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第25話 月の綺麗な夜は。

驚いて目を開けると、 月城くんは真っ赤な顔で俯いていた。 「あのっ!…ご、ごめん…!やっちゃった…!」 「えっ…と……普通にキス…した…よね?」 「……そだね…。」 「な…なにゆえ…?」 「なんでだろうね……。」 「儀式的なものは、無しでって……。」 「儀式ではないので…。」 「ギュッて目つぶって、 僕を待ってるこーくんの顔見てたら……吸い寄せられたっていうか……。」 「ごめぇん…。」 「ええ……。儀式でも作法でもない?緋美にしたこともないの?」 「ないない!というか……」 「僕の『ファーストキス』です……。」 月城くんは消え入りそうな声で呟いた。 「俺だって、初めてだよ!!」 「だろうね。」 「なんだよ!ビックリして死ぬかと思ったし! なんなら今からでも死ねそうなくらい恥ずかしいな!!!」 「 んあああああ!!!!!」 「こーくん、ほんとごめん!大切にとっておいたファーストキス、僕が奪っちゃって…。」 「なんか僕、また変になってるね……。月に惑わされてるのかな……。」 「大切にとっておいてない!相手がいなかっただけ!!」 「こんなこと、言わせるなよぉ……。」 月城くんと…キスしたなんて……! 首筋にされたことはあるけど、 あれとは意味が違いすぎるだろ……!! 「あれっ、俺のピュアッピュアメーター、どうなるの??今ので、血が不味くなったんじゃない??」 「えっ?」 「ほら、俺、一つ上の男になっちゃったから…。」 「ぷっ、あははっ!大丈夫!」 「その思考こそ、ピュアッピュアの証だから!」 「……でも、味見しなきゃわかんないね!」 「今度こそ、カプッ、チューチューするからね…。」 月城くんは再び俺の顔を両手で包むと、 ゆっくりと首元に唇を寄せた。 息のかかる距離で動きが止まったので、 月城くんに目を向けると、 俺を見上げる月城くんと視線が重なった。 「…舐めてもいい?」 うわっ! おいっ!!! 言い方!!!! 「血が止まらなくなると困るから…。」 「あー!!もう!そういう仕組みだよね。うん、それは端折れないね。でも軽めでお願い!!」 動揺で裏返った声も気にせず、 月城くんは俺の首元を優しく舐めはじめた。 あ~~~~耐えろ耐えろ……。 これは血を止めるため……。 「…じゃあ、こーくん、いただきます…。」 月城くんも緊張しているのか、 ハァッ…と小さく呼吸を整えて、 ついに、俺の首元に歯を立てた。 ……ッ! 痛いと思ったのは一瞬で、 血を吸われるたびに、心も体もふわっと軽くなっていくような、幸福感に包まれていく。 ジュッ…… ジュッ……… 「ああ…!こーくん……。 すごい、前より美味しくなってる…! あっ、こーくん…すごい…イイッ…! はぁっ…!すごいよ…!!」 @@@@@@@ 俺は慌てて月城くんを引き離した。 「…ちょっ…と、無理…。もう今日は、終了……。」 「あっ、そうだったね!一口って言ったのに、美味しすぎて結構飲んじゃったかも。大丈夫??」 「大丈夫だけど、耳元でそれは…ヤバいって……。」 「エッ、僕なんか言ってた??夢中で覚えてないんだけど??」 「うん…漏れてたよ、感謝とリスペクトが……。」 「俺の時は、出来るだけ無言で飲んでくれない?次からは…。」 「えっ!次まで考えてくれてるの??」 「あ、えっと、毎日は無理だけど、」 「たまになら……。」 「こーくん!嬉しい!!」 月城くんは俺に抱きつくと、 首元の傷にキスをして、 俺の差し出した絆創膏を、 丁寧に貼ってくれた。 「こーくん、ごちそうさま…!今日は僕たち、初めてのことだらけだったね…。」 「がんばって合宿来てよかった~!」 月城くんの顔が、花が綻ぶようにぱっと明るくなった。 ああ…やっとこの笑顔が見られたな……!

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