46 / 56

第46話 静夢の覚醒。

脱衣所に入ったけれど 静夢はいなくて、  浴室から、 「早くおいで〜♪」 と、弾んだ声が聞こえた。 俺たちは服を脱ぎ、 気合いを入れるべく、両手で頬を二回叩いた。 パァン!!パァン!! 月「なんの音?大丈夫?」 緋・光「大丈夫大丈夫!」 ──嘘だ。 全然大丈夫じゃない。 でも、行くしかない。 俺たちの戦場…いや、洗浄へ……!! 浴室の中は湯気が立ち込めて視界が悪く、 浴槽に浸かる静夢の姿がぼんやりと見えた。 えっ、おでこ出てるじゃん…! ハードル上がるっ……! 隣から「ほわぁ〜お♡」という裏声が微かに聞こえた。緋美も気付いたらしい。 条件は同じだ。 月「じゃ、二人とも、並んで椅子に座って!」 そう促された椅子は、 真ん中が何故か凹んでいる。 なんなのこれ? 俺たちは大きく息を吐きながら、言われるがままその変な形の椅子に座った。 静夢はまず緋美の髪を丁寧に洗い、 泡のたっぷりついたボディータオルで背中を洗った。 上背もあり、ほどよく筋肉のついた緋美を、小柄で華奢な静夢が一生懸命洗っている。 甲斐甲斐しく世話を焼くその姿はどこか健気で、微笑ましくもあった。 ……なんだ。 意外と普通に見ていられるじゃん。 緋美の背中を流し終えると、静夢は俺の方にやったきて、緋美にしたのと同じように、髪の毛を丁寧に洗ってくれた。 月「お客さん、痒いところはないですか〜♪」 えっ、床屋さんごっこ? 可愛い…! 光「はい、大丈夫です!」 光「てか、こう聞かれてさ、痒いことあっても言いにくいよね。場所も伝えにくいし。」 月「『後ろの右あたりが〜』『つむじのとこですか?』『つむじがわかりません〜』みたいに、なりそうだよね!」 光「そうそう、あはは!」 おお、意外と余裕かも…! 隣の緋美にチラリと視線を向けると、 手を胸の前で両手を合わせ、険しい表情で何かブツブツと呟いている。 「…かんじーざいぼーさつぎょうしんはんにゃーはーらーみーたーじ…」 えっ、お経唱えてる?? マジで滝行じゃん… 静夢は俺の背中を流し終えると、緋美の方に戻り、 正面に座って、表側を洗い始めた。 緋美はまだ目を瞑って、お経を唱えている。 ジロジロ見ていても悪い気がして、 横目で2人の様子を伺うことにした。 首元、胸元、腕,お腹… 洗う場所が下がっていくに連れて、 「ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー!!!」 緋美のお経の声はデカくなった。 ついには、 「ギャーーーーー!!!!」 もはやお経ではなく、ただの絶叫が浴室に響き渡った。 「はい!俺の負け!!!」 と叫びながら、緋美は泡だらけのまま浴室を駆け出していった。 月「緋美〜!」 月「食材だから洗われたいって、緋美が言い出したのに、時々あんなふうに出ていっちゃうんだよ。くすぐったいのかな?」 光「そ、そうなんだ。」 月「まあいいや、次、こーくんね!」 そう言うと静夢は、 俺の前にしゃがみ、 顔、首、腕、胸…と、順番に洗い始めた。 あれ……不思議と邪念が出てこない。 弟がお兄ちゃんのために一生懸命頑張っているような、そんな微笑ましさしか感じない。 静夢の嗜好はまだわからないけど、 少なくとも、俺のことをそういう目で見ていないのだろう。 じゃないと、さすがに平然とこんなことできないでしょ。 少なくとも、俺のことも、俺の血の味も気に入ってくれているんだから、今は食材として、人参やだいこんの気持ちで洗われてればいい。 洗う場所はさらに下へ… お腹… 太もも… 静夢の手が、ふと止まった。 月「…えっ」 月「……あれっ??」 月「ごめん、なんか……」 見下ろすと、静夢は困ったように頬を真っ赤に染めていた。 月「……あのっ」 月「……ここから先って、僕がやっていいのかな……」 今その顔で聞くなぁああああああ!!!

ともだちにシェアしよう!