、どうにかしてあげたいなとは思ってて…。」 月「ええっ、こーくん…!」 月城くんは両手で口を覆い、大きな瞳をキラキラと輝かせた。 光「でも、正直、首に牙でかぶりつかれるのは、怖い。」 光「見せてもらうことは出来ないの?」 光「緋美くんの血を、飲んでるとこ」 月「えっ!」 月城くんは視線を左下に落とし、少し考えてから、 月「…弟のを飲んでるとこ、見られるのって、なんか恥ずかしいなぁ…。」 緋「変態すね先輩。」 光「えっ!感謝とリスペクトの食事でしょ?!」 月「そうだけど、なんか僕、夢中になってハァハァ言っちゃうし…。」 自覚あるんだ。 月「倫理的にも…ダメでしょ、弟のなんて…。」 いやその倫理観はわからんけど…。 月「まだお風呂にも入ってないし…」 ふ、風呂?! 緋「俺は見せても良いと思う。」 月「緋美…!」 緋「しーちゃんに血を吸ってもらえることに感謝できない奴が、しーちゃんに血を吸われる資格はない!」 緋「怖気付いて帰ればいい。」 月「緋美は本当に、優しい弟だなぁ…」 優しさ…なのか? 月「折角こーくんが、僕に吸われること考えてくれてるし、僕も無理やりは気が引けるから…じゃあちょっとだけ。」 月「自分だったらって、イメージして見てて。」 光「…うん、わかった。」 月城くんはさっき俺にしたように、緋美くんの膝に跨ると、首の絆創膏を剥がした。 そして、緋美くんの首筋を、 ツ──… ピンク色の長い舌で、何度も舐め上げる。 光「ちょちょちょ!待って…!それなに?!なんで首舐めてるの??」 月「えっ?噛むからだよ?」 月「こうしてから噛むと、痛みも和らぐし、傷の治りも早いらしくて」 光「そうなの?!」 月「うん、緋美がそう言ってた。」 月「だから、いつもはお風呂上がりに飲むことが多いんだ。」 月「ちなみに、この跨りスタイルも、緋美におしえてもらったよ。吸われるのに、一番楽な姿勢なんだって。」 光「へ、へえ…」 緋「…….。」 緋美くんは俺と目を合わせないように、黙って顔を逸らしていた。 月「じゃあ、続けるね…。」 月城くんは、更に緋美くんの首筋を、何度も丁寧に舐めあげた。 一方の緋美くんは顔を赤らめ、眉をひそめて目を閉じ、何かを堪えるように声を殺していた。 月「そろそろ、いいかな…もう我慢できない…」 月「緋美…。(心の)準備できてる…?」 緋「うん、いいよ。しーちゃん。来て…。」 その会話要る?! いちいちなんなんだよ…。 月「いただきます…」 と言った次の瞬間、月城くんは薄くて紅い唇を大きく開け、鋭い牙で緋美くんの首元を、噛んだ。 緋「あっ……。」 緋美くんの顔が、苦痛で歪む。 やっば痛いんじゃん!! 『唾液が万能薬』みたいな設定どこいった! 月「.…ジュルッ…ジュルッ………ハァッ…!」 月「ハァ…美味しいよ…緋美……!」 これは、感謝とリスペクト。 感謝とリスペクト、だよな…。 緋「あっ…!しーちゃん!!しーちゃんっ…!!ああっ…!!」 で、これは、何…?

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